ワイルダー一家の失踪 レイノルド・フレイム |
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作家 | ハーバート・ブリーン |
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出版日 | 1953年11月 |
平均点 | 6.25点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 7点 | クリスティ再読 | |
(2022/11/14 23:38登録) 乱歩が「カー亜流で、カーに及ばない」と酷評したこともあって、どうも軽く見られがちな作品。でも評者なんか面白くて一気読みしてしまった。 もちろん「ワイルダー家の人々は、祖先以来、病気で死ぬのではなくて、ただ、どことも知れず立去ったまま、消え失せてしまうという、前例のない奇抜な着想に、先ずアッと驚かされる」と乱歩が「冒頭の不可思議性」を褒めたわけで、実はこのアイデアは中盤での探偵役フレームの目の前で起きた人間消失をピークにする「人間消失の恐怖」に繋がる、立派な仕掛けとして機能していると思うんだ。「自分の大切な人が消えてしまう」というのは人間にとって根源的な恐怖だ。それを突いた着想は、やっぱり優れたものだと感じる。 だから本作を「カー亜流の手品趣味」と捉えるのが、どちらか言えばつまらない観点だったのではないのかな。「不可解な人間消失」が7件起きるわけだけども、数が多いというのは一つ一つのウェイトは軽い、ということでもあるわけで、トリックにそうそう期待してもいけない。それよりも「人間消失の伝説」に覆い隠された人間模様を評価すべきだろう。 カーと比較するよりも、ニューイングランドのローカル色豊かなミステリ、という点でライツヴィル物と関連付けたりする方がずっと有益なのかもしれない。中盤のサスペンスや過去の事件の真相が一つ一つ明らかになっていく構成など、興味深く読めたわけで、印象は悪くない。まあとはいえ「今の事件」としての犯人とか真相はつまらないな(苦笑) そういえば本作は改訳を免れた数少ない西田政治訳だったりする..戦前からの関西のドンで有名な人だけど、70年代でさえ骨董扱いに近かった。今回読んだのは1992年の第6版。意外に頻繁に増刷しているわけである。「青春ミステリ」みたいな味わいも感じられて、読みづらい作品じゃない。 |
No.3 | 6点 | 蟷螂の斧 | |
(2019/09/14 18:34登録) 江戸川乱歩氏の「類別トリック集成」で「この小説のトリックは面白い。これは幾つもの人間消失小説で、その内の一二のトリックは、なかなかよく出来ている。奇術趣味ではあるが充分面白い。」とあり拝読。 湖畔の砂浜での消失トリックは風景的には印象深いものがあります。但し、トリックよりも恋愛絡みの古き良き探偵小説を楽しむ方がベターかと思います。伏線も見え見えだし・・・(笑) |
No.2 | 6点 | 斎藤警部 | |
(2018/01/11 13:39登録) 失踪だけの話じゃないのよ。。。。。。。 な~んだか古臭いし、古典と呼びたいほど輝いてないし、ロマンスはチャチぃし、みなさんこの本は読まなくていいですよ~~ 私自身は好きだけど~~ と思いながら読んでたら、忘れた頃に急襲と洒落込みやァがる犯人意外性と悪夢的全体像!! 一見つまらないメインの消失トリックも俯瞰図の中で眺めればあら不思議いきいきと輝き出す(但しそれは小説全体のメイントリックではない)。ただふざけているだけに見えたチャラいロメンス逸話さえ、まさかの。。 どうでもいい後出し要素もあるけれど、やっぱ全体的に緩い(し古臭い)んだけど、それでも最後だけはしっかり落とし前を付けられました。 あの、何故だか堪らないリリシズムを感じる湖畔の失踪(とその再現)シーンは胸中に最高の風景画を残したよ。。 終結近く、プレイナードと、それに続くイーザンのシビれる决め台詞! でも一番最後、主人公の洒落たつもりの台詞は不発! 全体通して『手際の悪いブラウン神父譚(短篇に纏められませんでした)』とでも言った体。 ところで、かの伝説の(?)推理クイズ集「トリック・ゲーム」でも本作の消失トリックは引かれておりましたな。あの美しく不気味な点描の挿絵は良かった。。 それとHPB巻末、乱歩さんの公平無私にして傍若無人な酷評には笑いました。時代だねえ。 |
No.1 | 6点 | 空 | |
(2009/12/14 21:50登録) ディクスン・カーを思わせる不気味な雰囲気と不可能興味を取り入れて1948年に書かれた、ブリーンの長編第1作です。ノンフィクションの『あなたはタバコがやめられる』の方がミステリより有名らしいですけれど。 ワイルダー家では18世紀から何人も不思議な失踪をしているという謎が魅力的です。それぞれの事件での人間消失方法よりもむしろ、それらをどうつなげていくかというところに興味をそそられました。 解説で乱歩は結末の意外性は「常套である」として不満を表明しています。確かに人間消失トリックの独創性のみを求める人にはがっかりな解決でしょうが、個人的には全体としてきっちりまとまっていると感じました。通常ミステリでは使うべきではないとされるあるものが昔の失踪のタネであるところも、乱歩は解説でネタばらししてけなしていますが、事件発生の時代を考えると使い方が自然で、しかも現在の事件にまで動機の点でからんでくるあたり、悪くない筋立てだと思います。 |