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ミステリの祭典

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大東京四谷怪談
墨野隴人シリーズ

作家 高木彬光
出版日1976年01月
平均点6.00点
書評数4人

No.4 8点 虫暮部
(2025/12/12 11:40登録)
 人間関係が判りづらいな~と思ってチャート図を作りながら読んだ。読み進むにつれてアレッ? と疑念が首をもたげる。
 事件の起きるポイントがバラバラだ。いみじくもウィドウさんが記したように “思いがけない飛び火” が幾つも発生している。殺された人形師と彫師、に取材した劇作家、の遠縁の二宮家、の墓に謎の卒塔婆がある、って遠過ぎない?
 またぞろ作者の弱点が出て場当たり的に繫いだんだな、どう纏める心算だ~? と意地悪な気持でいたら、主犯と共犯が絶妙に組み合わさって平仄が合ってしまった。これは吃驚、御見逸れしました!

 更にもう一つの真相で、ウィドウさんは自分も操られたのではないかとの不安を吐露しているが、そもそも彼女が事件に関わったのは、劇作家・清水と偶然再会したからである。彼女を通じて墨野、そして用心棒の津島が巻き込まれ、その結果もう一つの再会劇が発生した。
 と考えると、“偶然ではなかった” と見ても充分妥当。操り手が慈悲深いか残酷か、どちらとも言えそうだが、その不安、当たってるよ。

No.3 5点 クリスティ再読
(2022/03/28 09:07登録)
カーの「火刑法廷」が、初めて翻訳されたとき、この作品の評価について、故江戸川乱歩先生と私とでは完全に評価が分かれた。先生はカーの作品としてはB級の作品といわれたし、私は最高傑作の一つとして頑張ったのである。(著者のあとがき)

という狙いで高木彬光が書いた「本格」でも「変格」でもない「破格探偵小説」。大南北の東海道四谷怪談になぞらえた連続殺人が起きて、犯人も「お岩さん」な作品....こういうと、凄く面白そうな作品。

確かに高木彬光ってハッタリは上手なんだけども、どうもハッタリが実質を越えているときの方が多いようにも感じるのだ。ハッタリ=ミステリとしての仕掛、と評者は捉える方だから、ミステリ作家としてこれは決して悪いことではないのだが、それでも実質と落差が激しすぎると、「何だかな...」となってしまう。墨野隴人の推理に魅力が欠けるんだよなあ。

いや「火刑法廷」の面白さって、ゴーダン・クロスの推理が詭弁に詭弁を重ねたようなインチキ臭いもので、それゆえ乱歩が「B級」と呼んだのかもしれないのだが、このインチキに理由とカーのメタな狙いがあるからこそ、「インチキ」が生きてくる...評者はそう見ている。
本作は墨野隴人が「名探偵」だからこそ、失敗しているんだろう。オカルトには墨野はかかわりがないからね。
(とはいえ「もう一つの真相」はシリーズ伏線の一つだよね)

No.2 5点 nukkam
(2018/11/29 21:28登録)
(ネタバレなしです) 1976年発表の墨野隴人シリーズ第3作で、このタイトルから怪談系を連想する方も少なくないと思いますが純然たるホラー小説ではなく、本格派推理小説要素も織り込まれています。現代版の四谷怪談の脚本を執筆中の作家がお岩を名乗る人物からそれをやめるよう脅されます。電話での脅迫というところが現代を意識しているのでしょうね。続いて劇の関係者が殺されたり、謎の卒塔婆が出現したりとホラー演出を巧みに交えた前半の展開はなかなか魅力的です。しかしこの調子を維持するのが難しかったのか、中盤は複雑な人間模様の描写に重きを置くようになってホラー要素は薄まります(登場人物リストを作りながら読むことを勧めます)。もっともあまりの悪行が明らかになる場面は下手なホラー小説よりもインパクトありますが。残念ながら機会や手段についての説明がほとんどなく、具体的な手掛かりも提示されず、読者が推理に参加できるような謎解きではありません。

No.1 6点 vivi
(2008/05/20 01:53登録)
墨野隴人シリーズの第3弾。
四谷怪談に見立てるような連続殺人ということで、
高木作品の中でも、おどろおどろしい部類に入りますね。
刺青という道具立ても、効いています。

この作品、当時の本格としては珍しい怪談仕立ての終わり方で、
論理・秩序を作品世界が侵食したというような最後ですが、
実は作者の深慮遠謀が・・・乱歩まで出して・・・すごいです。

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