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ミステリの祭典

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首切り島の一夜

作家 歌野晶午
出版日2022年09月
平均点4.75点
書評数4人

No.4 5点 HORNET
(2023/06/18 22:59登録)
 永宮東高校の卒業生と元教師が、四十年ぶりに修学旅行を再現した同窓会を企画。行き先は濤海灘に浮かぶ離島、宴席で同窓生たちは旧交を温める。が、高校当時自分たちの高校をモデルにミステリを書いていたと告白した久我陽一郎が、風呂場で死体となって発見される。折悪しく荒天のため、船が運航できず、宿に足止めとなった七人は、一夜それぞれの思いにふける……。彼ら一人ひとりには、それぞれ人に言えない過去があった──。

 ……のだが、これが事件の真相にはまったく関係がない。参加者(卒業生)たちの卒業後の「それぞれの今」は、それぞれ単体でなかなか面白い物語だったが、長編「ミステリ」の評価としては上がりきらないのは致し方ないかな。
 私は読み物としてそれなりに楽しめたけど、タイトルや舞台設定、そして作者が作者だけに「本格ミステリ」としての期待値を上げてしまうと、裏切られたと感じる人もいるだろうと思われる作品。

 
 

No.3 5点 虫暮部
(2023/02/03 11:51登録)
 話がどっちへ進むか見当が付かない点は良かったが、それをアクロバティックな論理でつなげるでなく、読み終えてみると期待外れ。それは “歌野晶午にこういう方向性を期待しているわけではない” と言うことでもある。この人は過去にも幾つかそういう長編を書いて読者を困らせているな……。

No.2 5点 人並由真
(2022/11/14 18:46登録)
(ネタバレなし)
 某県にある共学校・永宮東高校。その卒業生の男女と恩師が、40年後の同窓会を開いた。会場は東海灘の離島で「星見島」の別称がある弥陀華島(みだかじま)。かつてそこを修学旅行の行き先とした一同は、同じ島の民宿「千江浪荘(ちえなみそう)」に宿泊し、三泊続けて旧交を温めあった。そんななかで、参加者のひとり、久我陽一郎が、かつて母校や自分の生活に不満があり、現実の周囲の者たちをモデルにした殺人ミステリを書きかけていたことを、話題にする。そして悪天候に閉ざされた島のなかで、実際に殺人が?

 特に歌野作品ファンでもなんでもないつもりの評者(さすがに『葉桜~』くらいは呼んでるが、ほかの代表作らしいものはほとんど手つかず)で、この数年、評者自身のミステリ熱がぶり返してからの新刊を何冊か読んだくらいの浅い読者だが、今回の新作は数年ぶりの、そして著者最大の紙幅の長編、十年ぶりの書き下ろし……とか色々と鳴り物入りなので、イソイソと手にとった。

 島に集まった元生徒の男女(みんな今は五十代の末か)や老教師、そのなかの十人弱の連中が高校時代からこれまでの半生を回顧し、それが順番を追うごとに少しずつ読み手の情報を増していく半ば連作? 短編の寄せ集めみたいな構成。ちょっとウールリッチの『聖アンセルム923号室』や『運命の宝石』とかを思わせる作りで、割とお気に入り。語られる挿話のなかにはダークなものもあれば、意外に(少なくともそのエピソードを読み終えた時点では)しんみりとハートウォーミングする話もあり、個人的には二つほど、好みの話に出会えた。

 で、ミステリとしては……うん、まあ……これはいわゆる<(中略)型>の長編でしょうね。評者もそうだったが、読み手の大半がたぶん(中略)するのは必至だと思う。
(年季の入った歌野ファンが読むなら、また違うかもしれんが。)

 そう考えるなら、大仰な惹句も、このボリューム感もすべて作者の思惑通り、なんだこれはといって怒るにあたらな……どうしよう(汗)。
 良くも悪くもかなりシンプルな裏技作品で、これでもし、作者や本書の編集者、営業などが、話題作続出、群雄割拠の今年の国内ミステリのなかで上位を狙おうとホンキで考えているのならかなりズーズーしいが、単品で読むなら、まあ無数にあるミステリのなかでタマにはこんなのもいいんじゃないかと。評点はこんなもんしかあげられないが、キライな作品ではない。

No.1 4点 フェノーメノ
(2022/10/17 02:31登録)
好みではない。
嵐で閉ざされた島での殺人事件とかそういった方向の作品を期待したら肩透かしに遭う可能性大。首切りも話には全然関係してこない。

どん詰まりになった本格ミステリに風穴を開けようとしたのかもしれないが、その方向性はこっちであっているのか、と疑問が浮かぶ。二度読み、三度読み必至と帯にあるため、もしかするとかなりテクニカルな書き方がされているのかもしれないが、何度も読む気にはなれない。
正直、序盤の同窓生が大勢でペチャクチャ喋っているところでちょっと嫌気がさした。

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