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ミステリの祭典

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竜の眠る浜辺

作家 山田正紀
出版日1979年05月
平均点7.50点
書評数4人

No.4 5点 蟷螂の斧
(2022/12/18 14:23登録)
SFでも、ミステリーでもない。ファンタジー、青春小説といえるのか?。父親に支配されている無気力な直己(30近い)と不倫相手に捨てられた桂子の恋をもっとメインに描いてくれたらなあと思う次第。

No.3 7点 メルカトル
(2022/12/07 22:35登録)
百合ケ浜町が、突然濃い霧に覆われた。気がつくと、この町からは誰も出られなくなっており、ティラノサウルスが闊歩する白亜紀の世界へタイムスリップしていた。町の成り上がり久能直吉と二代目直己、変わり者でなまけ者の文筆家田代、孤独なタバコ屋のシズ婆さん―町のさえない人々が、もう一つの世界でファンタジックな青春幻想を抱くもう一つの人生…。SF長篇の傑作。
『BOOK』データベースより。

これは恐竜の名を借りた群像劇、或いは人間ドラマと言って良いでしょう。そして冒険小説でもあります。勿論SF要素はありますが、それ程強くはなく何故幾種類もの恐竜が出現したのか、又何故百合ヶ浜町だけが結界の様に取り囲まれたのかなどが学者らにによって侃々諤々の議論が争われる訳でもなく、只管町民たちが恐竜との共存を模索していくに過ぎません。

しかし読んでいて何となくやる気が出てくる感じはします。それまでごく普通、いやそれ以下で地味で平凡な生活をしていた人々がこの状況により俄かに活気付いてくる姿は、こちらまで勇気づけられます。特に浮世離れした田代が何故か格好良く見えてくるから不思議です。そして個人的にはタバコ屋のお婆さんとその飼い猫がツボでした。
結末は良い感じで終わり、成程と深く肯いていました。エピローグもいい味出していましたね。

No.2 9点 文生
(2022/08/21 07:54登録)
山田正紀の著作では『神狩り』と並んで一番好きな作品です。
人生に挫折した人々が町ごと白亜紀にタイムスリップしてそのなかで生きる希望を取り戻していく話なのですが、とにかく恐竜のいる日常が楽しげで読んでいてハッピーな気持ちになれます。山田正紀の長編小説でここまで明るくてユーモラスなのはこれくらいではないでしょうか?

No.1 9点 虫暮部
(2021/04/10 12:48登録)
 ほのぼの系山田正紀の最高峰。最高峰も何も、こういう味わいの山田作品はほぼこれだけか。しかし作品リストにこの一冊があるだけで或る種のバランスが生まれている。異色作なのに代表作。
 エピローグに至っても事態は全く解決していない。にもかかわらず妙な安堵感に満たされるのは、登場人物を落ち着くべきところに落ち着かせる手際の良さ故か。

 但し、今回読み返して、“男女の役割分担”が作品全体を覆っている、とは感じた。勿論そういう時代の作品だからなのだが、普遍的なテーマの中でそれが目立つような。ああいう“ワイルド・ライフ”に於いては役割分担制に回帰してしまうものだろうか。

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