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ミステリの祭典

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時の誘拐
森江春策シリーズ

作家 芦辺拓
出版日1996年09月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 5点 メルカトル
(2020/02/11 22:15登録)
府知事候補の娘樹里が誘拐された。身代金運搬に指名されたのは全く無関係の青年阿月。だが大阪の都市構造を熟知した犯人の誘導で金を奪われ疑いの目は阿月自身に。彼の汚名をすすぐべく乗り出す素人探偵森江だが、捜査の先には戦後の大阪で起きた怪事件の謎が!?過去と現在が交錯する著者屈指の傑作長編。
『BOOK』データベースより。

相変わらずこの作者の作品は盛り上がらないなあ、と思いました。序盤の身代金運搬方法と強奪の大胆不敵さと綿密さは、当時のハイテクを駆使しており、ううむと唸らされました。そこまでは良かったんですが、いきなり過去の不可解な殺人事件に呑み込まれて、なんだか誘拐事件の影が薄くなってしまったのは惜しい感じがしましたね。
まあどちらの事件に重きを置いているという訳でもないですが、過去の事件についての記述が長いので、誘拐事件はどうなってるんだってなりますよ。そして、全体のボリュームに対して森江の解決編がかなり短く、やや物足りない気もしました。

エピローグはなかなか印象深かったです。でも犯人の決定的証拠が薄いように思います。特に主犯がね。最初からある人物が怪しいと感じていましたが、やはりある役割を果たしていましたね。
プロットと文章がもう少しこなれていれば相当な傑作になったかも知れません。素材は上質だったのに料理の腕が問題だったとしか言えません。

No.3 6点 いけお
(2009/11/25 09:05登録)
各種ボリュームはあるが犯人特定はいまいち。
先が気になるプロットは良い。

No.2 6点 江守森江
(2009/05/23 18:39登録)
作者の分岐点に位置する大作。
やや詰め込み過ぎの為に森江シリーズのファン以外が読むと胃もたれしそう。

No.1 8点 ギザじゅう
(2004/04/11 11:36登録)
フーダニット、ホワイダニットにハウダニットでは密室、アリバイ、誘拐と殺13のような本格の嵐。おまけに過去の事件ではあの警部(十津川警部じゃないで)まで登場して、他にも本格のツボを突くシーンが満載。一つ一つのトリックも面白く、誘拐の手際もかなり見事。
この本核の過多状態が良くも悪くも芦辺の持ち味。
さらに、今までの作品には見られないストーリーテリングの巧みさも加わり、読者はもうただ唸るばかり。
過去と現在を結ぶ線がもう少し欲しい気もしたが、最後に森江春策が放つ台詞は、最も印象深いものの一つだった。

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