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ミステリの祭典

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グッドナイト

作家 折原一
出版日2022年11月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 E-BANKER
(2024/02/10 12:40登録)
出ました! 折原お馴染みのプロット。一棟の集合住宅を舞台に、どこか頭や精神のねじ曲がった住人たちが互いにくんずほぐれつを繰り広げる・・・
本作の舞台は都内の私鉄駅から徒歩15分程度(?)、木造の古びたアパート『メゾン・ソレイユ』。さあ、折原ワールドの開幕! 単行本は2022年の発表。

①「永遠におやすみ」=連作の頭は、どこかねじ曲がった母子の登場。読み進むうちに当然出てくる違和感。「うん?」「この息子は・・・?」。で、物語は進み、突然の殺人劇へ。で、ラストはお決まりの新聞記事。
②「ドクロの枕」=不眠症に効くという特別装丁の豪華本。稀代のミステリー作家・梅野優作の「髑髏枕」(ドクロマクラ、ドグラ・・・ではない)。落選してばかりの作家志望の男・坂口はどうみても「倒錯のロンド」を思い出させる・・・
③「デス・トラップ」=ラストはまさか、の展開。「201号室」はどうしていつもこんな運命になるのか・・・。そして202号室からは相変わらず「チャポーン」という滴の音が聞こえてくる。
④「泣きやまない夜」=話は変わり、夫のDVから逃げ出した母娘が『メゾン・ソレイユ』にやってきた。それを追ってくる暴力夫。なのだが、やはり最後はお決まりの如く反転?させられて・・・
⑤「見ざるの部屋」=大作家「梅野優作」を監禁?することに成功した梅野の大ファンの美女。物語は「監禁された男」と「それを探ろうとするルポライター」の二者の視点が交錯し、徐々によく分からん構図に・・・
⑥「自由研究には向かない小説」=ここで、新たな主要キャストが登場(ここで?)。なんと12歳の少年。なのだが、大人なみの頭脳と鋭い洞察力を併せ持つ。彼もまた、謎の作家「梅野優作」の存在の前におかしくなっていき・・・
⑦「ラストメッセージ」=連作の最終話。ということは当然種明かしとなるべきなのに・・・なってません! いや、なってるのか? これが真相というのならばだが・・・

以上6編+1で構成される連作短編集。
すみません。私は好きです。
いや、むしろ待ってました。こんな、折原成分全開の「折原ワールド」ミステリーを!
「天井裏の散歩者」シリーズ、「グランドマンション」と連なる、「ある集合住宅に住む、おかしな住人たちが繰り広げる滅茶苦茶な折原ワールド」シリーズ(そういう呼び方をしたくなる)の続編なのか?
やはり、このシリーズ?にも一定の需要はあるっていうことだな。

もうこれは、私がどうのこうのいう作品ではありません。折原名人による「伝統芸能」とでもいうべき世界。
もちろん、「まったく楽しめない」「なんだ、こりゃ?」「つまらん」「いい加減にしろ!」などという感想を持つ方もいらっしゃるでしょう。(むしろそれが太宗かも)
そういう方は、どうぞ壁に投げつけてください。(本作にも出てくるように、芳香剤を染み込ませて枕にする手も)
しかし、もう令和ですよ、202x年ですよ!大丈夫ですか、編集者の方? 出版社の方?
もしも正気ならば、また続編を出してください。絶対読みますから。
ただ、作者の加齢が心配。やっぱり、本作にもそこは滲み出ている。仕方ないことではあるが・・・

No.2 6点 蟷螂の斧
(2023/06/25 18:31登録)
①永遠におやすみ 5点 不眠症の子供を持つ作家の母親。怖い童話を読んでやると眠るようになった。やがて飽きてしまい、母親は創作で強盗殺人の話を・・・創作と現実
②ドクロの枕 4点 有名作家・梅野優作の本が枕の中に入っている。それでよく眠ることができるという。未開封だとオークションで高く売れるというが・・・チャカポコ チャカポコ
③デストラップ 8点 暴力男から逃げて、格安の201号室に入居。201号室は殺人のあった事故物件。やがて夫がやって来た・・・犯人は現場に戻る
④泣きやまない夜 6点 女の子の夜泣きが治らない。夫から暴力を受けた後遺症である。夫は妻子を探し出して訪ねてきた・・・隣室の女
⑤見ざるの部屋 7点 作家梅野優作が部屋から出たところ声をかけられ階段から落ちてしまう。気が付くと彼のファンという女の部屋に監禁されていた・・・ミザリーの部屋?(笑)
⑥自由研究には向かない小説 6点 梅野優作の新作「グッドナイト」を担当することになった母親。このアパートに梅野優作が住んでいるという都市伝説がある。子供は探偵気取りで各部屋を訪ねその様子を記録していった・・・束見本
⑦ラストメッセージ 6点 梅野優作は寝たきりで声も出ないが、最後の小説のラストを書きたい・・・「グッドナイト」

No.1 6点 人並由真
(2023/01/27 18:58登録)
(ネタバレなし)
 60代の女性が管理人を務めている老朽アパート「メゾン・ソレイユ」。築50年ほどの3階建てのそのアパートには、人気ミステリ作家ながらめったに表に出ない「梅原優作」が、ひそかにどこかの部屋に住んでいるという風聞が流れていた。一方、入居者の中にはそれぞれの事情で不眠症の者も多く、そんな彼ら彼女らの悩みに、管理人はアパートの一角に住む、ある入居者を紹介する。

 連載短編6本に書き下ろし1本を加えてまとめた全7話の連作集で、いつもながらの折原ワールド。

 そういえば、今年(もう去年の新刊だが)もそろそろ折原作品を読みたいなぁとか、ふと思ってしまうようなファンになら、よろしいんじゃないかと。

 7編の連作のうち、一定のお約束? を外しているものも出てくるのは、起伏をつけようと作者が思っているのか、あるいはその縛りが厳しかったのでゆるめたのか、その辺はよくわからない。

 ともかく、おなじみの味の定食的には、それなりに楽しめました。

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