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ミステリの祭典

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高すぎた代償

作家 佐野洋
出版日1959年01月
平均点5.00点
書評数4人

No.4 5点 斎藤警部
(2025/08/20 11:47登録)
資本家の走狗を俎上に桃色共産党がテラテラやってるなと思ったが、それだけでは終わらない。

渋谷のTSUREKOMIに趣味で仕掛けられたテープコーダー(ソニー登録商標)に録音されていた、過去の心中事件にまつわる不穏な会話。 事件性が垣間見えるこの録音をきっかけに、男女二人素人探偵の協力とすれ違いが錯綜し補完し合い、種々のヨコシマな思惑に揺さぶられつつ、ある悪事らしきものの暴露を目指す。
構成と章立てに工夫が見られ、そこでは一方でストーリーの進行が整理され、また一方ではストーリーの含有する謎が大いに読者の両肩を揺さぶる。

“自分がだまされているとしたら、一体だれにだろう。”

ここから後はネタバレみたいなものになりますが、、 最後に、犯罪ファンタジーの大いなる幻影、萎んじゃいましたよねえ・・・ タイトルの意味合いも萎んだ・・(かな?) 洒落た小説構造を背景に、大きな真相への期待をこんだけ膨らましといて、まさかこんな、悪い意味でコンパクトな、しかもリアリティにちょいとひびの入った結末にぶつかって終わりとは。 ささやかな ‘叙述のたわむれ’ も、機能としては幻影を最後に萎ませる方向のものだったから、いまいち感心できない。
男女(女→男)の物語は多少響いたけれど、肩入れできる類の心理ではなく、悪いけどこいつバカだなぁ。。 とばかり思っていたら、、 最後の追い込み、××トリックの暴露含め、この心理劇の熱さにはちょっとやられました。

んだどもやっぱり、大きな真相あるいは躍動する真相を期待しただけに、この小説の収まり具合にはちょっとカックン。 結末を見せられるまではサクサク愉しく読ませていただきましたよ。
「密会の宿」 シリーズに繋がる初期作(第二長篇)のようだけど、本作の男女二人は (中 略) ですかね。 そうでないと結末の美が損なわれて、4点まで下がりかねないね。

No.3 5点 nukkam
(2014/04/06 19:46登録)
(ネタバレなしです) 1959年発表の長編第2作で一応は本格派推理小説に分類されていますが長編第1作の「一本の鉛」(1959年)と比べると謎解きの面白さが後退したように思いました。無差別に旅館の宿泊客を盗聴するという悪趣味に端を発してにわか探偵となって男女の関係を調べていく、というミステリー的にはあまり興をそそらない展開が野暮ったく感じられます。心中事件の謎解きもありますが影が薄いです。頻繁に主役交代させるなど多彩な人物描写に工夫は見られますが本格派推理小説としては謎解きの醍醐味をもっと味わせてほしいです。終盤の意外性が読ませどころの一つですがこの意外性、瞬間的には相手をだませても遅かれ早かればれてしまうと思います。

No.2 5点 江守森江
(2010/06/29 00:11登録)
「密会の宿」シリーズの長編で、テレ朝・土曜ワイド劇場でドラマ化されている(テレ東の同シリーズではドラマ化されなかった)
松尾嘉代&森本レオの熱演が実にチープでシリーズの良さを発揮していた。
絶対にドラマ版がお勧めだが、果たして(BSやCSで)再放送してくれるのだろうか?
原作の方は大抵の図書館で書庫にあるから何時でも読める。

No.1 5点 kanamori
(2010/05/30 22:23登録)
長編ミステリ第2作。
連れ込み旅館経営者の未亡人とヒモ的同居人の新米私立探偵が、客室の録音テープから不審な心中事件を追っていくと・・・というストーリー。
半世紀前の作品で時代性を感じさせる情景もあり、通俗的で2時間ドラマ風ですが、これは終盤のある仕掛けに驚きました。おそらくこの手の仕掛けでは先駆的な作品といえると思います。
なお、後に同じ設定の「密会の宿」シリーズを書いていますが、主人公名など若干本書と異なるようです。

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