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ミステリの祭典

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ドールハウスの惨劇
蓮司&麗一シリーズ

作家 遠坂八重
出版日2023年01月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 7点 人並由真
(2024/03/13 19:52登録)
(ネタバレなし)
 鎌倉の名門進学校・冬汪(とうおう)高校。同校の2年A組の男子・滝蓮司は、同じサークル「たこ糸研究会」に所属する2年F組の美少年・卯月麗一とともに、学校周辺でのトラブルコンサルタント「便利屋」として活動していた。そんな二人のもとに、「姫」と呼ばれる学年随一の美少女(だが成績はよくない)・藤宮美耶と、その双子の妹の優等生(だが見た目はあまりに地味)・沙耶が接触。姉妹はいささか特殊な家庭環境のなか、ともにかなり特異な悩みを抱えていた。

 このサイトで初めて知った作品。
 なんか新本格パズラーっぽい雰囲気の学園青春ミステリ? かと思って手にとったが、どっちかというとイヤミス成分の多い一冊であった。
 
 微温的なエンターテインメントを基準にするなら、なかなか~かなり強烈などぎつい描写が続発するが、大枠として主人公コンビふたりの存在が、作品全体がイカれすぎないようにとのリミッターになっている。相応にスパイシーな読書体験であった。特にあの母親のキャラ描写。

 読み手が感情移入しないで読めるタイプの、青年誌の人気マンガといった感じの食感だったが、終盤に出て来る精神的に(中略)真相は、実はけっこう気に入ってしまった。
 昨年度分のSRのベスト投票の追い込み読書で手にとった一冊だが、投票まであと数日なのでシリーズ第二弾はそれまでに読めんな、ちょっと残念。
(本サイトのレビュ―を覗くと、なんかまた面白そうなので、それなりに期待を込めている。)
 まあゆっくり、楽しませていただきましょう。

No.2 7点 文生
(2023/10/28 17:22登録)
主人公コンビとその仲間たちの掛け合いが楽しい学園ものとしての側面とドロドロとした事件との温度差が魅力となっている作品。
双子の姉妹に両極端な生き方を強いる毒親が殺される事件が起き、当然、娘たちが疑われるのだがそこから高校生コンビの活躍によって意外な真実が明らかになっていく展開が面白い。密室トリックなども出てきますがそこに期待すると肩透かしを覚えることになります。もっとも、本作の主眼はそこではありません。最後に明らかになるぶっ飛んだ真相こそが本作における最大のサプライズであり、個人的にかなり驚かされました。ちょっとリアリティに欠ける点は減点対象ですが、そこに目をつぶれば青春ミステリとして大いに楽しめる作品です。

No.1 5点 メルカトル
(2023/10/22 22:30登録)
第25回ボイルドエッグズ新人賞受賞、衝撃のミステリー!
正義感の強い秀才×美麗の変人、ふたりの高校生探偵が驚愕の事件に挑む!

カルシウム摂取量全国トップ・滝 蓮司 × 眉目秀麗の超変人・卯月麗一
高2の夏、僕らはとてつもない惨劇に遭う!
Amazon内容紹介より。

ナントカ賞を受賞したらしいですが、まだまだプロの域には達していない印象です。しかも衝撃でも何でもなくて、単なる青春ミステリだと思いますよ。まあどちらかと言えば本格寄りですけどね。第一章から第六章まで惨劇と言う文字が並びます。その割には実際の事件は密室での自殺に見せかけた殺人というだけで、惨劇でも何でもありません。これは、詐欺紛いの平凡な作品とは言いすぎでしょうかね、あながち間違ってはいないと思いますよ。惨劇より酷いのは母親の娘に対する躾けと言うか、縛り付けで最早虐待と呼んでも差し支えないですね。

こんなだから、誰が殺されるかは早々に分かってしまいます。密室トリックも使い古されたものですし、昨今の手の込んだ、凝りに凝った本格ミステリと比較すると随分劣るのは誰の目から見ても明らかでしょう。ただ、一章と二章の青春を謳歌する高校生達の生き生きとした姿と、対照的な主役級の女子高生の苦悩と一瞬の輝きはリアルに描かれています。その辺りを鑑みてこの点数ですから、ミステリとしては及第点に達していない訳ですよ。期待外れでした。

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