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ミステリの祭典

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福家警部補の再訪
福家警部補シリーズ

作家 大倉崇裕
出版日2009年05月
平均点6.50点
書評数4人

No.4 8点 青い車
(2016/02/21 20:50登録)
全体的に前作より読み応えが増していると思います。コロンボが自分の従兄弟やカミさんの兄弟の話を持ち出すように、福家警部補には映画マニア、寄席演芸に詳しい、アニメ好きなど多趣味という特徴があります。また、刑事コロンボでお決まりだった、警察手帳を出すまで刑事と信じてもらえないくだりはそのままで、読む度ににやにやしてしまいます。今では謎解きを中心に据えた倒叙ミステリーに拘ったシリーズは希少なので、気になる方には読んで損はないと言いたいです。
以下、各話の感想ですが刑事コロンボのネタバレを含んでいます。

①『マックス号事件』 明らかに設定は『歌声の消えた海』のオマージュです。気の利いた手がかりがしっかりあり、決め手も秀逸。以前起きた事件が犯人の墓穴となる点は『悪の温室』っぽくもあります。
②『失われた灯』 人気脚本家らしい、芝居がかった筋書きの殺人計画。コロンボでも偽装誘拐殺人はありましたが、これは犯人自身が被害者を演じる点がポイントです。決め手は『黄金のバックル』の引用と思われます。
③『相棒』 作者のコメントによると、犯行方法は『忘れられたスター』の木に登ることから連想したものとのこと。情に訴えた解決は不満な人も多そうですが、たまにはこんなのがあってもいいと思います。
④『プロジェクト・ブルー』 文庫版扉のあらすじにもありましたが、フィギュアへの愛故に犯行を認めざるを得なかった、犯人の矜持が魅力的です。ドラマ版では犯行方法を始め大きな改変があったらしく残念。

No.3 6点 E-BANKER
(2013/12/05 21:53登録)
刑事コロンボまたは古畑任三郎を模した“倒叙もの”シリーズの二作目。
決して刑事に見えない「普通のオバサン」キャラ、福家警部補が神出鬼没に事件を解き明かす。

①「マックス号事件」=東京湾を巡る豪華フェリー“マックス号”で起きた殺人事件。真犯人が弄した小賢しいトリックが、福家警部補によってジワジワ解き明かされる・・・。たったひとつの物証が致命傷になる展開は倒叙ものでは定番。
②「失われた灯」=殺人事件のアリバイとして、なんと自らが誘拐されるという大掛かりなトリックを用意した真犯人。完璧な準備と実行かと思われたが、今回も福家警部補の技ありの誘導尋問が犯人を窮地に追い込む。
③「相棒」=別に杉下右京ではないのだが・・・。今回は売れなくなった漫才コンビが主役。もちろん、一方が犯人で一方が被害者。長い期間を経て、コンビ仲も冷めてきた二人だったはずだが、やはり苦楽を共にした二人ということなのか。福家の気配りもなかなか良い。
④「プロジェクトブルー」=真犯人は玩具企画会社の新進気鋭の社長。脅迫者を亡き者にした社長に襲いかかるのはやはり福家の鋭すぎる勘と嗅覚。

以上4編。
とにかく福家警部補のキャラが強烈だ。
いつの間にか真犯人の懐に入り込み、たったひとつの物証や証言をもとに真犯人の巧緻を切り崩してしまう。
コロンボシリーズに対する作者の敬愛ぶりは有名だが、ワンパターンもここまで徹底できればむしろ清々しささえ感じてしまう。

比較すると前作(「福家警部補の挨拶」)の方が出来はいいように思うけど、本作もまずまず評価できる。
たまには“倒叙もの”という方がいれば、手に取っても損はないと思う。
でも、次作は難しいかも・・・
(個人的ベストは②かな。次いで①。あとはやや落ちる)

No.2 6点 kanamori
(2010/07/03 16:41登録)
女性警部補・福家シリーズの連作倒叙ミステリ第2弾。
探偵役の多彩な趣味は前作からのお約束で、犯人たちのバラエテイに富んだ人物造形も面白い。
なかでは、「マックス号事件」が一番印象に残りました。

No.1 6点 江守森江
(2009/07/17 21:12登録)
コロンボ型倒叙ミステリの正統継承連作短編集の第二集。
作者のコロンボ愛故に水戸黄門の印籠と同様な偉大なるマンネリ化は否めない(ブログのミステリドラマレビューを見れば、作者が結末の捻りの多彩なバリエーションを知りながら敢えてワンパターンに徹している事が伺える)
この作品集から福家のキャラがコロンボ、古畑からテレビドラマ「相棒」の杉下右京寄りにシフトして、多彩な趣味と細かい事が気になる性格が顕著になったと思う。
時には、ワンパターンを崩し、犯人をトコトン追い詰めながらも逃げ切られる等の以外な結末でもカマして欲しいとの希望はある。
※殺害動機が恐喝の諸作品で、恐喝者であり殺される被害者の余りの無防備さに疑問を抱く。
殺されなければ物語が成立しないが、現実に強請をするなら自分の命を守る為のバックアップはしていて当然だと思うのだが・・・。
ある意味'お約束'と捉え生暖かく見守って楽しむのがベターなのかも?

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