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ミステリの祭典

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おまえの罪を自白しろ

作家 真保裕一
出版日2019年04月
平均点5.75点
書評数4人

No.4 4点 たかだい
(2024/11/10 06:53登録)
数年前に映画化したのを機に読んでみたタイトルで、真保裕一の作品としてはその数年前に「ホワイトアウト」を読んで以来のご無沙汰
まず、誘拐物のミステリーとしては異色の作品で、そこが魅力なのは間違いない
よくある莫大な金銭を要求される営利誘拐と、その受け渡しに際する犯人と警察の緊迫のやり取り…そういったものが本書にはない。何故なら、犯人の要求は「罪の告白」であり、当然、犯人と警察のやり取りが極端に薄いから
国会議員の幼い孫娘が誘拐された事に端を発し、総理官邸をはじめとする議員らの策謀、政治とのバランスに揺れる警察官僚、そこに金銭を求めず罪の自白を命ずる犯人の思惑も絡みつくリアルな人間模様が見所となる異色さは誘拐ミステリーとして随一かと思う
ただし、そのオチも含め終盤での風呂敷の畳み方に少し雑さを感じなくもない
誘拐に新たな境地を見出した意欲作だとは思う一方、一つのミステリー作品としてはトータルで思い返すとイマイチだと思いました

No.3 6点 ぷちレコード
(2023/04/28 23:13登録)
冒頭で三歳の幼女が誘拐される。犯人の要求が身代金ではなく政治家の祖父の汚職の罪の自白であるところが意表を突く。マスメディアを使ってスキャンダルを広める策略も、その指示をウェブサイトに書き込む周到さも現代の犯罪ならでは。今や日常茶飯事となった謝罪会見や身近なネットの脅威が臨場感たっぷりに描かれる。
さらに政治家同士と忖度や家族間の愛憎、警察との駆け引き、露になってゆく過去。やはり弱い者が犠牲になるのかと幼女の安否にハラハラドキドキで息もつかせない。しかも手の込んだ伏線が幾重にも張り巡らされているので、タイトルを逆手にとった鮮やかな事件の解決まで、これでもかと翻弄させられる。
随所に鋭い舌鋒が展開されるが、著者は単純な勝ち負けを良しとしない。ほろ苦い決着がそれを物語っている。

No.2 7点
(2019/12/18 10:13登録)
タイムリミット誘拐サスペンス。

衆議院議員の宇田清治郎の孫娘(長女の娘)が誘拐され、犯人より、時限内にタイトルどおりの会見を行うことの要求をつきつけられる。
種々の疑惑(最近国内で似たようなのがあったような?)が俎上に上げられ、宇田やその家族たちは、対応すべく他の政治家たちと対峙し駆け引きが始まる。自分に害が及ぶのを恐れる政治家たちは逃げ腰気味になる。
宇田と政治家たちとの会話は、表面上、いちおうオブラートに包まれているが、地の文では内なる言葉で、本音に翻訳される。これがまず楽しめるところ。

宇田には3人の子供がいる。
次男で宇田の秘書の晧司は宇田とともに動き回るが、後半にいたるまで際立った変化を起こしてくれない。
警察は影が薄いし、犯人側も顔が見えない。
身代金の受け渡しがないから、緊迫したサスペンス感もあまりない。
こんな感じで8割ほどまでは、伏線を盛り込んであるも、宇田一族中心の平板な流れになっている。
そして怒涛の残りの2割へ突入する。最後の最後まで見せてくれる次男の活躍。

全体としてやや粗っぽさはあるも、社会、政治ネタを、時流に遅れないよう、タイムリーにうまくまとめてある。
後半の2割ほどは、うねりがあってほんとうに楽しめた。

実際にこんな事件が起きれば、当事者や周辺の政治家たちはどんな態度をとるのだろうか。
人一人の命が関わりつつも、自分自身の政治家生命が危機にさらされるかもしれないわけだから、簡単には行動も言動もとれないだろう。
政治家には究極の危機管理対策が必要ということかな。

No.1 6点 猫サーカス
(2019/10/04 19:18登録)
午後4時すぎに衆議院議員の3歳の孫娘が誘拐され、犯人側から要求が届く。身代金ではなく、記者会見での罪の自白だった。タイムリミットは翌日の午後5時。折しも総理がらみの疑惑を追及されていた中での出来事。議員一族と総理官邸と警察組織がぶつかり、軋みをあげていくことになる。インターネットを介した犯人側の要求と罪の自白の強要など、誘拐ものとして全く斬新。さらに家庭内のすさまじい葛藤、政治家同士の激しい駆け引き、限られた時間内での警察による懸命な捜査活動など唸りをあげていく複数の脇役にも手に汗握る。犯人に至る終盤の意外な展開と動機も考え抜かれているが、何よりも事業に失敗したさえない秘書(議員の次男)が危機管理の才能を発揮していく過程がすこぶる面白い。

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