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ミステリの祭典

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悼む人

作家 天童荒太
出版日2008年11月
平均点6.50点
書評数6人

No.6 7点 猫サーカス
(2023/06/19 18:43登録)
死者が出たある事件の現場を、一人の旅姿の青年が訪れる。左膝を地に着け、頭上に上げた右手を胸へ運び、何かを唱えている。見とがめた人が何をしていたかを問うと「いたませていただいていました」と答える。これが「悼む人」である。報道で知り得た死者の情報を記録したノートと共に、彼は全国の死の現場を旅しているのだ。死者を知る者と会えば必ず「誰に愛されていたか、誰を愛していたか、どんなことをして人に感謝されたことがあったか」を尋ねる。その生前の故人を偲んで「悼む」。この奇妙な男を、癌を告知された彼の母親、嫌われ者の事件記者、夫殺しの女、三人の視点から本書は語っていく。なぜ彼はこのような行為にとりつかれたのか。単純な善意ではない。宗教行為でもないという。気味悪がられ、迷惑がられることもある。とにかく周囲に違和感と疑問を刻みつける存在だ。そんなことをして何になる、偽善だ、自己満足だ、などと疑問や反感をぶつけずにおれない者たちの目を通して、彼「悼む人」は描かれているのである。事件の報道には頻繁に死が伴う。悲惨な死、愚かな死、不可解な死、あまりにも多くの死がある。だが事件は記憶されても、死者の名前や人柄には注意を払われない場合が多い。あらゆる宗教と哲学、そして文学の根源である死を、しかし「悼む人」は恐ろしいほど律義な歩行と、聞き届きる耳によって具体化していく。その行為によって、重苦しい死がふと救いに変わる。抽象に逃げない強靭さが、深く心に残る作品である。

No.5 8点 sophia
(2015/06/29 03:28登録)
説明的な文章の多さやストーリー展開の遅さがあり、話に今一つ引き込まれなかったので読了するのに時間がかかりましたが、それでもなお読んでよかったと思える感動的な作品でした。奈義倖世の夫殺しの真相を引っ張ったところが一応この作品のミステリー要素ですね。この作品の原点となったのは、短編集「あふれた愛」に収録の「喪われゆく君に」なのでしょうか。

No.4 8点 yoneppi
(2013/08/17 22:35登録)
ミステリではないが、心が洗われた。

No.3 6点 akkta2007
(2010/01/24 21:32登録)
ミステリーとは言えないかも知れないが・・・
直木賞を取った作品であり、夢中で読み進めた。
結果、宗教的な物語?とも思いもしたが・・・「悼む」ことを続け先へ先へと進む主人公の思いが旨く書かれてある作品であった。
違和感を超える読み応えのある長編であった。

No.2 3点 あるびれお
(2009/09/09 04:01登録)
直木賞の受賞作とは相性があまり良くないのかもしれません。桜庭一樹なら「私の男」ではなくて「赤朽葉家の伝説」ですし北村薫も「鷺と雪」よりももっと以前の諸作の方がインパクトが強かった。そして、先の二人以上に、天童荒太も「悼む人」ではなく「永遠の仔」でしょう、明らかに。「永遠の仔」という、魂をはげしく揺さぶられる作品を先に読んでしまっているだけに、期待値が高くなりすぎているのかもしれません。「悼む人」という設定に、読書している間、上手に入り込むことができませんでした。

No.1 7点 白い風
(2009/09/01 23:29登録)
ミステリ小説と云うより、死者を弔う愛の物語ですね。
記者・病床の母そして夫を殺した女性の3つの視点で書かれる技法は好きですね。
ただ、ラストはちょっと不満かな。
もうちょっと静人の今後が書いて欲しかったな、って気がします。

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