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ミステリの祭典

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Blue

作家 葉真中顕
出版日2019年04月
平均点7.67点
書評数3人

No.3 7点 take5
(2023/08/02 17:31登録)
倒叙で登録されていますが、
社会派、警察物の方かピンとくる作品。
平成史と2つの事件を追いながら
自分でも30年余りを生き直した気分です。
600ページ一気にいけます。
カットバック形式もおさらいから入って
読みやすいです。

自身が子として親として
恵まれていた(いる)から、
逆に登場人物の凄惨な人生を読み物として
受け止められるだけかもしれない、
そうでなければ文中の刑事さんみたいに---
そう感じました。

因みに平成の始まりは小さい頃、
官房長官が額を立てる所を
テレビで見たのを覚えています。
平成の終わりは仕事の多少の変化で
緊張感があった、そんな思い出が。
皆さんの平成史は如何ですか。

No.2 7点 パメル
(2023/01/24 08:05登録)
平成という時代が始まった日に生まれ、終わった日に死んだ一人の男がいた。男の名は「青」。プロローグで物語の外郭をなす情報が提示され、その男は何かしらの犯罪に手を染めたという予感が漂う。続く第一部で語られるのは、平成十五年十二月二十五日の深夜、青梅市で起きた教員一家惨殺事件だ。その家で死んでいた次女が被害者であるとされ幕を閉じたが、現場にはもう一人は存在していた痕跡があった。インタールードを挟んだ第二部で描かるのは、平成が終わる直前に起きた男女殺人事件。
二つの事件を発生直後からリアルタイムで描きながら、第一部では平成前半の、第二部では平成後半のカルチャーや社会問題をとことんピックアップしていく構成がユニーク。平成前半はバブル崩壊に象徴される昭和の負の遺産に振り回され、平成後半は前半十五年で種を播かれていた問題が一気に花開いたという事実を確信させられる。情報の濃密さそれ自体を楽しむ、いわゆる「情報小説」と理解したところで、認識の盲点を突くサプライズが第一部ラストで発動するから気が抜けない。
青をど真ん中に据えながらも、多視点群像形式を採用し、複数の個を束ねることによって時代や社会を表現しようとしている。エピローグの情景は「終わらせない平成」のメタファーとして読んだ。社会を新しくデザインしていくためにまず必要なことは、声にならない小さな声を聞き届けること。そう記し続けてきた作者の代表作といえる。

No.1 9点 HORNET
(2020/03/29 11:53登録)
 平成という時代が始まった日に生まれ、終わった日に死んだ一人の男がいた。彼の名は「青」、母親は彼を「ブルー」と呼んだ。
 平成15年のクリスマスに起きた、教員一家惨殺事件。事件は一家の次女・夏希の犯行として幕を引いたが、事件以来夏希の息子「ブルー」は行方が分からなくなっていた。それから15年の時を経た東京、ある殺害事件の捜査で再び「ブルー」の存在が浮かび上がる―。

 チーマー、アムラー、ゲームボーイ、ヒット歌謡曲などの平成の風俗文化をふんだんに散りばめながら、格差、貧困、外国人労働者といった時代の暗部も巧みに織り込み、「平成」を絶妙に描いている。
 平成最後の年に刊行された、時代を総括するかのような傑作。

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