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ミステリの祭典

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歳時記(ダイアリイ)
多根井理シリーズ

作家 依井貴裕
出版日1991年09月
平均点6.75点
書評数4人

No.4 6点 nukkam
(2017/03/01 12:25登録)
(ネタバレなしです) 1990年発表の多根井理(たねいさとし)シリーズ第2作の本格派推理小説です。自殺した(らしい)女性が書き遺した推理小説(その中にも理が登場します)を理が読んで謎を解くという作中作の構成を採用し、作中作を読み終えたところで「読者への挑戦状」が待ち構えています。論理の積み重ねが圧巻で一体どれだけの謎解き伏線が張ってあったのか、余裕と根気があるなら手掛かり脚注を作成してみるのも一興かもしれません。「読者への挑戦状」の中で「意外性を追求するあまり、無理な作品になってしまいました」とコメントされていますが、なるほど意外というよりも複雑に過ぎて不自然さが目立った感があります(シーマスターさんや江守森江さんのご講評で紹介されている国内作家Tの某作品を連想させる仕掛けは細部までよく説明されていますけど私の読解力レベルでは漠然としか理解できませんでした)。エピローグの犯人メッセージにも矛盾を感じないわけではありません。しかし作者の謎解きへの熱意が十分以上に伝わってくる作品でもあります。余談ですが作中で作者の依井貴裕や探偵役の多根井理のネーミングの由来が紹介されています。

No.3 7点 メルカトル
(2012/12/20 21:50登録)
再読です。
作中作という私好みの構成だが、その問題の作中作がかなり読みづらいという難点を抱え込んでいる。
その為、あまり深読みすることなく流してしまったが、解決編を読むにつれ、もっと慎重にじっくり読み進めるべきだったと悔やんでみたりして。
なぜなら、この中に伏線が嫌というほど散りばめられているのだから。
作中作の少なくない違和感は、そのまま解決編へと直結している。
なるほど、確かに読者への挑戦が堂々と宣言されているだけあって、論理的に真犯人を導き出すことが十分可能となっている。
意外なエピソードが伏線になっていたりもして、なるほどと唸らされる事しきりであった。
ただ、動機だけは犯人の告白を待つ他なかったようであるが、これは致し方ないだろう。
とにかく本作はロジックに重点を置いた、良質の本格ミステリであるのは間違いない。

No.2 7点 江守森江
(2009/07/05 15:03登録)
シーマスターさんの書評に刺激され書評を書き直した。
作中作を読んで真相を推理する形式で読者挑戦も付されている。
散りばめられた(一部のミエミエな)伏線から作者の狙いが読めやすいのと、狙い隠蔽の為に非常に読みにくい。
しかし、読みにくさは作中作だからと言い訳可能だし、伏線を散りばめ読者挑戦するスピリットは賞賛される。
読者挑戦物好きなのでスピリットの方を採点に反映させた。
※以前、書評で触れる事を躊躇ったパクリ疑惑について。
某T氏「R事件」と作者の狙いは全く同じである。
しかも狙い隠蔽の為に違和感タップリで読みにくい事まで同じ。
しかし、書評本やサイトでパクリについて目にした事が無い、共にランキング上位に評価されていたりする。
想像の域を出ないが、完成後出版まで時間が空く等の大人の事情(創元社は完成から出版まで待たされる例が多数)が業界では知られているから問題視されていないのだろうか?

No.1 7点 シーマスター
(2009/07/04 23:48登録)
(ネタバレの気配あるやも)

作中作形式を採っているが、話の筋は一見平易だし難しい言葉が多用されているわけでもない。
しかし、何となく胡散臭いストーリーテリング、マイペースで少しそらっとぼけた語り口、所々「何を言ってんの?」と首を捻らされる変な記述、誰が喋っているのか分かりづらい会話(警部が部下にも敬語を使ったりするため尚更)、更には内容とはいささかズレた情緒風味の章題・・・・・・・・「下手な都筑道夫」かと思いながら読ませられる。

ところが全ては「騙し」のためのテクニックだったんだねー

(自分のような)流し読みタイプが見破るのは容易ではないが、挑戦意欲の高い読者が舐めるように読めば、伏線がバラ撒かれている本作のトリックの看破は難しくないだろう。

だけど・・・・これは本作の少し前?に刊行された、ある有名作家の作品のパクリと言われても止むを得ないのではないか?(その辺の評価がどうなっているのかは知らないが)
でも、笑えたから良し。

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