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ミステリの祭典

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火の接吻

作家 戸川昌子
出版日1984年09月
平均点6.40点
書評数5人

No.5 8点 斎藤警部
(2019/10/03 18:56登録)
「時には小便がかかっていたようです」

幼馴染三人の再会は放火事件が契機となった。一人は消防士、一人は刑事、一人は放火魔。 趣向に癖のあるプロローグ/エピローグに挟まれ、三者の視点回しで大胆な幻想の霧をふりまきつ、それぞれの男女の沈痛な物語は絡み合ったりほぐれたり。ごく初期段階から燦めく混乱の中、いきなりの魔法が!!証拠物件が○イ◯ンの●袋から見つかったって、どういうこと。。。 途中からどうも、ダビデの星のイメージが、その一箇所だけぼやけた形が、浮かび上がって来るんですよ。なぜなら。。。 と思ってたらほらもう次の。。 

“いったい私は真実を告白しているのだろうか”

さて本作はMTV華やかなりし’80年代中盤(昭和末期)の長篇。作者にとっては17年振りの本格ミステリとのことですが、いっやー錆び付いてないこと、鈍ってないこと!! シュールな道具遣いと惑わせ上手な筋立て。日本人らしいこだわりでフランス以上にフランセーズなこの感覚は同年発表の連城三紀彦「私という名の変奏曲」を連想させます。 「◯ン◯レ◯の●」の対位法による変奏曲ではあるまいか? と思い当たるのは物語後半の後半に差し掛かる潮。 更には凍りつく名シーン「生命維持装置」。 終盤近くからピチカート・ファイヴ「神の御業」が頭の中を流れて行きました。

見事です。まるで物語の遠心力で振り飛ばされるが如くの新事実が次々に現れても「いやーー、まーだ何か隠してるだろ」って感覚の持続性が半端ない。 真犯人像は、、えっ、そっち行く!? ってちょっと慌てますけどね。

“この人は誰なんだ・・・なぜ、なにもかも心得ているような口をきくのだろう”

No.4 6点 蟷螂の斧
(2018/05/02 17:57登録)
ライオンが焼死し、その胃袋から消防士の身分証明書が出てきた。寺にライオンの形をした石仏が置かれていた。などと意味不明な現象で混沌とさせられます。「放火犯」「消防士」「刑事」のパートが交互に語られ、やがて前記の意味が明らかになってきます。後半はこれでもかというような怒涛の展開(笑)。時代(1984年)を感じたのは、点滴に空気を注入するという殺人方法が有効とされていたことでした。

No.3 5点 パメル
(2017/05/27 01:18登録)
何が起きているのか何が起きようとしているのかが見えずらく幻想的で奇妙な作風が特徴的な作者
この作品も「消防士」「放火魔」「刑事」の三視点で微妙に繋がり微妙に食い違うため
現実と妄想の区別が定かでは無いまま進行していき少々読みずらさを感じる
人間関係の解明と謎の解明とが一体となった心理サスペンスで物語は二転三転する展開で楽しめる
ただし伏線は弱いし何故●●●ンなのか何故●●●男なのかの謎は残ったままなところが不満

No.2 5点 misty2
(2011/03/02 00:39登録)
絶版にとなる前に手に入れたく、拝読。
場面場面の切り返しが小気味良く、また登場人物数も程良い。
女史の巧みさに敬意。

No.1 8点 こう
(2008/08/04 23:38登録)
 寡作家ですが力作が多い戸川昌子の現時点では最後の長編です。
 26年前、火事で画家が逃げ遅れて焼死した。出火原因として画家の息子を含む3人の幼稚園児が原因と考えられた。
 26年後決まった日に放火が起きて、放火魔、刑事、消防隊員の3つの視点で物語は進み、途中で26年前の放火事件とつながってきて、という話です。
 読んでいくと当然放火魔=犯人なわけですがそこから過去の真相、現在の放火の真相も含めて二転、三転するストーリーは読みごたえがあります。強いていえばやはり死人が多く殺害動機として弱いものもありますが作品自体は非常に面白いです。
 全ての真相を当てるのは正直不可能かと思いますが、記述的にはフェアな作品だと思います。
 またラストには皮肉の利いた結末まで用意されており一読の価値があるかと思います。現在、簡単に文庫が手に入る状況でありおそらくそのうち絶版になると思いますので今のうちに手に入れるのをお薦めします。
 「大いなる幻影」へのオマージュもありこちらを読んでいる方には一か所面白い所もあります。

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