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ミステリの祭典

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空飛ぶタイヤ

作家 池井戸潤
出版日2006年09月
平均点7.33点
書評数6人

No.6 7点 麝香福郎
(2021/11/25 20:23登録)
大型トレーラーのタイヤが突如外れ、歩道を歩いていた子連れの主婦を直撃した。男の子は軽傷ですんだものの、主婦は死亡。大型トレーラーを所有していた運送会社に、業務上過失致死容疑の捜査が入る。トレーラーの製造元であるホープ自動車にはなんの過失もなかったのか。そのことを究明するために、運送会社社長の赤松は全国を走り回り、やがてホープ自動車の欠陥隠しを確信する。
なるほど、このようにして人はたやすく物事の本質を見誤るのか。ひとりの命より、社名や肩書や世間体が重要だと、このようにして思い込んでしまうわけか。「結局のところ人は皆、歯車である」というのは、赤松がつぶやく言葉である。企業や社会において歯車でしかない私たちが、どのように自分自身を獲得するか、その過程を書いている。実に牽引力のあるエンターテインメント小説であり、同時に人間性を疑うような事件の多い現在への痛烈な批判でもある。

No.5 8点 こう
(2012/11/11 22:37登録)
 社会派小説の範疇に入ると思いますががあまりミステリとは思えず重厚なエンターテインメント小説といった印象でした。
 敵役の自動車会社はいくらなんでもここまでひどいか、という描かれ方をしていますが他の池井戸作品同様最後は勧善懲悪でワンパターンな結末でしたが人間臭い主人公に感情移入しながら夢中で読めました。   

No.4 6点 メルカトル
(2012/04/14 21:33登録)
実際の事件をモチーフにした、直木賞候補の力作。
非常にリアリティに溢れ、切羽詰った男達の苦悩や熱い想いが直に伝わってくるエンターテインメント小説だ。
個性豊かな登場人物たちが、生き生きと熱気に包まれながら描かれており、まるでドキュメンタリーを読んでいるような錯覚さえ覚えるほどである。
ただ、前半はめまぐるしい展開に振り回されるような臨場感があるが、後半やや尻すぼみの感が否めない。
もう少し盛り上がりを期待したが、それほどでもなかったのがやや残念な点である。

No.3 8点 makomako
(2011/12/03 09:20登録)
 かなりの長編だが読み始めれば長さは全く気にならずにぐいぐい引き込んでいく迫力のある作品でした。登場人物が結構多いが巧みに描かれており作者の筆力を感じる。ストーリーは突発事故から始まり次々と強烈な試練が立ちはだかりまさにジェットコースターミステリーといった趣のなかに、主人公赤松の強くて弱くて人情的で実に泥臭い生き様がよく描かれている。若造の金髪門田もいいじゃないか。
 物語の結末は簡単に予測できてしうある意味で単純なお話なのだが、ぴったりと思ったとうりの結末に共感し感動する。こんな話が好きなんです。
 ただPTAの話は余分かなあ。
 それにしても悪役の大企業のモデルはすぐに見当がついてしまう。読んでいる間は実話を基にしたお話と思っていたが(以前自分が勤めていた会社関連?)、解説を読むと完全なフィクションなのだそうだ。ーー自動車、重工関係の人はどんな感じがするのかなあ。
 

No.2 8点 ある
(2011/11/29 01:37登録)
タイトルを見たときは,そういうトリックが使われる殺人事件の小説なのかな?とか思っていました。

‥が,中身はけれん味の無い真っ直ぐな社会派小説でした。
実際に起きた「事実」といくつかの「真実」にフィクションとしてのストーリー性や面白みを膨らませてあり,一気読み出来る作品です。

ベタなんでしょうが,亡くなった母親の息子が書いた「サンタさんへのお願い」には涙がホロリときました。。

No.1 7点 E-BANKER
(2009/08/02 22:25登録)
熱いオヤジたちの戦いに涙するエンターテイメント小説。
直木賞候補にも挙げられた佳作です。
~トレーラーの走行中に外れたタイヤは凶器と化し、通りがかりの母子を襲った。タイヤが飛んだ原因は「整備不良」なのか、それとも・・・。自動車会社、銀行、警察、週刊誌記者、被害者の家族など事故に関わった人それぞれの思惑と苦悩。そして「容疑者」と目された運送会社の社長が、家族や仲間とともに事故の真相に迫る。オヤジの戦いに思わず胸が熱くなる!~

粗筋からも明らかなように、本作は数年前に起こった某○菱自動車のトラックタイヤ脱輪事故を下敷きとしています。
そして、主人公として、社会の不条理に挑むのは、零細運送会社の中年社長!
大企業やメガバンクといった「厚き壁」に何度も跳ね返されるが・・・決してあきらめない!
そして、徐々に同志が増え、ついには感涙のラストを迎えます。
まぁ、このような経済系エンタメ小説を書かせたら、現在の日本で作者の右に出る者はいません。
本作も、突き詰めれば、昔ながらの「浪花節」、「勧善懲悪」といったプロットなのですが、これが実に心地よい!
やっぱり、日本人はこの手の話に弱いんですねぇ・・・
(日本経済の強さの源は、何といっても中小企業の技術力の高さでしょう。そういう意味でも、頑張れ「池井戸」と言いたくなる!)

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