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ミステリの祭典

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落ちる

作家 多岐川恭
出版日1958年01月
平均点7.25点
書評数4人

No.4 6点 パメル
(2024/03/28 19:36登録)
直木賞受賞作「落ちる」を含めた7編からなる短編集。(単行本で読んだのだが、文庫本では10編らしい)
「落ちる」自己破壊衝動に駆られる男の物語。ラストで主人公の心境が一変する。ほろ苦い結末に驚き。
「猫」隣の家で人が殺されるのを窓から目撃してしまった女性が巻き込まれる災難。トリックに無理があるように思うが、サイコ的な犯人像が秀逸。
「ヒーローの死」九州の田舎のホテルで死んだ神童と呼ばれた男の謎。密室トリックは、古典的な機械トリックで好みではないが、自己愛に溺れた被害者の行動原理が印象に残った。
「ある脅迫」銀行員の又吉が宿直の夜、銀行強盗が入る。しかし、それは上司が計画した強盗訓練だったというのだが。観察力や洞察力に目を見張るものがある。立場が逆転していく感じが痛快。
「笑う男」収賄事件の発覚を防ぐため殺人まで犯した男が、偶然乗り合わせた男の推理に翻弄される。男の心理状態を克明に、思いがけない破綻を描いたクライムノベルの傑作。
「私は死んでいる」気が付くと、私は目をかけていた甥夫婦に自宅に閉じ込められ、死んだことにされていた。一発逆転にかける老人の闘いをユーモラスに描いたサスペンス。とぼけた犯人も、とぼけた被害者もいい味を出している。
「かわいい女」夫が自殺した。夫に束縛された妻の本性を友人が暴いていく。悪女のキャラクターに光るものがある。ラストの一文にはしびれた。皮肉な幕切れ。

No.3 7点 ボナンザ
(2021/08/01 14:32登録)
創元版。バラエティ豊かな短編集で、どれを読んでも不満を感じない良作ぞろい。

No.2 7点 斎藤警部
(2018/06/19 23:37登録)
昭和30年代中盤。バラエティ豊かと言うより締まりの緩いバラバラ感の初期短篇集。でも各作の出来はなかなか。

落ちる(表題作) 7点強
反転をサスペンスが上回る心理ホラー一本勝負はエンディングに深い味わい。横道に淫せず一気に書ききったよな勢いがいい。
しかし直木賞の応募作に「落ちる」なる縁起の悪い題名(笑)。 結果ミステリ枠として戦後初の直木賞受賞作。(戦前には「人生の阿呆」がありました)

猫 7点
妙な規模感ある大胆物理トリック。タイトルの象徴する所は何かという変則ホァットダニットにはモヤモヤする意外性あり。沼田刑事。。。。。しかしこのエンディングはなーんとも画期的で、しかも人道的にヤバくないスか??

ヒーローの死 6点弱
当たり前過ぎる結末でびっくり。昭和30年代の雰囲気はとても良い(ので大幅点数アップ)。

ある脅迫 6点
ちょっとした叙述ギミックが味。よく出来たストーリーだが、〆の小噺流儀はちょっとなあ、、もっと巧く小噺〆る人もいるよね。

笑う男   7点
これぞ推理&調査!! 題名の反転も、地味だがなかなか。 問題は、ピエール瀧をどっちの役に振ったらエエかだな。
「と、思うでしょう。ところがこれからが。。」 ← これいいねえ

私は死んでいる 7点
この設定と会話筋のユーモアはいいな、言葉選びはともかく。 Ohジジイ、いいぜ。。。。 いやあ、これほど深く温かい 、おまけに微妙にずれてる”五十歩百歩”がありましょうや!? 「どうもおかしい。何か考えてる。」 さてこれはネタバレだと思うんで一応警告しておきますが、 ’トランチャン’が実はベトナム人かタイ人の名前で日本語通じず。。というオチかとちょィと思ったもんです。。 嬉しいようで惜しいようで、やっぱりありがたく温かく淋しいエンドが印象的。

かわいい女 7点強
この構成にしてこの結末、こりゃなかなか趣き深い。重厚感ある分厚い短篇。 女と男、男と女。


なーんだか微妙にB級感漂う(でも面白い)作が目立つんだが、最初と最後に配置された「落ちる」「かわいい女」は締まりのあるA級作品、点数も高め。

No.1 9点 雨場毒太
(2008/10/30 23:43登録)
戦後初めてミステリが直木賞を受賞した、という記念すべき短編集。

どの作品も水準が高いが、

神経衰弱気味の夫と美人の妻。一見幸せそうな夫婦に忍び寄る疑念――「落ちる」
拳銃で撃たれて死んでいた男は、奇妙な日記を残していた――「ヒーローの死」
うすのろ行員が宿直している晩にやってきた強盗の正体とは――「ある脅迫」
目が覚めたら、ぐるぐる巻きに縛られて監禁されていた老人の戦い――「私は死んでいる」

の4つの短編が特におすすめ。

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