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ミステリの祭典

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邪教の子

作家 澤村伊智
出版日2021年08月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 7点 パメル
(2023/12/16 06:56登録)
物語は、慧斗という女性の手記から始まる。少女時代、彼女が暮らすニュウータウンに引っ越してきた同い年の茜は、親が新興宗教に入信していて娘を学校に通わせない。その茜を助け出そうとする慧斗の懸命な行動が描かれる。慧斗の手記には違和感があり、真実が明かされる前から不穏な空気をまとっている。
二部構成のプロットで、中盤に捻りを加え、知らないうちに騙されてしまうミステリの魅力を、知らないうちにオカルト教団に絡めとられてしまう恐怖に重ねて描いているのが巧い。幸せそうなのに素直に受け入れられない恐怖がある。真実が明かされると手記の持つ意味がガラリと変わり物語がひっくり返る。
タイトルの「邪教の子」が意味することは。邪教の子とは誰のことを指すのか。どんでん返しが繰り返され、帯の惹句通り最後の最後まで気が抜けない作品。

No.2 6点 HORNET
(2023/03/19 16:55登録)
 ありがちなニュータウンに、そこにカルト教団「コスモフィールド」の信者の家族が引っ越してきた。その家の娘の茜は、信者である母親に虐待を受けているらしい。主人公の慧斗は、その現状を見かねて茜の救出に乗り出そうとする。

 ある意味昨今よく題材とされる「新興宗教」をめぐるお話なのだが、物語を読み進めていくうちに当初の予想とは違う展開に。仕組まれた物語の構造に読者の視点はひっくり返され、ミステリに読み慣れていなければなかなか意表を突かれると思われる。
 真の構造が明らかになってからの後半も、黒幕の正体に関しての謎が持続され、興趣が尽きることなくラストまで読み進められる。やや強引な仕掛けと感じるところもあるが、まずます楽しめた。

No.1 7点 人並由真
(2021/11/23 05:05登録)
(ネタバレなし)
 ニュターウウン「光明が丘」。そこに住む飯田家の老夫婦は、同居のため越してきた息子夫婦、そして孫娘の茜を迎えた。だが「わたし」こと11歳の慧人(けいと)は、茜が新興宗教「コスモフィールド」の教義に憑りつかれた母・真希子によって半ば虐待されていると認める。慧人は同じクラスの仲間とともに、救いを求める茜の救出を図るが……。

 三時間強でイッキ読み。
 例によって、あんまり詳しいことを書かない方がいい内容で、十分、フツー以上に面白く読めた。
 ただし手数が多い分、さすがにその内のいくつかは先読みができる。

 あと、最後まで完読して、ものの見事に、旧世代の某大物作家の名前が頭に浮かんだ。なんだこれは2020年代の(中略)ではないか。もちろんソノ具体的な作家名は、ココではナイショだが(笑)。
 
 それと、後半の主舞台のロケーションでの、息苦しくなるようなビジュアル面での威圧感は、なかなかのもの。

 とりあえず、2年前の『予言の島』ともども、ネタバレされないうちにさっさと読むのをオススメします。
(なおジャンル分類は、未読の方のネタバレにならないように本作の方向性を秘匿するため、まずは「その他」にしておく。)

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