雪が白いとき、かつそのときに限り |
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作家 | 陸秋槎 |
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出版日 | 2019年10月 |
平均点 | 7.50点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 8点 | レッドキング | |
(2025/08/05 22:24登録) ミステリマニアの生徒会長女子高生と、人生を半ば諦めたシニカルな図書室女司書の、ライトでニヒルな応酬で進行する、5年を隔てた二つの・・瓜二つの様で似て非なる・・女子高生「密室」殺人事件の解明。中国の・・現在は日本在住らしいが・・クイーン(精密ロジック)麻耶雄嵩(偏執ロジック)にして、クリスチアナ・ブランド三津田信三(ダミー解決波状展開)。しかも、密室トリックに絡めたロジック展開、いいねぇ。「虚無への供物」匂わせるホンノリとアンチミステリな「アマデウス」的動機。エピローグで、あれ?メタ飛翔(=本格的アンチ逃避)しちゃう?訝らせておいて、ちゃんと、フィクション土俵に留まるところも、また、よし(ところで「秋槎」って男女共有名なのか?)。これを、麻耶雄嵩以下、日本の新本格・新々本格・ポスト新本格の作家達が書いていたら、絶対、ライトなノベルに仕上げた事だろうに、愚直に、等身大の高校生描写に徹している。(それは良いのだが、和訳の「~なの」「~だわ」女言葉が頂けない。サラ・パレツキーの訳でも思ったが、彼女たちには「~だ」の男言葉で喋らせてほしい。) 犯人特定の「必要条件=(Aであり得る)」と、「十分条件=(A以外あり得ない)超えて(notA は在り得ない)」の明晰判明な識別。ミステリにおける「密室」存在の愚直な認識もGoodで、断固点数オマケしちゃう。 ※X-Japan、AKB、森高千里ともかく、森田童子「僕たちの失敗」まで出て来るとは・・・(^^♪ |
No.3 | 10点 | 雨兎耳須 | |
(2025/05/26 12:48登録) ネタバレ有りです。 この作品はタイトルから、密室が作られた過程、犯人は誰か…を連想させます。ですが、それは巨大なミスディレクションであり、この作品の真価は犯人の動機です。事実、過去の事件は途中で探偵役は推理を放棄してエピローグによって全貌が詳らかにされます。 自分が特別な人間である事を示すために殺人を犯すというのは小説の世界では特別珍しいことではありませんが、そこに青春期の要素を入れ、終盤まで上手く隠しながらもところどころで犯人の思想を描写によって明らかにする書き方で、独自性と共感性に優れた動機になっていると思います。この動機は共感性の観点から数十年後に読んだら9点くらいに落ちると思いますが、今の自分にはものすごく共感できたため満点以上です。 余談ですが、雪の密室での殺人において探偵役に見せかけて犯人だったという構図は某作品とそっくりですね。動機もですが様々な作品の影響があるように思えます。 |
No.2 | 6点 | ボナンザ | |
(2020/11/24 23:06登録) 前作に続き、ほのかな百合要素を交えつつしっかり本格になっているのがすごいところ。 |
No.1 | 6点 | nukkam | |
(2019/11/01 20:24登録) (ネタバレなしです) 2017年発表の長編第2作の本格派推理小説です。デビュー作の「元年春之祭」(2016年)は作中時代を古代中国(前漢)に設定していましたが本書は現代です。女子高生が活躍する青春ミステリーでもあるのですが死亡した学生がいじめに遭っていたという前振りがあるとはいえ、明るさや華やかさやユーモアの類は皆無に近く、終始暗い雰囲気に覆われています。雪の上に足跡のない雪密室の謎やアリバイ検証を地道に進めていますが作者が一番注力したのは動機ではないでしょうか。「元年春之祭」でもユニークな動機が印象的でしたが本書のもかなり珍しく、これはないと納得できない読者がいるかもしれません。虚しさを残しながら締め括った第4章の後に後日談的な終章が続き、そこでは新たな驚きが待っていますが個人的にはエンディングの順番を逆にする工夫はなかっただろうかと思いました。 |