揺籃の都 平家物語推理抄 平家物語推理抄 |
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作家 | 羽生飛鳥 |
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出版日 | 2022年06月 |
平均点 | 7.50点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 7点 | SU | |
(2024/11/19 19:58登録) 舞台となるのは一一八〇年、清盛が都を福原に移して間もない頃。頼盛は、平家にとって縁起の悪い夢を見たと言いふらしている青侍を捕縛するように清盛に命じられる。見つけて追いかけたまではよかったが、なんとその青侍が逃げ込んだのは清盛の屋敷だった。 もはや袋の鼠と悠長に構え、清盛の息子たちと清盛邸に泊まった頼盛だったが、翌朝、その青侍がバラバラに説だsンされた死体で発見された。しかも清盛の寝床から大切な刀が盗まれたという。館は見張りも多く、勝手な出入り菜出来ない。外には降り積もった雪。さらに封印された密室の中で事件が。 物理トリックから錯覚を利用したものまで、様々な仕掛けに満ちていて実にエキサイティング。しかも、この時代ならではの価値観や習慣を上手く事件に絡めており、その腕に感心した。 |
No.3 | 7点 | ALFA | |
(2024/08/20 08:46登録) 舞台は平安末期の都(福原)、清盛邸。 厳重に警備されたクローズドサークルで起こる事件や怪異。 探偵役は清盛の弟、平頼盛。兄との確執を抱えていて謎を解かねば立場が危うくなる。 魅力的な設定と精緻なロジックで、歴史ミステリーとして楽しめる。 頼盛は、平家滅亡後も源頼朝の信頼を得て宮中で重職にあった複雑な人物で、この役柄によく合う。 人物が何だか現代的な印象なのと、謎の一部に無自覚の行動が絡むのが残念。 |
No.2 | 7点 | 猫サーカス | |
(2024/08/12 18:25登録) 治承四年、平清盛の独断専行により、福原遷都がなされる。しかし新たな都には物の怪の出没や、平家一門の凋落を告げる夢を見た青侍の噂が流れていた。その青侍の捕縛を清盛から命じられたのだが、地殿流平家の家長の平清盛だ。頼りになる家人の平弥平兵衛宗清たちとともに、青侍を発見するも、なんと清盛の邸に逃げ込まれた。清盛に面会して、邸に潜んでいるはずの青侍を捜そうとする頼盛だが、富士川で源氏の軍と対峙していた平家の軍が戦うことなく敗走したとの報告がもたらされる。さらに頼盛が泊まった清盛邸で、小長刀が消失。そして邸の外で、バラバラ死体となった青侍が発見される。清盛の息子たちに、源頼朝と内通しているとの疑いをかけられながら、頼盛は奇怪な事件の謎に挑む。物語全体の構図は複雑で、その謎を頼盛が見事に解き明かす。絶大な権力を持つ清盛から、池殿流平家を守るため、しぶしぶ探偵役を務めるのだが、推理能力はずば抜けている。関係者を集めた場で、清盛の四男の知盛と推理合戦を繰り広げて見せたが、これすらも真相を明らかにするための手段。頼盛の謎解きにより、次々と大小のトリックが暴かれていく過程は圧巻。さらに事件が解決した後、最大のサプライズが控えている。そもそも清盛は、なぜ周囲の反対を押し切って、福原に遷都したのか。作者は自ら創り出した物語を土台として、この歴史の謎、驚くべき答えを出している。史実の巧みな使い方も、本書の大きな読みどころとなっている。 |
No.1 | 9点 | HORNET | |
(2022/10/16 22:01登録) 治承四年(一一八〇年)、平清盛は京から福原への遷都を強行。清盛の息子たちは都を京へ戻すよう説得するため清盛邸を訪れるが、その夜、清盛の寝所から平家を守護する刀が消え、「化鳥を目撃した」という物の怪騒ぎが起き、翌日には平家の悪夢を喧伝していた青侍が、ばらばらに切断された屍で発見された―清盛の異母弟・平頼盛は、甥たちから源頼朝との内通を疑われながらも、事件解決に乗り出す……! 連作歴史ミステリ短編「蝶として死す」に続く平頼盛を主人公としたシリーズ、第2弾は長編。 平安後期を舞台にしながら、「いにしえのエラリイ・クイーンか!」とさえ言いたくなるような、緻密なロジックによる本格的なミステリ。時代の文化に彩られた描写に伏線が巧みに組み込まれ、解決編でそれらが見事に回収されていく。絶対的君主・清盛の差配にすべての命運がかかる平家一族の面々の、それぞれの出世を目論んだ企みも絶妙に事件に絡み、こんなミステリを編み込める作者はすごいなぁと思ってしまう。 めちゃめちゃ面白かった。 |