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ミステリの祭典

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アリバイのA
キンジー・ミルホーン

作家 スー・グラフトン
出版日1987年03月
平均点5.50点
書評数4人

No.4 5点 クリスティ再読
(2025/01/23 17:52登録)
ヴィックやるならキンジーも...もあるんだけど、ちょっと別な狙いでグラフトンをしたい、という考えもあって、取り上げることにした。シリーズ自体初読。

イマどきハードボイルドにこだわるのも何なのかもしれないが、ヴィックがチャンドラー流をうまく女性視点で消化していることで、評者的には大変印象がいい。私立探偵小説かハードボイルドか、という設問で考えたら、やはり御三家へのまねびみたいなものがあって、初めて「ハードボイルド」と呼ぶべきだとも感じるのだ。だからヴィックはハードボイルドだが、キンジーは違うと思う。女流私立探偵小説であり、「女には向かない職業」のコーデリアに近い。

まあとはいえ、夫殺しで服役し、出獄してきた女性が訴える冤罪の再調査をキンジーが請け負った。夫の死の直後、夫とも縁がある女性が「夾竹桃の樹皮」を混入した薬という同じ手口で殺されており、そちらは迷宮入り...周辺の人に手堅く聞き込みを行うキンジーは、ラスベガスに飛ぶ。電話越しで殺人を知ったキンジーは...

こんな話。ラスベガスの殺人で本の半分を消化。展開が遅め。女関係が派手な被害者ということもあって、聞き込み先は女性が多い。その聞き込みでキンジーが「シスターフッド」といった感覚で共感していくのが、女性らしいよね...となるあたり。キンジーはバツ2子なしの独身で、とある男性のフェロモンにキンジーがやられる話とかもあるよ。

まあ普通に私立探偵小説。手堅くて意外とかそういうことはない。「ピーター卿が白馬の王子様」のヴィックがキャッチーすぎる。

No.3 7点 人並由真
(2021/01/14 06:32登録)
(ネタバレなし)
「わたし」こと32歳のキンジー・ミルホーンは、元警察官の女性で私立探偵。キンジーは、夫を毒殺した罪状で8年間服役して出所したばかりの30代半ばの女性ニッキ・ファイフから、事件を再調査して冤罪を晴らしてほしいとの依頼を受ける。キンジーは8年前に殺害されたニッキの夫ローレンスの周辺で、彼の死の直後に同じ毒薬で死亡した女性がいることに興味を抱くが。

 1982年のアメリカ作品。
 パレッキーのヴィク・シリーズだって2~3作しか読んでない評者だが、そちらと双璧を為すハズのミルホーンものなんか、これまで一冊も手にとったこともなかった。
 それでちょっと読んでみたいなと思っていたら、行きつけのブックオフの100円コーナーで一週間ほど前にこの本(HM文庫)が見つかって購入。タイトルでシリーズ第一作と一目瞭然なのは、ありがたいネ(笑)。

 それで夜中(というか明け方近く)までかけて、とにもかくにも一日で読了。
 基本的にキンジーの捜査は、彼女の視界に入ってきた情報を実に素直に順々に足で追いかけていくスタイルで、そんなオーソドックスさがとても快いし、有難い。
 なにせ自分の場合、私立探偵捜査小説を読んでいて一番イライラさせられるパターンは、主人公の軌跡またはその行動の採択にシンクロできず「なんでそっちいくの?」と戸惑わされるコトなので。しかしこの作品はほぼまったく、その手のストレスが生じない。
 これって当たり前のようで、実はすごく大事なことだ。

 登場人物はそれなりに多くて、HM文庫の人物一覧には22名の名前が並んでいるが、実際にまた自己流の人物表をまとめたら端役を含めて47人のキャラ名が出てきた。ただしおおむね丁寧にキャラクターが描き分けられているので、特に摩擦感も生じない。

 しかし捜査小説として好テンポでなかなか面白いとは思えたものの、肝心の主人公キンジーが<1980年代デビューの女探偵>として、ライバル(?)のヴィクとほとんど変わらないように思えてならなかった。
 いや<正統派ハードボイルド探偵のフォーミュラをジェンダーチェンジすると、どうしてもおのずとこうなる>というそんなフィクションの創作ロジック、その虜になってしまっているみたいなのだな。
 少なくともこのシリーズ最初の一冊を読むかぎり、そのように思っていた。途中までは。
 
 ……ただし現在、本作を最後まで読み終えると、結局もうちょっと……いや相応に、作品への評価は上がり、キンジーへの印象も変わってきている。その理由は、ここでは書けないし、書かない。
(ついでに言うなら、HM文庫巻末の解説も読まない方がいいよ。)

 ともあれ、全体としてはそれなり以上に面白かった(だからほぼイッキ読みした)。その一方で、通読には結構なカロリーを使った。アンドリュー・ヴァクス辺りまでにはいかないにせよ、その7~8割くらいのエネルギーは消費した感じ(作風はまるで違うが)。
 次にまたこのシリーズを読むのは、少し時間を置いてからにしよう。

No.2 5点 バード
(2019/10/25 10:06登録)
この本の一つ前に読んだ「双頭の悪魔」の中でアリス達が話題に出していたのでスー・グラフトンのデビュー作である本書を読んでみることに・・・、というわけではなく元々次はこれを読むつもりでした。偶々だが、触発されて読んだみたいな順番になったわね。

本書はこてこてのハードボイルド系。ハードボイルド嫌いな方は間違っても読まない方がいいかも。ただし本書はハードボイルドが売りのいわゆる広義のミステリに分類されるかと思いきや、物語の核である謎はフーダニットが中心、事件の裏に仕組まれた読者を驚かせる意外性など、従来の本格ファンもおいてけぼりにしない要素を多く内包していると思う。(訳者あとがきによると作者はクリスティを目標にしているようなので、その影響かも。)

全体としてそういう良さを感じた反面、個人的に惜しいと思う点が四つある。
1) 主人公が真実を解き明かす方法がヤマ勘のように見える。いわゆる論理が無いような気がするが・・・。(私の読み方が甘いのかな?)
2) 冒頭の1パラグラフは余計。主人公の行動を公式にネタバレしているのでクライマックス場面のハラハラ感が減少。
3) 中盤までの関係者を一人ずつ当たるパートが長すぎてだれる。丁寧に書く人数をもう少し減らした方が良かったのでは、と思う。
4) 人物同士の関係が分かりにくい。結構終盤まで登場人物一覧に戻りながら読みました。

1), 2)はミステリとしてイマイチだし、3),4)は世界観に入り込むのに障害となるので総合的に4点くらいの印象。その一方上記に書いたような本格読者向きの良さもあるし、本作でデビューした主人公キンジーの今後の活躍も気になるので1点おまけした。

No.1 5点 mini
(2008/12/07 10:49登録)
パレツキーを出すならグラフトンも出さないとね
本国では二人の評価は同等だろうし、作家活動以外ではむしろパレツキーの方が功労してる感じだが、なぜか日本だけはパレツキーよりグラフトンの方が読まれている感じがするのはなぜなんだ?
パレツキーの探偵ヴィクの方が武道の心得もあり活動的なイメージなので、本格好きが多い日本ではグラフトンの方が本格っぽいと思われているのだろうか
事件解決面では似たり寄ったりですよ(苦笑)
ただ冒頭の主役キンジー・ミルホーンの事件報告書の文章がわざとらしくて、文章だけならパレツキーの方が好きだ
その代わり人物設定などはグラフトンの方が自然な感じがする

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