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ミステリの祭典

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くじ
異色作家短編集

作家 シャーリイ・ジャクスン
出版日1976年06月
平均点6.40点
書評数5人

No.5 8点 クリスティ再読
(2023/01/13 10:03登録)
友だちを家に呼んで飲食した後片づけを、「やろうか?」と友だちが申し出てくれる。ありがたいのだけども評者は断固として却下。ごめんね神経質で....他人に自分の食器を触られたり勝手な場所に片付けられるのが、どうにも許せない。

本短編集は要するにこういう感受性。自他との境界線を巡る神経戦に、言ってみれば「自分から負け続ける」話が続いている。だから評者は皮膚感覚的な「痛さ」を共感しながら読んでいた。これはほんとに、そうでない方にとっては「何をバカな?」な話だろうね。だから「おふくろの味」をユーモアと捉えることができる方って、何かうらやましい(批判ではありません、いやマジでそう思う)。
個人的なベストは「歯」。歯痛の最中って自分のアイデンティティのすべてが痛む歯にかかってしまうような、アイデンティティの奇妙な混乱があるわけだけども、それを真正面から扱うセンス。すごいな。
まあでも「くじ」は有名作だけにパターン的な部分がある。村人たちの「日常感」が読みどころかしら。

いやいや、魅入られたようにこの本読んだし傑作だと思うけど、絶対に再読したくない。

No.4 4点 蟷螂の斧
(2021/10/02 18:18登録)
オチのない短篇集。解説では詩の一種「魔性の恋人ジェームス・ハリス」)がモチーフとなっているようですが(特に②⑳など)・・・ユーモア系以外は?で肌に合わず残念
①酔い痴れて 3点 中年男はパーティの席を外し、招待主の娘(16)とおしゃべり
②魔性の恋人 5点 結婚式当日、新郎が迎えに来ず、街中を探す花嫁
③おふくろの味 7点 デヴィッドは、隣室のマーシャを自室に招き料理をふるまう。そこへ恋人らしき男が現れ・・・チャップリン系のユーモア
④決闘裁判 4点 階下に住む老婦人が盗みを働いているようだ
⑤ヴィレッジの住人 3点 かつて舞踏家を目指していたことを思い出し
⑥魔女 3点 4歳の男の子にグロい話をする男
⑦背教者 5点 飼い犬が近所の鶏を殺してしまう。犬を始末しろと言われ子供たちは
⑧どうぞお先に、アルフォンズ様 4点 子が家に連れてきた友人は黒人だった
⑨チャールズ 5点 幼稚園に悪ガキがいると子供が言う
⑩麻服の午後 4点 孫娘の自慢をしたい祖母は孫娘が作った詩を朗読するように言うが
⑪ドロシーと祖母と水兵たち 3点 幼い娘に水兵たちには近づかないようにという祖母
⑫対話 2点 夫の難しい言葉がわからないと医師に相談
⑬伝統あるりっぱな事務所 3点 息子が手紙に書いている友人の母親が訪ねて来て
⑭人形と腹話術師 6点 腹話術氏の彼女が彼にお酒は飲まないようにと言うと人形が ユーモア系
⑮曖昧の七つの型 4点 本屋で表題の本を少年が欲しがっている。それを知って側の客は
⑯アイルランドにきて踊れ 4点 老人の物売りに2人の夫人の対応はまちまち 
⑰もちろん 3点 隣に引っ越してきた人たちはいい人らしい
⑱塩の柱 5点 田舎からNYへ旅行。都会に慣れず夫人は
⑲大きな靴の男たち 4点 新妻は世間の主婦たちが家政婦に畏縮させられているのを知っているつもりだったが
⑳歯 5点 若妻は抜歯のためNY息のバスに乗る。意識がはっきりしない中、見知らぬ男が声をかけてきた
㉑ジミーからの手紙 3点 夫に届いた手紙。夫は開封しようとしない
㉒くじ 7点 三百人の村での一年に一度のくじ引き大会。石が積まれている

No.3 3点 あびびび
(2019/08/22 21:55登録)
この手の作品は「読解力」のなさを痛感する。世間の評価は素晴らしい?のだが、自分的には憂鬱になるだけで、少しも面白く思ったことはない。それを素直に評価するしかない。異色作家は苦手だ。

ただ、憂鬱にさせるということは、物語に力があるのかも知れない。

No.2 9点 斎藤警部
(2016/07/25 12:35登録)
有名な表題作のラストスパートぶりも凄いが、何より「魔性の恋人」の芳醇な味と薫りにもう何十年もシビれてる。。。 気色悪いほどサドゥン・エンドの作品がいくつか有るなあ、これがまた、たまらないのよ! 私にとって「奇妙な味」軽量級(と言っても充分重い)の理想短篇集。(重量級は『ナボコフの一ダース』)

良い痴れて /魔性の恋人 /おふくろの味 /決闘裁判 /ヴィレッジの住人 /魔女 /背教者 /どうぞお先に、アルフォンズ様 /チャールズ /麻服の午後 /ドロシーと祖母と水平たち /対話 /伝統ある立派な会社 /人形と腹話術師 /曖昧の七つの型 /アイルランドにきて踊れ /もちろん /塩の柱 / 大きな靴の男たち /歯 /ジミーからの手紙 /くじ
(早川書房 異色作家短篇集)

No.1 8点 mini
(2009/10/22 10:24登録)
異色短編作家シャーリィ・ジャクスンは男性が多いこの分野では珍しく女流作家で、「山荘奇談」や「ずっとお城で暮らしてる」など長編でも有名だが、出世作「くじ」など基本は短編作家だろう
特に得意なのが、善意の押し付けなど偽善というものに対する徹底した皮肉で、このテーマの短編は多く、作者が女性なせいか押し付けがましいオバサンが余程嫌いなのだろう
もう一つの得意技が、例えば都会と田舎の対比などの日常と非日常というテーマを象徴的に語る話で、作者の持ち味が良く出ている
表題作「くじ」は雑誌ニューヨーカーに掲載されて話題となり、ジャクスンと言うと、ああ!あの「くじ」を書いた作家、と今でも言われるような超有名な短編だが、むしろ「くじ」以外の短編に本領が発揮されている気もする
ジャクスンは白黒はっきり決着を付ける様なオチは書かないので、こうした分野の短編ですら割り切れる解決じゃないと気が済まない読者向きでは無いが、私はこの手の短編に偏見が無いので素直に楽しめたし、この早川の全集の中でも割と好きな方の短編集である

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