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ミステリの祭典

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グリーン・マイル

作家 スティーヴン・キング
出版日1997年01月
平均点8.00点
書評数4人

No.4 10点 Tetchy
(2024/06/28 00:37登録)
スランプ状態から抜け出したスティーヴン・キング復活の作品と云えば先の『ドロレス・クレイボーン』でもなく、私は本書を挙げる。

作者自身の前書きにも触れているが、本書はキングにとって刑務所を舞台にした2作目の小説である。1作目は映画『ショーシャンクの空に』の原作中編「刑務所のリタ・ヘイワース」で、長編としては2作目になる。そのいずれもが傑作であり、しかも映画も大ヒットしている共通点がある。実は刑務所小説はキングにとっても相性がいいのではないだろうか。
そして「刑務所のリタ・ヘイワース」がそうであるように本書もまた傑作である。いや、もしかしたらキング作品の中で一番好きな作品が本書なのかもしれない。
キングは時々魔法を掛ける。それもワンダーとしか呼べないほどの。

とにもかくにも登場人物のキャラクターが立ちまくっている。語り手の刑務所看守主任ポール・エッジコムはじめ、看守ディーン・スタントン、ハリー・ターウィルガー、ブルータス・ハウエル、そしてパーシー・ウェットモア。

一方で囚人たちもまた粒揃いのキャラクターが揃っている。
エデュアール・ドラクレア、〈荒くれ(ワイルド)ビル〉ことウィリアム・ウォートン、そして何よりも物語の中心となる囚人ジョン・コーフィの造形が素晴らしい。

ポール・エッジコムら他の看守にとって目の上のたん瘤であり、また悩みの種であったパーシー・ウェットモアとウィリアム・ウォートンがまさかこんな形で片付けられようとは。なんという始末の付け方だ。
私はこのシーンを読んだときにキングに神を見た。

最後の最後まで驚きと感動が詰まった作品だった。前書きでキングは結末まで考えてなく、読者同様作者もどんな結末になるか解らないと書いてあるが、それが信じられないほど、全てが収まるべきところに収まり、そしてそれがこれまでにない素晴らしい物語となっていることに驚く。
やはりこれはジョン・コーフィにキングが書かされた物語ではないか、そんな風に思わされてしまう。

前書きに描かれているが、本書は難産だったらしい。しかしその苦労が報われるほどの素晴らしいお話が降りてきていた。生みの苦しみの末に出来上がった本書は現時点で私の中でキング最高作品となった。

久々に読後ため息が漏れ、世界に浸れた物語だった。やはりキングはすごい。まだこんな物語を書くのだから。
そしてその後も傑作を生みだしていることを考えると、本書がまだ彼の創作の途上に過ぎないのだ。
いやあ、もう言葉にならないね、凄すぎて。

グリーン・マイル。それは電気椅子に至る廊下がライム・グリーンのリノリウムが貼られていたことで付けられた俗称だった。
しかしこの言葉は最後に語り手のポールが嘆き呟くように、人生の最期に至る道のりを示すのではないか。
私のグリーン・マイルはまだまだ遠くにある。そして104歳のポールと異なるのは彼がそのことを絶望しているのに対し、私はまだそのことに安堵していることだ。

まだまだ読みたい本がたくさんあり、まだまだ人生を楽しみたい。
私がグリーン・マイルを歩むとき、全て成し終えたと笑顔であるように祈っている。

No.3 8点 斎藤警部
(2020/06/24 14:10登録)
コロナが世界の中心になる少し前、今年の一月から毎月一冊ペースを崩さず読みました。初めてのキングです。第六巻の折返しあたりから、読了する寂しさの予感が押し寄せて怖くなりました。初めはゆったりと、徐々に展開を速めながらも、余裕たっぷりの巨大な運動エネルギーで旋回し続けるストーリーテリングの力量は流石です。フラッシュバック群と力を張り合うかの様に現れる時折の強烈なフラッシュフォワードで、何事か?!と幻惑させられた後の節々の違和感、それにより増す推進力も素晴らしい。本格推理とは違うがフーダニット的興味もあり。ある種の⚫️⚫️誤認⚫️⚫️トリックが深い感慨をもたらす最終コーナー。ある人物の処刑シーンに前後して他の登場人物のその後の死にざまを冷静に羅列する所にも、深く遠い感慨がある。語り手の妻が或る「作戦会議」に加わり熱弁を振るうシーンは、終結間際のあの回想シーンで、一気に涙を誘う起爆剤に化けましたねえ。。。。 このラスト、わたしには良しの方角を向いていました。○○○○たことはそれだけで素晴らしい。だが締めの一文もまた素晴らしい。 まさか、生きていたとは。。。振り返れば、タイトルの重みが尋常でありません。。。。  “あのときのコーフィは、夕方の沐浴をおえたあとの赤ん坊のように清潔で、さっぱりとしていた。”

No.2 8点 ∠渉
(2013/11/26 22:17登録)
6冊あっという間に読めました。スプラッタだと思ってたら全然違って、あぁ、こんなんも書けるんだぁ、とただただ感心。伏線も沢山あるので最後は圧巻の切なさ。そして恐怖。下手するとホラーより恐いかも。混沌とした中で生きていることへの一抹の切なさを感じました。映画は、原作に忠実で大変良いのですが、なにせ、3時間超の作品だったので、見終わって僕はこういってやったよ、「ああ、神よ、ときに<グリーン・マイル>はあまりにも長すぎる。」ってね。

No.1 6点
(2009/09/16 19:23登録)
ネタバレを防止するために6分冊を毎月順次発刊していました。
ストーリーは、アメリカの刑務所で、死刑囚の大男、コーフィが不思議な力で何人かの命を救っていくという奇妙な内容です。死刑囚と看守たちとの触れ合いもあり、全体として心温まるファンタジー作品となっていますが、ホラー的要素もあり、作者らしさが表れています。
話としては面白いのですが、映画まで観てしまうと、もうこれ以上はいらないといった感じで、だいたいのストーリーも覚えているので再読したいとも思いません。その程度の作品だったのでしょうね。本格ミステリなどミステリ色の強い作品に疲れてきたときに読むのにはおススメです。

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