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ミステリの祭典

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ペッパーズゴースト

作家 伊坂幸太郎
出版日2021年10月
平均点4.25点
書評数4人

No.4 5点 パメル
(2025/12/01 15:05登録)
主人公の壇千郷は、飛沫を介して相手の未来が見ることが出来る「先行上映」という不思議な能力を持った中学教師。
物語は、壇がある教え子の危険な未来を「先行上映」で知り、それを阻止しようと動き出す。それと同時に、もう一人の教え子である布藤鞠子が書いた小説の原稿が登場する。その原稿には「ネコジゴハンター」と名乗る二人組のロシアンブルとアメショーが猫を虐待する者たちに復讐する様子が描かれている。壇の現実の体験と、鞠子の書く小説の物語という二つの視点が交互に進行し、やがてこれらが思いも寄らない形で交錯し、複雑に絡み合っていく。このロシアンブルとアメショーのコンビの軽妙な掛け合いが魅力的。復讐を仕事とするハードな設定とは裏腹に、ユーモラスでどこか憎めない彼らの存在が、物語に軽妙なリズムを与えている。
タイトルの「ペッパーズゴースト」とは、劇場などで使われる視覚トリックの一種で、「実在しないものが存在しているように見える」というこの技術が、物語の構造やテーマを巧妙に暗示している。
複雑な事件や復讐の話が展開する中でも、物語の根底には人生に対する温かい眼差しがある。ニーチェの「ツァラトゥストラ」を引用し、理不尽なことがあっても、能動的に行動し、幸せを見出していくことの大切さを静かに問いかけている。しっかりと現実を見るが、理想も諦めないというバランスのとりかたが絶妙。

No.3 2点 ボナンザ
(2025/10/04 19:12登録)
話の展開も遅々としており、主人公の絶妙な役に立たなさも相まって読後のもやもやが拭えない。

No.2 5点 ぴぃち
(2024/04/14 20:18登録)
飛沫感染することで他人の未来を観ることが出来る国語教師が、教え子から自作の小説を渡される。
メタ的な仕掛けも絡むトリッキーな作品だが、テンポの良い掛け合いと適度なユーモアで心地よく読める。

No.1 5点 zuso
(2022/07/19 22:14登録)
主人公は中学校の国語教師の檀で、彼には「飛沫感染」すると相手の明日を垣間見ることができる特殊能力があり、生徒の事故を防いだために生徒の父親と知り合い、テロ事件へと巻き込まれていく。
本書が面白いのはそれと並行して、生徒が書いた小説が展開することだろう。その小説が中盤になってメインの事件と複雑に絡みだしてねじれていく。思わず脱力してしまうユーモアが光るメタフィクション的趣向、複数の伏線の見事な回収、そして最後の最後に明らかになる事件の真相も鮮やか。ただし、犯行計画の動機は納得しかねる。

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