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ミステリの祭典

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死の競歩
クリッブ&サッカレイ

作家 ピーター・ラヴゼイ
出版日1973年01月
平均点5.60点
書評数5人

No.5 6点 人並由真
(2020/08/27 04:41登録)
(ネタバレなし)
 1970年の英国作品。
 これも購入してウン十年目に、ようやく読んだ蔵書の一冊(笑・汗)。
 評者はクリップ&サッカレイものは、大昔に先に別の作品を2冊ほど読んでいるハズである。内容はもうまったく、どちらも忘却の彼方だが。

 本作に関しては、都筑道夫がこの作品について語ったエッセイなどが有名。
 ただし個人的には、刊行当時の「ミステリマガジン」の読者欄「響きと怒り」に掲載された本書を読んだいずこかのミステリファンの感想「犯人探しと、誰が優勝するかの興味で二重に楽しめる(大意)」などの方がずっと印象に残っていた。
 まあそのこと自体は、本作の大設定を考えればそういう作りになるだろうな、くらいに思えるものであり、特に読み手の意表をつく趣向でもない。それでも実際に現物を読み始めると、やはりその二つの興味の相乗感がとても楽しい一冊であった。

 個人的には、競歩「ウォップル」の勝者はこのキャラになるだろうと途中で読みをかけた登場人物がひとりいたのだが、ものの見事にハズれた(笑)。
 今でもその某キャラが優勝した方が、ストーリー的には面白かったと思うのだが、作者ラヴゼイはちゃんとウォップルを含む時代考証を密に行って作品を書いたそうなので、あまり現実の史実にありえなさそうなフィクションは書けなかったのかもしれない? それはまあ勝手な憶測。

 読了あとに本サイトの皆さんのレビューを拝見すると「地味」というお声が多いようだが、個人的にはミステリ的にも(中略)殺人、細かい犯罪、終盤の(中略)など、事件の続出で飽きなかった。伏線と手がかりが弱い気はするが、小中の事件とメインの殺人事件の関連性など、ちょっと工夫がある感じで悪くはない。
 どっか昭和の国産ミステリ(B級パズラー)っぽい味わいもあるが、その辺もまた本作のカラーという感じ。全部ひっくるめて、結構楽しめた。

No.4 5点 nukkam
(2015/08/16 22:00登録)
(ネタバレなしです) 英国のピーター・ラヴゼイ(1936年生まれ)の1970年発表のデビュー作で、ヴィクトリア朝英国を舞台にしたクリッブ巡査部長とサッカレイ巡査のコンビシリーズ作品でもあります。本書の作中時代は1879年11月、16人が参加した6日間に渡る徒歩競技という舞台がユニークです。そつなくまとめられた本格派推理小説でありますが全般に平明過ぎるとも言え(せっかくの競技描写はもう少し競り合いを盛り上げてほしかったです)、読者によっては物足りなく感じるかもしれません(いわゆる地味な英国ミステリーの典型)。クリッブの最後のせりふには(現代では問題発言でしょうけど)思わずにやりとしました。

No.3 5点 こう
(2012/02/12 22:07登録)
 ラヴゼイのデビュー作は読む前に都筑道夫氏の「黄色い部屋~」と瀬戸川氏の「夜明けの睡魔」にそれぞれ書評があり同じ作品でこんなに違うのかと感じていました。
 個人的には殺人事件、刑事の尋問など全てが競歩の進行中に行われ、レース終了とともに解決するという展開に面白みはありますが地味だなあと思わされました。

No.2 6点
(2011/06/21 21:02登録)
時代設定は1879年ですから、『緋色の研究』が出版される8年前の事件ということになります。途中でクリッブ巡査部長とサッカレイ巡査が、ホームズ風の観察による推理を披露する場面もあります。
殺人が起こるのは全体の1/3近くになってからですが、それまでも、競歩(実際にはウォッブルズという競技は歩いても走ってもかまわないのですが)の駆け引きなど、ミステリであることをほとんど忘れて楽しめます。
事件そのものは、最初に殺されるのが2人の優勝候補選手の一方といっても、展開は全然派手になりません。競技は事件後も滞りなく続けられていきます。また解決の推理も、遺書に関するアイディアを除くと実に地味です。なおこの遺書の件については、犯人指摘の前に明かされてしまうのですが、これは最後までとっておいた方がよかったかなと思えました。
しかし、無理なトリックを不自然にひねくり回すよりも、こういった自然で渋いおもしろさの作品の方が個人的には好みですね。

No.1 6点 kanamori
(2010/06/18 18:35登録)
ヴィクトリア朝ミステリ・クリッブ巡査部長シリーズの第1作。著者のデヴュー作でもあります。
このシリーズは19世紀の英国の珍しい風習などを小道具に使ったものが多くて、本作の”ウォッブル”という競技は「競歩」と訳されていますが、時間を競うのではなく限られた日数で距離を競うスポーツです。
競技中の殺人を競技中に解決するプロットがユニークで、容疑者や証人も競技者だから、クリッブも彼らと並走しながら尋問というのが笑える。
本格ミステリとしては意外性が少ない、こじんまりとまとまった作品でした。

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