クイーン犯罪実験室 エラリイ・クイーン |
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作家 | エラリイ・クイーン |
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出版日 | 1976年03月 |
平均点 | 4.75点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 5点 | クリスティ再読 | |
(2025/06/25 15:28登録) リー存命中に出たエラリー・クイーン最後の正規の短編集。1955年から1966年までアゴーシーやらキャバリエやら男性誌に掲載されたあと、EQMMに再掲載、短編集にまとまった作品集。リーが長編に関わっていない時期の作品もあるから、「推理の芸術」ではリーが短編にも関わっていない可能性を示唆している。 内容的には長めで独立した内容の「菊花殺人事件」と「エイブラハム・リンカンの鍵」の間に、「推論における現代的問題」として4作、「新クイーン検察局」としてショートショート8作、「パズル・クラブ」としてショートショート2作が挟まっている。ミステリとしてはダイイングメッセージなどの暗号謎解き系が多いが、ライツヴィル物が「菊花」と「結婚式の前夜」と2作あって、ライツヴィルの若手外科医コンク・ファーナムが共通して登場する。やはりライツヴィル物はキャラ造形もちゃんとしたものになりやすい。「現代的問題」シリーズは教育・交通問題・住宅難・高利貸などの社会問題がテーマになっていて、新冒険のスポーツシリーズみたいな印象。でも新冒険には遠く及ばないな。 好きなのは「駐車難」「国会図書館の秘密」かな。「菊花」の多段オチみたいな構成は少し面白いが。あと「パズル・クラブ」は今になって読めばアシモフの「黒後家蜘蛛の会」のオリジナルみたいなものかも。クイーンの初出は1966年で、アシモフは1971年だから、アシモフが参考にしたのではないのだろうか。「パズル・クラブ」の後続作は「間違いの悲劇」に収録されている。 一応これで真作の長編と短編集がコンプになるから、クイーンは打ち止めかな。ラジオドラマや外典までコンプするほどのこだわりはない。 |
No.3 | 5点 | レッドキング | |
(2022/04/20 19:09登録) エラリー・クイーン第六短編集。 ロジックとパズルとダイイングメッセージと・・・クイーンエッセンスやね 「菊花殺人事件」 菊狂い老人と孝明天皇(!)由来のダイヤと金庫を巡るダイイングメッセージ。4点。 推論における現代的問題 6点。 「実地教育」三人の容疑者中学生から犯人を探し出すバイト先のロジック。 「駐車難」三人の容疑者求婚者から犯人を探し出す車とレインコートのロジック。 「住宅難」三室の下宿人容疑者から犯人を探し出す紙幣と銃のロジック。 「奇跡は起こる」借金人容疑者達から犯人を探し出す廃棄書類のロジック。 新クイーン検察局 5点。 「さびしい花嫁」 花嫁に欠くべからざるペアは・・紙幣隠し場所の気絶メッセージ。 「国会図書館の秘密」シェイクスピアとショーは分るが・・グラント・・浮かばんなア 「替え玉」 "MIX C"のダイイングメッセージや如何に・・ 「こわれた T」 切れ目の入った"T"を持つネオン"EAT"の真相は・・ 「半分の手懸り」 カプセルの色柄からの犯人特定ロジック。 「結婚式の前夜」 薬物混入犯特定の言葉使いロジック・・話は面白いんだが。 「最後に死ぬ者」 一分一秒の長生きくらべ、死亡時刻特定のロジック見事。 「ペイオフ」 罪を被り殺された男のダイイングメッセージ、が、んなもん、分からん。 パズル・クラブ 2点。 「小男のスパイ」 なんじゃ!その超特技設定・・ 「大統領は遺憾ながら」 遺憾ながら、あめりか人じゃなきゃ分らんぞ、それ。 「エイブラハム・リンカンの鍵」 ポーとリンカーンのダブル直筆付稀覯本。遺稿メモ"30 d"の意味は・・3点 |
No.2 | 5点 | Tetchy | |
(2014/07/18 23:12登録) 題名こそ『クイーンの犯罪実験室』だが、中身はミステリとしては作品を支えるには乏しいワンアイデアを基に作られた短編を集めた物。ほとんど推理クイズの域を出ない物ばかりだが、逆に云えばそんなアイデアでもミステリが書けるのかという命題にチャレンジした実験短編小説集と云えよう。 長編ミステリを著すにはネタとして弱いが、短い話ならば書けるワンアイデアを活かした短編が並ぶ。その中には英米、米仏など異国の文化の違いから生まれる違和感からエラリイが推理する短編もあり、日本人が十分楽しめる知的ゲームとなっていないものもある。 しかしそれらは恐らくダネイとリーはいつも2人でこんなアイデアを話して、ミステリの種を探していたのだろうなと云うのがよく解る、知的パズルのような趣を感じる。逆に云えばどんなアイデアでもミステリ短編に仕立てる雑誌編集者の魂というか、商業根性を感じてしまったが。 特に多いのがダイイング・メッセージ物で、特に短い単語や名前から隠されたメッセージを推理する趣向の作品が非常に多い。実に16編中7編と半分近くがそれに類する。そしてそれらが単純な犯人特定の手懸りになるわけではなく、そこからまた謎が深まる、もしくはミスリードとして使われているというヴァリエーションも見せつける。 なるほど確かに本書は犯罪実験室だ。恐らくは言葉遊びや知識を競う遊びをして思いついたアイデアの数々。それらを犯罪に応用することが出来るのかがクイーン2人の試みを示したのが本書。 ちょっとした頭の体操をするにはちょうどいい作品が、そして少しだけ感心してしまうアイデアの妙が詰まった作品が揃っている。そんなアプローチで復刊しませんか?早川書房さん! |
No.1 | 4点 | 空 | |
(2009/12/02 21:35登録) 例によってのダイイング・メッセージが実は殺人犯を示しているわけではなかった中編『菊花殺人事件』は、「MUM」の意味はともかくとして、犯人指摘の推理がクイーンにしてはあまりに平凡で高い評価はつけられません。 パズル・クラブの2作はクイズ的すぎ、小説としてのおもしろさが感じられません。 他のショート・ショートは『クイーン検察局』の水準作並でしょうか。『実地教育』がかなり印象的です。 最後の短編『エイブラハム・リンカーンの鍵』は初期某長編の二番煎じのアイディアがメインだなという感じはしますが、作者二人の趣味が出ていて悪くありません。 といったところで、まあ全体的には今ひとつといったところです。 |