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ミステリの祭典

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空中密室40メートルの謎
改題『浮かぶ密室』

作家 浅川純
出版日1988年12月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 5点 nukkam
(2024/03/14 18:39登録)
(ネタバレなしです) 浅川純(1939-2020)は1980年代に作家デビュー、当初はミステリーを書いていましたが1990年代になってから会社小説へと作風を変化させたためか残されたミステリーは多くないようです。1988年に発表された本書は屋根に帆船を乗せた塔がそびえたつゴルフ場のクラブハウスを舞台として、誰も近づけないはずの帆船の看板で身元不明の死体が発見されるという謎解きの本格派推理小説です。犯人探しとしてよりも被害者の身元と不可能犯罪の謎解きに力を入れています。警察出身者を集めてテレビ局が組織した捜査本部という、警察ノウハウを持った民間組織による捜査であり取材であるという探偵活動が作品個性になっています。トリックは複雑すぎで、しかも自白頼りで明らかになるのは好き嫌いが分かれそうですね。最後にはメディアに対する痛烈な皮肉が披露されており、そこは社会派推理小説的ですね。もっともリアリティーをあまり感じさせないプロットなので社会派推理小説好きの読者には受けにくい作品だと思いますが。

No.2 4点 メルカトル
(2014/02/16 22:25登録)
再読です。
文庫本、改題名『浮かぶ密室』にて読了。
地上40メートル、クラブハウスを土台にして聳え立つゴルフ場のシンボル、帆船タワー。その屋上で烏に食い荒らされた白骨死体が発見される。虚空の密室とも言える謎に、TV局の朝の情報番組で結成された元刑事達による特捜班の面々が挑むというストーリー。
物語自体は単純なもので、犯人も途中から割れてしまうので、興味はいかにして密室状態の屋上に死体を移動できたのかという点と、何故犯人はそんな無謀な行動に出たのかという点に絞られる。
トリックは複雑で、一度読んだだけではとても理解不能だが、死体移動の理由は、犯人にとっては切実なのだろうと想像できる。
まあしかし、いかにも冗長で面白味が感じられない。一生懸命書いたのだろうが、はっきり言ってミステリの読者を相手にするにはまだまだと思われる。
どうでもいいが、電話の送受器を上げたり下ろしたりの描写が多すぎて鼻につく。大体送受器ってなんだろう、普通に受話器ではいけないのかね。

No.1 7点 band box
(2009/11/21 18:51登録)
奇抜なシチュエーションが良い。
三日で白骨化してしまった犠牲者を特定するための推理もお見事だ。途中まではとても面白かった。
が、タイトルにもなっているメイントリック、読者にとけるはずがあるだろうか。
典型的な本格推理の構成とあるが、最後の最後で読者が置き去りにされた感じだ。
しかし8割方楽しめたので、僕の中では良作といえよう。

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