サム・ホーソーンの事件簿Ⅵ |
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作家 | エドワード・D・ホック |
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出版日 | 2009年11月 |
平均点 | 5.50点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 6点 | nukkam | |
(2020/12/10 22:20登録) (ネタバレなしです) エドワード・D・ホック(1930-2008)の死去と共にサム・ホーソーンシリーズもついに本書で終焉を迎えました。最後のシリーズ作品となった第72短編の「秘密の患者の謎」(2008年。作中時代は1944年)は死後出版だったそうです。第1短編の「有蓋橋の謎」(1974年。作中時代は1922年)から出版順かつ作中時代順に短編集が編集され、日本の創元推理文庫版で全6巻の全集が完成したのが2009年、本国アメリカでの全5巻の全集の2018年完成よりもずっと早かったことは日本人読者として誇りに思います。本書では第二次世界大戦の影響が描かれているだけでなく、時代性と巧妙に融合している歴史ミステリー的作品があるのが特徴です。サムの人生にとって重大イベントがあることも重要でしょう。どの作品も30ページ程度の分量に本格派推理小説の要素が十分に盛り込まれていますが、個人的なお気に入りは巨大鳥にさらわれたのではという推理は本気かよと思いつつも楽しめた「巨大ノスリの謎」、江戸川乱歩の某作品を連想させるトリックと解決場面でのある人物の常軌を逸した行動にびっくりの「自殺者が好む別荘の謎」です。 |
No.3 | 5点 | ボナンザ | |
(2020/11/08 22:42登録) 最終巻であるが、トリックは流石にネタ切れの感が強い。話としてはむしろこなれているため、すんなり読める。 |
No.2 | 5点 | E-BANKER | |
(2015/06/13 20:36登録) 不可能犯罪てんこ盛りの本シリーズ。 サム・ホーソーン医師を探偵役とするシリーズ最終作品。 ①「幽霊が出る病院の謎」=幽霊が出る病院、てのはよくある趣向だと思うのだが、本作はそれほどのサプライズ感はなし。 ②「旅人の話の謎」=本シリーズではお馴染みの密室殺人なのだが、いかんせんネタがショボい。そもそも○○窓っていったい何だ? ③「巨大ノスリの謎」=「ノスリ」とは北米地区に生息する大型猛禽類のこと(らしい)。巨大ノスリが飛び回るという異常な環境のなか、人間の欲望が犯罪を引き起こす。 ④「中断された降霊会の謎」=いかにも怪しげな霊媒師が降霊会の途中に喉を掻き切られる。動機探しでサム医師がボストンまで出張するというのが珍しい一編。でもこの凶器って、バレるんじゃない? ⑤「対立候補が持つ丸太小屋の謎」=本シリーズではお馴染みのキャラクター=レンズ保安官。保安官選挙での対立候補が密室で殺害される。そして部屋のなかにはなぜかチンパンジーが一匹・・・これってあの超有名作へのオマージュなのか? ⑥「黒修道院の謎」=ノースモント出身の有名俳優がこの街にやってくることに! そして故郷に錦を飾るべく開催されたイベントの途中、衆人環視のなかで俳優が銃殺される。プロットはあまり褒められたものではない。 ⑦「秘密の通路の謎」=これも密室殺人なのだが、正直あまり頭に残らず・・・ネタ切れっぽい ⑧「悪魔の果樹園の謎」=多くの作業員が働く果樹園。ひとりの男が忽然と消失してしまう・・・という不可能趣味の謎。ただし、これもやや拍子抜けの結末。 ⑨「羊飼いの指環の謎」=○○殺人のプロットを取り入れた一編なのだが、やや練り込み不足。 ⑩「自殺者が好む別荘の謎」=一見して首吊り自殺なのだが、当然真実は殺人。ということで、またまた密室殺人を扱った一編。 ⑪「夏の雪だるまの謎」=実にどうってことないトリックなのだが、こういうしょうもないというか、ガクッとくるような作品も面白いなと感じる作品。子供の目ってある意味怖いよねぇ。 ⑫「秘密の患者の謎」=ついにシリーズ最終作品。なのだがかなりの小品。 以上12編。 シリーズ当初は高いクオリティを誇っていた本シリーズだが、これ以上絞っても何も出ない乾いた雑巾のようになってしまった。 そんな感じだ。 相変わらず密室を扱った作品が多いのだが、感心するようなトリックはひとつもなかった。 今後はホック作品も別シリーズを楽しみたい。 (個人的ベストはなぜか⑪。バカバカしいけど、こういう作品も箸休め的でいい) |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2010/05/22 17:58登録) 本格パズラー短編集の最終第6弾。 サム医師の昔語りも最終章を迎える。戦争の影が濃く、プライベートでも大きな出来事がある今作です。 さすがにこの時期の作品は、トリックの趣向として優れたものはありませんが、「自殺者が好む別荘の謎」などは、ある趣向がニヤリとさせてくれる印象に残る作品でした。 シリーズ全作を通して言うと、人物造形や物語性などはともかくとして、これだけ不可能トリックにこだわった短編集は稀有で、その創作姿勢を高く評価したいと思います。 |