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ミステリの祭典

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エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件

作家 ジョン・ディクスン・カー
出版日1991年12月
平均点5.25点
書評数4人

No.4 6点 レッドキング
(2021/04/26 17:18登録)
英国にとって「プロテスタントvsカトリック」てのが、信仰の問題ではなく、権力闘争の問題だと言うのは分かるが、この小説でミステリなのは「何故に、単なる一判事の死が政治利用され得る程に、民衆レベルの熱狂を得られたのか」ダニットにとどめを刺す。(英国は、ナチスドイツのユダヤアレルギー程は極端なカトリックアレルギー発作に至らず、幸運だった。)  歴史事件に正面から立ち向かったアイデアに敬意を表し2~3点加点。
でもやはり、英国歴史ミステリ言うんなら、「Who was Jack the Ripper?」の方に興味が行く。

※法的手続きと証拠証人の「論証」で進められる近代西洋法廷。一見、理性的客観的に見える有罪無罪審判も、こういう(クイーン「フォックス家」「ガラスの村」等含め)の読まされた後では、わが江戸奉行「カンと見込み」捕物と比べ、さして良い物とは思えず、それどころか、「大岡裁き」「遠山金さん裁き」の方がまだマシにさえ見え・・・

No.3 2点 nukkam
(2017/06/12 17:16登録)
(ネタバレなしです) 1936年発表の歴史ミステリーで実際に17世紀の英国で起こったゴドフリー卿暗殺事件(犯人は不明)に作者が挑戦した作品です。本書に影響を受けてリリアン・デ・ラ・トーレが「消えたエリザベス」(1945年)を、ジョセフィン・テイが「時の娘」(1951年)を書いたことでも有名で、ミステリー史上の重要作ではあるのですが感想に悩んだ作品でした。登場人物がやたら多いうえに彼らの直接的な言動描写も物語としての展開もほとんどなく、小説というよりも研究論文というべき内容です。後年のトーレは本書よりも小説としての趣向を増やし(但しまだ論文要素の方が強い)、テイに至ると小説といえる内容に発展しているのがわかります。とても低い採点にしているのは小説としての面白さを放棄していることが理由です(おまけに私の知能水準では論文としてどうかという評価もできません)。できれば別名義で発表してほしかったですね(推理「小説」を期待する読者ががっかりしないように)。

No.2 6点 kanamori
(2012/09/15 17:51登録)
チャールズⅡ世統治下の17世紀ロンドンを時代背景にしたカーの歴史ミステリ第1作。
実際の歴史的事件である治安判事の殺害事件を膨大な研究資料をもとに再現し、ミステリ作家の視点で真相を導き出すという構成なので、後に多く書かれた”チャンバラとロマンス”の歴史ミステリ群と随分テイストが違います。(「時の娘」やデ・ラ・トーレの「消えたエリザベス」などの先駆となる作品と言われているようです)。
そのため、政治的また宗教的対立関係を中心に当時の英国事情がこと細かく描かれており、馴染みのない日本の読者には敷居が高い感じもあるのですが、現在の感覚ではありえない裁判の実態などが興味深く読めました。

No.1 7点 Tetchy
(2008/12/28 14:31登録)
英国の犯罪史上のミステリといえば、やはり切り裂きジャックが一番に思い浮かび、本作で取り上げられているエドマンド・ゴドフリー卿殺害事件については日本の読者には馴染みの薄いものであろう。私自身、この本に当たるまで全く知らなかった。

まず驚かされるのは登場人物表に記載された人物の多さだ。なんと75名!しかしそれにも関わらず、登場人物の混乱は起きなかった。それぞれに個性があり、またカーの書き分けが素晴らしかったのだろう。

もっとも驚かされるのは犯罪調査委員会の委員長の横暴ぶり
非常に非人道的で、自分の意に沿わない関係者を平気で脅迫する。
つまり裁判も公平なものでは勿論なく、証人、被告人が事実を告白しても、その者がプロテスタントではなくカトリックならば、嘘をついている、証言は出まかせだといって取り上げないのだ。いやはや、ものすごい時代である。

本作は正確には未解決事件の真相を探るノンフィクション物だとして読むよりも、17世紀のチャールズ二世政権時代を語った歴史書として読む方が正しいだろう。この事件の真相は?というよりもこの事件が当時イギリスに何を起こしたのか?
カーの、未解決事件の推理力は元より歴史物作家としての技量の高さを知る上でも貴重な作品だろう。

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