home

ミステリの祭典

login
龍神池の殺人
弥生原公彦シリーズ

作家 篠田秀幸
出版日2004年04月
平均点6.50点
書評数4人

No.4 6点 メルカトル
(2022/10/17 22:41登録)
精神科医にして名探偵・弥生原公彦宛てに「宮崎勤事件」についての謎を指摘する資料が届く。送り主は長野戸隠村の由緒ある精神病院の御曹子である龍神周二。その仮説を検証すべく龍神家を訪れた一行の眼前で奇々怪々な連続殺人劇が開幕する!人智を遙かに超えた不可能犯罪「龍神家連続殺人事件」は一族に対する龍の呪いなのか?弥生原公彦が難事件に挑む、本格ミステリーの書き下ろし長篇。好評シリーズ第八弾。
『BOOK』データベースより。

本シリーズを読んだのは随分昔の話で、『人形村の殺人』ただ一作。それでも何故か弥生原公彦という探偵が妙に印象に残っているのは、どういう訳なんでしょうか。内容はほぼ忘れましたが、悪く言えば紛い物の様だったという事しか・・・。
で本作ですが、冒頭龍神池の伝説に始まり、宮崎勤事件の概要、横溝正史の某作品を丸パクリしたエピソードと実に濃い幕開けで圧倒されました。これから一体何が始まるのかワクワク感が堪りません。

本題に入ってから事件が起こるまでやや長いですが、その後はテンポよく失踪などの事件が続きます。しかも不可能趣向に溢れ、そこまで風呂敷を広げてしょうもないトリックだったら嫌だなとの思いを強くしました。結果的には可もなく不可もなくで、小振りな印象でした。二度の読者への挑戦状が挟まれていて、私の推測はそこそこ良い所まで行っていたんですが、やはりプロの作家には敵いませんね。
しかし、色々と瑕疵が見られ、それがマイナス点となりました。例えば殺人予告は何の意味があったのか、わざわざ密室を作ったりしたのも徒労としか思えませんし。最も謎に包まれた桃子殺害もトリックの為のトリックみたいに感じました。
尚、宮崎勤事件は飽くまで発端でありながら、その鋭い考察(参考文献によるものかも知れませんが)、は一読に値するものだと思います。

No.3 5点 nukkam
(2015/08/12 16:24登録)
(ネタバレなしです) 2004年発表の弥生原公彦シリーズ第8作の本格派推理小説です。恒例の「読者への挑戦状」が2回も用意されており、最初の挑戦状で謎を解ければ名探偵級、2回目で真相にたどりつけば準名探偵級と読者を挑発します。ヴァン・ダインの「ドラゴン殺人事件」(1933年)のパロディー要素が強い作品で、ぜひヴァン・ダイン作品を先に読んでおく事を勧めます。ただせっかくヴァン・ダインを意識しているのに、「ヴァン・ダインの二十則」(1928年)を破っている謎解きがあったのはちょっと残念でした。

No.2 8点 測量ボ-イ
(2010/01/24 13:17登録)
いやあ、これは主要関係者のうちの大部分が殺されたり、
亡くなったりと壮絶な作品です。まあ謎解き小説として
は十分堪能できましたが。
事件の真犯人は、他の弥生原シリ-ズを読んでその傾向
を知る方にはある程度解りやすいかも(微妙にネタばれ
?)

全体としてはよくできた作品です。氏のベスト作だと思
う「悪霊館」よりやや落ちなるも、「幻影城」とはほぼ
互角の評価と思われるので、採点は8点。

No.1 7点 E-BANKER
(2009/12/01 23:09登録)
弥生原探偵譚の第8作目。
氏の作品は必ず既作品のオマージュとなっていますが、本作はヴァン・ダインの「ドラゴン殺人事件」と横溝「迷路荘の惨劇」、そして松谷みよ子の「龍の子太郎」の3つが下敷きになっています・・・(すごいですね)
例によって、本格物の要素を詰め込みすぎるほど詰め込んでいますが、今回は久々に水準以上の出来といった印象。
アリバイトリックはよくできているものと、甚だ怪しいものが混在していますが、まぁ許容範囲でしょう。
あまりにも人が殺されていくため、「読者への挑戦」の段階ではおおよそ犯人は推定されますし、現実的な動機を持つ者があまりにも明確なのはいかがなものかとは思いました。

4レコード表示中です 書評