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ミステリの祭典

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十字架のカルテ

作家 知念実希人
出版日2020年03月
平均点7.50点
書評数4人

No.4 8点
(2024/08/19 18:54登録)
多重人格の話はミステリーを除いても興味深く読みました。
また主人公の精神鑑定医としての成長も楽しめました。

No.3 7点 sophia
(2023/03/14 18:53登録)
十字架から逃れようとする者、十字架を背負おうとする者、被疑者の視点、家族の視点、実に色んなパターンが網羅されていて、精神科ミステリーの王道ともいえる連作短編集です。特に最終話のどんでん返しにはぞっとさせられました。注文を付けるとするならば、凛だけではなく、影山が精神科医を志した理由なども語られると物語にもっと深みが出たのかなと思います。

No.2 8点 蟷螂の斧
(2023/01/09 13:25登録)
①闇を覗く 8点  歌舞伎町無差別通り魔事件の犯人は重度の統合失調症と診断された・・・幼馴染の死が原因?
②母の罪 6点 生後五ヶ月の娘を殺しマンションから飛び降りた母親。重度のうつ病であった。その後「悪魔が娘を殺せと脅した」と言い出した・・・詐病?
③傷の証言 7点  自宅に引きこもっていた弟が姉を刺した。弟は支離滅裂な発言をしており心神喪失状態にあったと思われた。しかし弟は明確に「殺してやる」と叫んだという・・・医療観察法
④時の浸蝕 7点 第一審で傷害致死罪(女性を殴打)で懲役8年の判決。第二審で心神喪失で無罪を主張。被害者の娘の父親が一審では、被告人は「俺が悪いんじゃない。強く殴るつもリはなかった」と言ったと証言。しかし二審で、一審での証言は嘘で被告人は「悪魔に命令された」と言ったと被告人に有利な証言をし始めた・・・心変わりの背景
⑤闇の貌 10点  同僚を刺殺した女秘書。15年前に父親を殺害、そして9年前には女高生を殺害していた。しかし多重人格と診断され不起訴となっていた。今回は?・・・多重人格を引き出す方。新人女性医師の成長物語

No.1 7点 HORNET
(2022/03/06 20:24登録)
 弓削凜は、高校時代に親友を殺害された。その犯人は、精神障害により不起訴。「精神に病があれば、罪は裁けないのか?」―その解を得るべく、凜は自らが精神鑑定医になる道を選び、その道の権威・影山司に師事する。無差別通り魔殺人の犯人、我が子を殺した母親、姉を刺した弟…さまざまな犯罪の犯行者の精神鑑定を通して、凜がたどり着いた答えは―?

 凶悪犯罪を犯した者に、責任能力はあるのか?昨今の実際の事件でも持ち上がる話題に切り込んだ作品であり、その判断を下す鑑定医の立場から描かれているのがまた興味深い。鑑定医の役割は、精神疾患であるかどうかの診断を下すこと。それもこうした領域に関しては、物理的なデータによる診断ではなく、監察医の「診察」によるため、当該の人物との面接がすべて。そうした厳しい条件の中、対象者の言動をつぶさに観察しながら診断を下す過程はまさに「推理」と呼べるもので、なるほどミステリだなと思った。
 扱うケースごとに1話になっている連作短編で、ラストは凜の親友を殺害した犯人と対峙する。うまくまとまっているし、それぞれに仕掛けが施されていて、満足のいく一作だった。

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