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ミステリの祭典

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晩餐後の物語
アイリッシュ短編集1

作家 ウィリアム・アイリッシュ
出版日1972年01月
平均点7.00点
書評数4人

No.4 7点 蟷螂の斧
(2021/03/03 20:50登録)
①晩餐後の物語 9点 エレベーター内で息子を殺された父親は乗員を招待する。これぞ短篇の切れ味。この筋、昔読んだ記憶。パロディだったのかなあ?
②遺贈 8点 犯罪者?の男をギャングが襲うブラックユーモア系。単純明快で爆笑もの
③階下で待ってて 6点 彼女が訪問した部屋から消えてしまう。オチはそれほどでもないがサスペンス感の盛り上げ方は著者らしい
④金髪ごろし 7点 サイコ系の落ちは好きなんですが、若い二人組のエピソードはいま一つ効果的ではなかったような
⑤射的の名手 6点 ちょっぴり本格っぽい展開。小悪党の悪知恵が楽しい
⑥三文作家 6点 作家の苦労話。オチはユーモア系
⑦盛装した死体 6点 アリバイの時間工作はショボイが、他の工作から足がつくところがミソ
⑧ヨシワラ殺人事件 4点 外人が日本を描くとこうなっちゃうのだね

No.3 7点 斎藤警部
(2016/01/25 16:41登録)
サスペンスだとか雰囲気よりも面白い物語集として、ストーリーを追いオチを探って読むのがいい感じの一冊。酒に合う。名作の誉れ高い表題作は、フーダニットの風薫る中間部にスリルがあって良いですね、そうしておいて実は父子愛の泣かせる物語でもある。最後の見え見えなアレはオマケ。他も手を替え品を替え実に美味。「ヨシワラ」はアンコールピース。

晩餐後の物語/遺贈/階下で待ってて/金髪ごろし/射的の名手/三文作家/盛装した死体/ヨシワラ殺人事件
(創元推理文庫)

No.2 6点 ボナンザ
(2014/04/08 16:13登録)
印象に残るのはやはり表題作と金髪ごろしですね。
表題作はパロディもありましたが、原作のうまさは流石です。

No.1 8点 Tetchy
(2008/08/06 19:05登録)
元々長編自体が連作短編集のような作りのこの作者だから、短編集そのものはお手の物だと思っていたら、やはりその通りだった。

8作品のうち平凡な設定であるのは「盛装した死体」と「ヨシワラ殺人事件」の2作品のみ。
前者はアイリッシュには珍しい本格ミステリで借金の返済に困った男が仕掛ける完全犯罪を扱っている。倒叙物で刑事が執拗に犯人を追い詰めるさまはアイリッシュの長編にも通ずるものがある。
後者は日本に停泊中に吉原を訪れた水兵が巻き込まれる殺人事件。恐らく作者が日本を訪れたときに強く印象が残ったのであろう、なかなかに細かく日本が描写されている。しかしところどころ勘違いしている内容もある(番犬の代わりにコオロギを買っているなんていうのは聞いたことが無いし、結末の切腹も西洋人にとってやっぱり日本といえばこれになるのかとがっかりした)。

その他6編では表題作「晩餐後の物語」は7人の男が乗り合わせたエレベーターが事故で地下まで墜落し、その中で起きた殺人事件についての復讐譚という内容。最後のどんでん返しもなかなかなのだが、エレベーターが落ちるときはバウンドするというのと乗客は即死しないという点が引っかかった。
次の「遺贈」は夜、疾走するスポーツカーのカージャックという内容。展開が読めたが、死体が何者かを明らかにしないのが逆に新鮮。
「階下で待ってて」はいつも階下で待っている男という設定が都会の一シーンを切り取る彼らしい作品。
次の「金髪ごろし」の地下鉄の入り口にある新聞売り場を中心に繰り広げられる形もその例に漏れない。
「射撃の名手」の詐欺師が陥る犯罪事件も短編にしては濃厚な内容である。アイリッシュらしい強引な設定ながらも最後の一行にも気を配るあたり、余裕が感じられた。
「三文作家」は原稿を落とした作家の代わりに作品を仕上げることになった作家の話。これははっきり云って最後のオチからしてミステリではない。恐らく作者自身の経験から生まれた作品だろう。
今回の中でのベストは「金髪ごろし」に尽きる。それぞれの客に金髪美女殺されるという見出しの新聞に対するそれぞれの事情。最後に出てくる実業家が洩らす一言は果たして真実なのか?都会派小説というか、群衆小説というか都会の一角で新聞売り場を中心に描いた小説はアイリッシュの洒落た感覚で物語を紡ぎだす。新聞を買うそれぞれの客のドラマが描かれる。題名の金髪ごろしはこれらの人間たちを描写する1つの因子に過ぎないところがいい。だからこそ逆に最後の言葉が余韻を残す。事件は解決されないながらも最も印象の残る作品となった。
次点では「階下で待ってて」か。純な日常の出来事がやがて国際的スパイ組織の陰謀と繋がっていくというのは派手派手しいが、短編でここまで読ませることに賛辞を送りたい。題名もなかなかである。

上に書いたように、それぞれ趣向を凝らした作品群。一気に読むのが勿体無い、そんな気にさせてくれた。

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