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ミステリの祭典

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秘境駅のクローズド・サークル

作家 鵜林伸也
出版日2022年09月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 7点 人並由真
(2023/02/16 18:19登録)
(ネタバレなし)
 5編それぞれが楽しかった。
 作風も形質もまったく違うんだけれど、連城の『変調二人羽織』辺りの初期の作品をリアルタイムの「幻影城」で読んでいたころの感触に通ずる楽しさ、そして若い作家のフレッシュさを認めた。
 ベスト編を選びたいとも思ったが、なかなかこれ一本に決められない。
 
 ネタの仕上げの面白さで「ボール」、趣向の面白さと推理の持っていき方で「ベッド」、シチュエーション(ロケーション)の魅力で表題作か。残りの二編も、ともにくっきりした魅力がある。

No.3 7点 HORNET
(2022/12/12 21:51登録)
 「足りないボールを見つけるまで帰るな!」今では絶対あり得ない(?)ような一昔前の高校野球部あるあるを題材にした「ボールがない」、オタクな香りも漂う大学の鉄道愛好サークルが鄙びた駅で遭遇した不可能殺人を描いた表題作など、謎解きを主眼とした短編集。
「ボールがない」…一昔前の「野球部あるある」をうまく題材とした快作。
「夢も死体も湧き出る温泉」…手掘り温泉が名物の鄙びた観光地で起きた不可能犯罪。
「宇宙倶楽部へようこそ」…結末としてはできすぎな感もあるが、読後感〇。
「ベッドの下でタップダンスを」…間男の悲劇。冒頭からして面白い。
「秘境駅のクローズド・サークル」…一番本格色が強い。短編で本格推理が楽しめる。
 それぞれリーダビリティが高く、非常に楽しんで読み進められる。粒ぞろいの短編集、オススメ。

No.2 6点 まさむね
(2022/11/13 20:59登録)
 作者の名は、2010年刊行の学園ミステリのアンソロジー「放課後探偵団」への収録短編(ボールがない)で存じ上げておりました。この短編集を手に取ったのは、既読の当該短編が含まれていたこともあるのですが、何より短編集のタイトルに惹かれちゃいました。秘境駅もクローズド・サークルも大好物なものですから。
 いずれの短編も小粒でしたが、皆でわちゃわちゃ推理する過程は楽しかったかな。
①ボールがない:青春ミステリとして佳作。
②夢も死体も湧き出る温泉:犯人の心理としてちょっと無理がないか。
③宇宙倶楽部へようこそ:これも青春ミステリとして好印象。
④ベッドの下でタップダンスを:コメディとして悪くないが、強引すぎないかな。
⑤秘境駅のクローズド・サークル:これも無理がある真相なのだけれど、その筋には有名な駅や実際のダイヤを用いている時点で、個人的には興味深く読ませていただきました。

No.1 5点 フェノーメノ
(2022/09/28 23:50登録)
短編集。全体的に薄味か。

「ボールがない」
放課後探偵団に収録されていた作者のデビュー作。初読時は結構楽しめた記憶があるが、改めて読むと少々弱い気もする。しかし本書中では好きな作品。
ところで放課後探偵団といえば梓崎優のスプリング・ハズ・カムで、何年も前から東京創元社の刊行予定に入っているけど、いつになったら出るのか。ちなみに昔はスプリング・ハズ・カム(仮)が書名だったけど、狼少年ABCという題で短編集が出るらしい。本書の刊行予定にも入っている。本当に出るのか?

「夢も死体も湧き出る温泉」
手掘り温泉という舞台は目新しい。しかしトリックには目新しさがない。

「宇宙倶楽部へようこそ」
作者は確か昔プラネタリウムで働いていたとか聞いたことがある気がする。そういう天文好きの一面が現れた作品なのだろう。しかしあまり好みではない。

「ベッドの下でタップダンスを」
あとがきを読むと意外な真相、意外な犯人を狙った作品のようだ。しかしそうなると事前の描写の強度というものが大事になってくるんじゃないだろうか。描写が弱すぎるので、その辺のことは読み流している。なので犯人が明らかになっても意外性を感じられない。

「秘境駅のクローズド・サークル」
スイッチバック駅を利用した割には、スイッチバックの使い方が地味すぎる気がする。それと手間がかかっている割に得られる効果も薄いような。



結局のところ最初のボールがないが一番楽しめた。

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