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ミステリの祭典

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黄昏のベルリン

作家 連城三紀彦
出版日1988年08月
平均点5.80点
書評数5人

No.5 6点 E-BANKER
(2013/04/27 22:15登録)
1988年発表。作者としては珍しいというか唯一のスパイ小説。
まだ「ベルリンの壁」がドイツを東西に分断している時代の背景がストーリーの鍵になる。

~画家・青木優二は謎のドイツ人女性・エルザから、第二次世界大戦中、ナチスの強制収容所でユダヤ人の父親と日本人の母親の間に生まれた子供が自分だと知らされる。平穏な生活から一変、謀略渦巻くヨーロッパへ旅立つ青木・・・。幻の傑作ミステリーがいま甦る!~

これは連城らしいというのか、「らしからぬ」というのか・・・微妙。
紹介文のとおりで、本作はナチス・ドイツに端を発し、ヒトラーとその愛人で非情&冷徹な女性・マルト・リピーを中心とした謀略小説。
冒頭のブラジルでの場面から、アメリカ、日本、パリ、そしてベルリンと物語の舞台が次々と移り変わり、グローバル&壮大なスケールを感じることのできる作品ではある。
そして、終盤に判明する歴史的&驚愕の事実!
まぁ展開から考えれば、これは予想の範囲内と言えなくはないが、スパイ謀略小説ならではの面白さは味わえるだろう。

ただねぇ・・・やっぱり個人的に読みたい「連城作品」とはかなりズレてる作品ではある。
「これって収拾がつくのか?」という序盤での大風呂敷と、それを回収すべくロジックとファンタジーの間のスレスレの部分で成り立っているようなトリック&プロット。
そして粘りつくような、後味を引くような筆致・・・
これこそが連城なんだがなぁ・・・

もちろん、世評どおり、これはこれで十分面白い。だけど、高い評価はしにくいよなぁ・・・というのが正直な感想。
この手の作品が好きな方にはストライク間違いなしだろうが・・・。
(本作のヒロイン・エルザはかなり魅力的)

No.4 6点 isurrender
(2011/06/06 17:59登録)
リオから東京、パリ、ベルリンなど国際的な展開を見せるある種のスパイ小説
話の展開は悪くなかったが、「彼」を出したことで話が大きくなりすぎた感は拭えない
連発するどんでん返しというのも好みには合わなかった
だが、スリリングな展開や伏線の張り方は巧みで、面白かった

No.3 6点 STAR
(2011/05/18 11:14登録)
(かなりのネタバレあり。ご注意ください!)
スパイものです。
今から20年前以上に書かれたものだとは思えない。ただ時代背景はベルリンの壁でドイツが東西に分かれていた時なので、どうしても古い感じがして、共感しにくいかも。
でも個人的にはこの時代を背景にした作品は好きです。

父親の正体は、かなり無理があるなと思いました。父親の根底には、人種差別的発想があるので、どんなに美人の日本人女性であっても、好意をよせないかと。

ただ組織のどんでん返しには、驚き!見事やられました。細かい部分が上手く書かれています。叙述のトリックと言ってよいのでしょうか。映画化にも耐えられる叙述のトリック!

No.2 5点 ロビン
(2009/01/24 22:59登録)
「彼」の存在が表立ってきた途端、なんとなく安っぽさが目に付いてしまった。おそらくこれは僕自身の感受性に問題があるのかなと思います。
文学性は際立っていますが、ミステリとしては平凡。描かれている世界も、現代向きではないかなと。

No.1 6点 こう
(2008/08/31 23:39登録)
 いわゆる一昔前の謀略スパイ小説の範疇に入るかと思います。
 「ベルリンの壁」がキーポイントとなっており日本人それも連城三紀彦がわざわざナチスものを書いたのも驚きですが逆にこの作品のトリックは「ベルリンの壁」がないと成立しないためもしそのためにわざわざこれだけの長編を書いたとすればすごいと思います。
 ストーリーは抒情性たっぷりの連城作品らしく真相も謀略スパイ小説らしく考えられていると思います。
 但し、ストーリーはもう少し圧縮できたのではないかと思われますし、やはり第二次大戦どころかベルリンの壁が崩壊してこれだけ年月が経つと作品の出来と関係なく読者の共感が得られにくい作品となってしまったかもしれません。

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