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ミステリの祭典

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雪が白いとき、かつそのときに限り

作家 陸秋槎
出版日2019年10月
平均点7.33点
書評数3人

No.3 10点 雨兎耳須
(2025/05/26 12:48登録)
ネタバレ有りです。

この作品はタイトルから、密室が作られた過程、犯人は誰か…を連想させます。ですが、それは巨大なミスディレクションであり、この作品の真価は犯人の動機です。事実、過去の事件は途中で探偵役は推理を放棄してエピローグによって全貌が詳らかにされます。
自分が特別な人間である事を示すために殺人を犯すというのは小説の世界では特別珍しいことではありませんが、そこに青春期の要素を入れ、終盤まで上手く隠しながらもところどころで犯人の思想を描写によって明らかにする書き方で、独自性と共感性に優れた動機になっていると思います。この動機は共感性の観点から数十年後に読んだら9点くらいに落ちると思いますが、今の自分にはものすごく共感できたため満点以上です。
余談ですが、雪の密室での殺人において探偵役に見せかけて犯人だったという構図は某作品とそっくりですね。動機もですが様々な作品の影響があるように思えます。

No.2 6点 ボナンザ
(2020/11/24 23:06登録)
前作に続き、ほのかな百合要素を交えつつしっかり本格になっているのがすごいところ。

No.1 6点 nukkam
(2019/11/01 20:24登録)
(ネタバレなしです) 2017年発表の長編第2作の本格派推理小説です。デビュー作の「元年春之祭」(2016年)は作中時代を古代中国(前漢)に設定していましたが本書は現代です。女子高生が活躍する青春ミステリーでもあるのですが死亡した学生がいじめに遭っていたという前振りがあるとはいえ、明るさや華やかさやユーモアの類は皆無に近く、終始暗い雰囲気に覆われています。雪の上に足跡のない雪密室の謎やアリバイ検証を地道に進めていますが作者が一番注力したのは動機ではないでしょうか。「元年春之祭」でもユニークな動機が印象的でしたが本書のもかなり珍しく、これはないと納得できない読者がいるかもしれません。虚しさを残しながら締め括った第4章の後に後日談的な終章が続き、そこでは新たな驚きが待っていますが個人的にはエンディングの順番を逆にする工夫はなかっただろうかと思いました。

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