毒入り火刑法廷 |
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作家 | 榊林銘 |
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出版日 | 2024年02月 |
平均点 | 5.25点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 5点 | 文生 | |
(2024/05/19 07:08登録) 審問官と弁護士の攻防は逆転裁判のような小気味よさがあって楽しめます。裁判に勝つためには手段を選ばない弁護士のスタンスも面白い。枝葉の部分は悪くないんです。でも、最終的な着地がどういうことなのかがよく分からない。まとめ方の悪さによって評価を大きく落としているという印象です。 |
No.3 | 6点 | みりん | |
(2024/05/12 14:55登録) 『毒入りチョコレート事件』+『火刑法廷』かと思って読んだが、両方ともあまり関係なかったね。 読みにくい文章ってわけでもないのに、なぜかやたら疲労感が…405ページ6h4min読了。 魔女を断罪する火刑法廷は一筋縄ではいかない。「魔法」は「殺人」よりも罪が重いのです。なので、殺人は認めるけども魔法だけは使ってねぇぞと偽証する展開があったりして笑えます。取り上げられる3つの事件はすべて密室であるため、見取り図とにらめっこしながら2転3転する真相を追うのは本格的味わいがありますし、御子柴礼司シリーズで味わえるような法廷ミステリ特有の駆け引きも楽しめます。まあ、本格としては小粒感があるので、魔法少女2人の切ない友情を見届けるキャラクター小説として読めば良いのではないでしょうかね。よって、個人的には1つ目の事件がお気に入り。 1つ目の裁判は「飛行」2つ目の裁判は「変身」3つ目の裁判は「感応」がそれぞれテーマであり、しっかりとなんたらルールの順番になっている事に読後しばらくしてから気づき、シナリオ構成の妙にうなる。 ※読み飛ばしたのか不安ですが、結局2つ目の事件の密室のHowって明かされたの? |
No.2 | 5点 | 虫暮部 | |
(2024/05/09 11:48登録) 凝り過ぎて訳が判らなくなってる。どんでん返しはしっかりした基盤があってこそ成立するのだなぁと思った。魔法の不安定なルールの上で幾度も繰り返すのは厳しい。 |
No.1 | 5点 | 人並由真 | |
(2024/04/28 16:22登録) (ネタバレなし) 人類の中から、超常能力を持つ人種「魔女」が覚醒した世界。法整備のされていない段階でひとりの魔女が、その能力を使った殺人を行ない、その犯行は法律の認定外ということで無罪を勝ち取った。だがそれを機に一般人は、社会の中に潜む魔女を脅威に思い、異端視を強めるようになった。かたや覚醒した魔女たちもまた、自分の正体を保身のために秘匿するようになる。ただひとりの例外である、魔女科学の研究に協力し、女王に公認され、民衆の支持を受ける魔女の歌手シュノンソー・ド・ヴィクトゴーを除いて。そんなこの世界は、魔女が特殊能力で犯罪を犯した場合、随時開かれる臨時裁判「火刑法廷」の場で、その犯罪事実と魔女の存在を認定。即時、処刑するようになっていた。そしていま、ひとりの少女が、ある殺人事件の容疑者=魔女として裁かれる。 「魔女」が実在するパラレルワールドの世界(英国かな)を舞台にした特殊設定ミステリ。その世界観は、オカルト寄りというよりは、新人類ミュータントの台頭が人類という種の集合体を切り崩しつつある『ⅩーMEN』とかのそれに近い。要は優位人種と、それを迫害しようとする(一部は和睦をはかる)旧人類との関係性を語る作品世界である。 冒頭からマンションの上階で起きた広義の密室(かな)殺人と、それにからむ魔女審理でぐいぐい話が進み、このペースじゃ一冊埋まるわけはない、ある種の連作的な構成かな? と思ったら、実際にそうだった。 作品は「ジャーロ」に三回に分けて連載されたものらしいが、作中では三つの事件が順々に謎として提示され、ひとつひとつ決着を迎え、最後には全体としての大きな物語の結構を見せる(あまり書いてはいけないので、ここまで)。 特殊設定ものという大前提を承知の上で、謎解きミステリとして読んでいく。魔女は飛行能力や、変身、人間の精神の操作など、いくつかの行為が可能である、と情報が読者にも与えられ、その上で、謎解き作品として話が進みかける。しかしそうすると、ミステリの作劇コードを外していると思える部分が目立ってきて、振り回されて疲れた。 途中から、これはミステリの興味をダシに、良くも悪くもSFの方を優先してやりたいのかな、とも思ったり(特にふたつめの事件のあたり)。 で、まあ、最後には(以下略)。とにかく疲れた。 読後に、軽く~中度に疲労を噛み締めつつ、Amazonのレビューを覗くと平均点はそれなりに高いが、コメントは、わけがわからない作品! と悪評ひとつ。つまりはホメる人は言語化しにくい作品、あるいはヘタなことを言うと恥をかきそうな作品ということだと邪推する。 またTwitter(現Ⅹ)では、ゲーム『逆転裁判』みたいだ、との声であふれかえっている。 評者は『逆転裁判』シリーズはゲームもアニメもまったく縁がない(ノベライズを一冊読んだが)ので、その辺の感覚がまるでわからない。もしかしたら、同作のファンならもっと理解の補助線が引かれて、読みやすく楽しめるのかしれない。 (いや、『逆転裁判』うんぬんとは関係なく、単純に評者の読み方が悪いせいかもしれないが。) あるひとつの大技は楽しかったが、もしかしたら作者の方も、もう少し良い意味で内容のコンデンスさを回避して、メリハリのある演出を願いたいとも思った。 シリーズの次作が書かれるのなら、もうちょっとその意味で薄口でお願いしたい。 |