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ミステリの祭典

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涜神館殺人事件

作家 手代木正太郎
出版日2023年10月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 メルカトル
(2024/01/31 21:48登録)
“妖精の淑女”と渾名されるイカサマ霊媒師・グリフィスが招かれたのは、帝国屈指の幽霊屋敷・涜神館。
悪魔崇拝の牙城であったその館には、帝国が誇る本物の霊能力者が集っていた。
交霊会で得た霊の証言から館の謎の解明を試みる彼らを、何者かの魔手が続々と屠り去ってしまう……。
この館で一体何が起こっていたのか?
この事件は論理で解けるものなのか?
殺人と超常現象と伝承とが絡み合う先に、館に眠る忌まわしき真実が浮上するーーーー!!
Amazon内容紹介より。

前半はとにかくオカルトで押しまくります。死体が出てきても殺人が起こっても、ひたすらオカルト。それがインチキとか何らかの仕掛けではなく、本当の超常現象だから我々読者はそれを飲み込むしかありません。その辺を完全に理解してから読めば、結構楽しめます。それに加えてエログロ要素もかなりあるので、先行きが心配になる程です。でも本格なので安心して下さい。

それにしてもこのタイトル、神をも恐れぬ罰当たりなやつじゃないですか。しかし、それに見合った内容ではあります。過激と言えば過激です。まあミステリとしては地道に伏線を回収してロジックで推理を進める様なタイプではありません。反則気味な部分もありますし。それでも真相は一応理に適ったものであり、それなりに納得できます。やや動機が弱いと言うか、在りがちなものななので、その辺は減点材料。
普通のミステリに飽きた方にお薦め。かなり毛色の変わった怪作かと思います。

No.1 7点 人並由真
(2023/12/17 12:33登録)
(ネタバレなし)
 19世紀末か20世紀初頭の英国などを思わせる、心霊術関連の文化が浸透したもう一つの世界のある国。「あたし」こと20代の女性エイミー・グリフィスは少女時代に妖精にあった自覚を持つが、その後、世間からその事実を疑われ、そして現在までふたたび妖精に出会うことはなかった。長年にわたって不審の目を向けられて性分をこじらせたエイミーは居直り、今はイカサマの霊媒師「妖精の女王」と称し、自分の霊能力を信じる者たちの関心を生活の糧としていたが、そんなエイミーの前に、国家公認の心霊鑑定士である美青年ダレン・ダングラスが登場。やがてふたりは「幽霊おじさん(ゴースト・マン)」の異名をとる探偵小説作家レナード・ソーンダイクに招かれて、彼の所有するいわくつきの旧館「涜神館」で開催される、複数の新霊術師による交霊会に参加することになる。だがそこで二人が出くわしたのは、世にも凄惨な殺人劇と常軌を超えた事態だった。

 作者に関しては、4年前の「検屍人ロザリア・バーネット」シリーズの続編を待っていたが、そっちは保留のまま、別の特殊設定の新本格パズラーの新刊が今年書かれた。
 館の広めの敷地の中央にある、四方を壁で密閉された庭園の中での密室殺人事件? そのほかの怪異や怪事件が、館周辺のふんだんな図版入りで語られ、半ばイカれた登場人物たちの言動ともあいまって、ホラー風味のパズラーとしての外連味は申し分ない。

 解決を(中略)に拠った真相の一部はある意味、(中略)ではあるが、この世界観や文芸設定ならまあオッケーではあろう。
 真犯人も評者などは隙を突かれた思いで、かなり意外ではあった(察しのいい人は気づく……かな)。
 ラノベ枠内ではあるがオカルトホラー奇譚としての迫力もなかなかで、特に終盤の(中略)が(中略)してゆく図はなかなかのナイトメア感。

 凄惨で血生臭い話だが、ヤングアダルト向けのラノベレーベルみたいな叢書で刊行された作品なので、読者への配慮として最後の後味はよい。
 続編はあってもいいと思うけれど、個人的にはロザリア・バーネットの次作の方を優先してほしい。

 大技が気に入ったので、8点に近いこの点数ということで。

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