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ミステリの祭典

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屠所の羊
バーサ・クール&ドナルド・ラム 別題『ボスを倒せ』

作家 A・A・フェア
出版日1957年01月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 7点 弾十六
(2018/10/27 21:46登録)
1939年1月出版 クール&ラム第1話。
ボスの妻とかフレッドの造形が愉快です。どちらもペリー メイスン世界には絶対出てこないキャラ。でも大ネタの法律的トリックはちょっと微妙な感じ。バーサは肝心なところで結構活躍。役割分担がしっかりしてるところが良い。
銃は32口径でレバー式セイフティとグリップセイフティがあり、マガジンに7発入る自動拳銃が登場(FN M1910ですね)

No.3 5点 nukkam
(2016/05/27 20:14登録)
(ネタバレなしです) A・A・フェアは弁護士ペリイ・メイスンシリーズで有名なE・S・ガードナー(1889-1970)の別名義で、メイスンシリーズには遠く及ばないものの1939年発表の本書でスタートしたドナルド・ラムとバーサ・クールのシリーズは29長編が書き上げられました。コンビ探偵ではありますが推理も捜査も基本的にドナルドの役回りで、バーサはマネージャー的な位置づけが中心となり、そのため作品によっては彼女の影が薄いこともあります。空さんのご講評通り、メイスンシリーズもハードボイルド風なところがありますが、私立探偵を主人公にしたためか本書でドナルドがある女性とベッドインしたり、ギャングに痛めつけられてしまうなどその要素はより濃厚です。しかし本書で最も印象的なのはドナルドが11章以降でとったまさかの行動で、これには仰天しました。謎解きとしては少々不満もありますが、弁護士出身のフェア(ガードナー)にしか書けないユニークさが光ります。

No.2 6点 kanamori
(2016/04/04 18:48登録)
わけありの失業者「ぼく」こと、ドナルド・ラムは、大女のバーサ・クールが所長を務める探偵事務所に、めでたく雇われることになった。ラム君の初仕事は、贈賄事件の渦中にあり行方をくらました依頼人の夫を見つけ出して、離婚訴訟の召喚状を手渡すことだったが--------。

バーサ・クール&ドナルド・ラムの凸凹コンビ・シリーズの1作目。
ラム君の一人称語りという構成はネロ・ウルフシリーズのアーチー・グッドウィンを連想させますが、(本書を読む限りでは)ユーモアやワイズラックの味わいはさほどなく、キャラクターの魅力ではなくてプロット勝負という感じを受けます。
ホテルの部屋で起きた殺人事件の真相究明というのがメインではあるものの、ラム君がギャング組織に拉致され情報提供を強要されるというスリラー風の展開があったり、監視をすり抜けホテルの部屋に現れる被害者という不可能トリック風の謎があったり、最後は、ペリイ・メイスンばりの法網の穴をすりぬける法廷劇まであり、いろいろと盛りだくさん。読んでいるあいだは楽しめました。
ただ、振り返ってみると得心がいかないところもあります。ラム君の一世一代の法廷パフォーマンスが本書の一番の見どころではあるのですが、そういう遠回しの方法が必要だったのか、という疑問です。一応そうせざるを得なかったという説明はあるものの、いまいち納得がいかずモヤモヤ感が残りました。まあ、普通に謎解きを披露するだけだと、本書の持ち味がなくなるわけですが。

No.1 7点
(2010/12/02 21:06登録)
ガードナーをハードボイルドの系譜に入れるのは、ペリー・メイスンだけ見れば違和感があるでしょう。しかし、A・A・フェア名義で書かれたこのドナルド・ラム&バーサ・クール・シリーズを読めば、なるほどと思えます。と言ってもハメット等とは違い、軽ハードボイルドです。ユーモア・ミステリに分類されることもある軽いノリが持ち味です。
デブ所長の探偵事務所で働く若い男の一人称形式といえば、所長が名探偵というのが普通でしょう。スタウトがいい例です。しかし、本シリーズの事件解決頭脳は「ぼく」ことラム君の方であるところが特徴。この第1作は、彼がクール探偵事務所に採用されることになるところから始まります。
謎解きの要素もそれなりにあるのはこの作家ですから当然で、有名なタイプのトリックが大胆に使われています。しかし何といっても本作の見所は、終盤さすが弁護士作家と思えるとんでもない法律の抜け穴利用アイディアが飛び出してくるところでしょう。ラム君の経歴が伏線になっています。

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