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ミステリの祭典

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IQ
私立探偵 アイゼイア・クィンターベイ(IQ)

作家 ジョー・イデ
出版日2018年06月
平均点6.75点
書評数4人

No.4 7点 よん
(2023/03/23 13:04登録)
主人公はその名の通り、高い知能を持つ黒人の青年。ご近所の悩み事を解決するうちに名が広まり、探偵となった。
物語は最愛の兄を奪った過去のひき逃げ事件と、現在の有名ラッパーの暗殺未遂事件が絡み合う。アイゼイアの佇まいがとても良い。スラングやヒップホップといった黒人コミュニティーを舞台に帰納的推理で事件の瑕瑾を見つけ出していく。ぐいぐいと引き込まれる作品。

No.3 6点 八二一
(2020/05/08 18:32登録)
苦悩する若き探偵と小悪党のコンビ、いずれもその存在だけで物語を支える魅力に満ちている。

No.2 8点 斎藤警部
(2019/11/08 18:50登録)
沁みた。。。 還暦過ぎて新人賞三冠は伊達じゃねえ、こんな胸熱なシットはそう無い。 終戦直後東京のように殺伐としたL.A.貧民街&高級住宅街を軸に繰り広げられるラップ業界ドタバタ哀愁アクション。今どきクラシックソウルを好む兄を持ったガキにとって、初めて出遭う”叙述トリック”はマイ・ガールのイントロかも知れねえなあ。

ミステリとは縁の深い歴史的人物名をもじった”BLACK THE KNIFE”(←すみません、匕首マックと切り裂きジャックがごっちゃになりました)なるラップチームを解散し、今やその旧チーム名を乗っ取って(元チームメイトを手下に従え)自らのソロ芸名にした、ラッパーとして絶大な人気を誇る本名Calvin Wright氏。なんとか言う架空の音楽雑誌で特集された「オール・タイム・ラップ・アルバム200」だかでは一位のNotorious B.I.G.に続き二位に付けたとか!どんだけビッグやねん!! んでそのCalvinが謎の闘犬を使った遠回りな殺人未遂に遭ったと訴え、仕事は若い無免許探偵I.Q.(Isaiah Quintabe アイゼイア・クインターベイ)の所に転がり込んで来たってえ寸法だ。元妻やら弁護士やらマネジメント社長、正体不明の殺し屋だか何だか、危ない白人もチカーノも(時にエイジャンも)入り混じって騒がしいことキナ臭いこと。

一方、上記の現在進行ストーリーにカットバックで割り入って来るのが、超優等高校生時代のI.Q.が如何にして超不良同級生ダッスン(本作のワッスン役、と呼ぶにはかなり異色)とツルんで悪の道に片足突っ込んでしまったか、の詳述。転落のきっかけはある重要人物の死。そしてこの過去ストーリーがいつになったら、どうにも小説上の泣かせどころらしく匂う、あのX時刻に、いったいどんな形でたどり着くのか、、という謎を抱えた、想定される号泣のゼロ時間へと向かう物語でもあります。

ちょうど2PAC全盛になる頃から徐々にHIPHOP界から心が離れて行ったおいらですが(ワシは今でもPE周辺がNO.1)、それ以降のシーンにもギリギリの素養は保たれてたお蔭で、本作で描かれる固有名詞を含む諸々もスイスイ入って来ました。が普通の読者にとって、そのへん訳注無しでは年齢層問わず厳しいかも知れません。“リルキムみたいな女云々”ってw でも雰囲気伝える和訳は全体通して結構うまく行ってるんじゃないでしょうか。 

んで、一体どこがシャーホゥやねん、と鼻白んだもんだが、ある場面で逆赤毛趣向みたいな(マクベインの「電話魔」はちょっと違うんだったか?)のが出てきてニヤリ。まホゥムズ要素はむしろスパイスですかね。恋愛に興味無さそうなのは同じだけどI.Q.はセックスはするみたいだし。ドラッグも楽器もやらないようだし(音楽は好き。割とハイブラウなの中心)

最終局近くのあのショートショートもどきのI.Q.探偵事始めはなかなかクリスピィなチェンジオヴペース。”TKはまるで変わっていなかった”ここでまた号泣だ。泣かせておいて最後の。。。。。。。。。最後の最後の謝辞がまた最高。ある登場人物が「本物のアーティスト」の例としてジョン・リー・フッカーを挙げてたのは、よしんば半分ジョークだったとしても(んなこたねえか)、嬉しかったねえ。。ダッスンがガンボ作るのも良かった。しかしI.Q.がQファックと呼ばれる度にQティップ(ATCQ)を思い出さずにいられんかった。 あのクソ変質者。。は続篇にまた顔出すんだろうか。

バカだなぁ、IQ。。 と思うシーンも一回だけかな、ありましたよ。

No.1 6点 猫サーカス
(2018/10/12 19:16登録)
悪と対決する、ヒーローとしての探偵。そんな存在を軽妙に、そしてかっこよく描いてみせている。アイゼイア・クィンターベイ、通称「IQ]。ロサンゼルスに住む黒人の若者で、金にならない探偵仕事を続けている。彼は旧知の仲の元ギャング、ドッドソンの紹介で、大きな仕事を引き受ける。依頼の内容は、大物ラッパーの命を狙う者を突き止めること。彼は厄介な相棒のドッドソンとともに、殺し屋を追跡することに・・・。そんな現代の事件と並行して、アイゼイアの過去が語られる。家族を失い、追い詰められた境遇でのドッドソンとの出会い。兄の命を奪ったひき逃げ犯の追跡。過去と現在が響きあい、アイゼイアというキャラクターがしっかりと引き立っている。推進力、そして正義感で引きつける存在だ。身勝手な小悪党にして、切っても切れない相棒であるドッドソンの姿も印象に残る。登場人物の魅力で読ませる、クールな探偵の物語。

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