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ミステリの祭典

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夢果つる街

作家 トレヴェニアン
出版日1988年04月
平均点7.75点
書評数4人

No.4 7点 レッドキング
(2019/02/23 16:25登録)
「カラマーゾフの兄弟」やフォークナーを、純然たるミステリの尺度で測ったところで・・4~5点位なものだろう・・測ったところで意味がないように、これもミステリとしてのみ評価するのはもったいない。が、連続殺人フーダニットの骨格もユニークな解決ロジックも備えている立派なミステリでもあり、このサイトではミステリとして評価したい。ただ、この主人公は、マーロウ、アーチャー等とは一線を画した、見事な「文学上」のキャラである故、どうしても点数にオマケが付いてしまうのはやむを得ない。

No.3 7点 あびびび
(2011/08/25 10:41登録)
清潔な街という言うイメージがあるカナダのモントリオール。その中の「メイン」という場所は多国籍の無法地帯。そこを取り締まる伝説的なラポワント警部補が主役。

そこでイタリアから不法入国した男が殺される。この男はあるゆる層の女性と関わっており、調査を続けていくうち、複雑怪奇な事件の真相が明らかになる。それはもっとも悲しい結末だった。

ある意味、地味な物語だが、いつまでも心に残りそうな一冊。

No.2 7点 kanamori
(2010/07/23 21:29登録)
覆面作家トレヴェニアンは一時、既存作家の変名という説(たとえば「暗殺者」のロバート・ラドラムの変名説)が流れましたが、今では正体が明らかにされています。
スパイ冒険小説で名を馳せた作者ですが、本書は一転して非常に地味な警察小説で、モントリオールの”ザ・メイン”という街が舞台であり主人公でもあるといえます。
退職間際の警部補の主人公がいて殺人事件が発生しますが、ミステリ的興味よりも、吹きだまりの様な街に住む人々の生きざまを活写することに重点が置かれ、その人間模様が読みどころ。
何ともいい難い重厚な雰囲気が漂っていて好みではありますが、エンタテイメント小説を期待すると裏切られる。

No.1 10点 Tetchy
(2009/04/01 19:57登録)
最初の1ページを読んだ時からこの作品は傑作だなと感じた。それも生涯忘れ得ぬほどの…。
外国の小説でこれほど町のイメージがたやすく浮かんだのは、本書が初めてではなかろうか?
それは著者が街の住人を誰一人として疎かにせず、見事に活写したため。
行間から息吹が、匂いが立ち上ってくるが故に、それぞれが皆、確かに生きていた。

明るい未来の見えぬ街“ザ・メイン”はそのまま主人公ラポワントであるといえよう。心臓に爆弾を抱えた彼と、何か不穏な空気を秘めたこの街は、いつそれがカタストロフィを迎えてもおかしくはない。だからラポワントはそれ以上を求めない。彼は彼の流儀で“ザ・メイン”を取り締まる。

十年、いや二十年に一度出るか出ないかの稀に見る傑作だ。

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