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ミステリの祭典

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遠縁の女

作家 青山文平
出版日2017年04月
平均点6.75点
書評数4人

No.4 7点 ALFA
(2023/11/29 07:13登録)
作者はあるあとがきに、「構成ではなく考証から始める」と書いている。
時代物に限らず、多くの作家はまず構成を考えてから資料を読み込むが、この作者の場合は徹底的に資料を読み込むなかでおのずとストーリーが降りてくるということだ。
今回は織物の流通、新田開発、藩の財政などの資料が読み込まれていると伺える。

中編3編のうち、お気に入りは「機織る武家」。
主人公の嫁、婿、姑三人が絡むドラマだが、主人公の心の持ちようで婿と姑の人物像が変容していく様が面白い。
ミステリの要素はないがウェストマコット名義の名作を読む思いがする。
表題作は唯一のミステリだが終盤の急展開がいささか慌ただしい。
遠縁の女の人物像をもう少し丁寧に描いてほしかった。主人公の人生を変えるほどの存在なのだから。

No.3 7点 まさむね
(2018/03/21 23:28登録)
 3編で構成される短編集。どの短編にも、自分の中にきっちりとした「筋」を持つ主人公が登場します。(多少の語弊はあるかもしれませんが)清々しく、ちょっと羨ましくもあります。
 ベストは、最もミステリーとしての味付けのある「遠縁の女」でしょうか。最初から最後まで、隙なく固められている印象で、グイグイ読まされました。
 他の二編「機折る武家」と「沼尻新田」も、しみじみとイイです。特に「機折る武家」は、ミステリーとは言い難いし、派手な展開があるものでもないのですが、様々な点で心に沁み込んできましたね。

No.2 6点 人並由真
(2018/02/09 13:59登録)
 収録作の3本とも、どれもとても面白く読めた。しかしこれは特にミステリのフィールドで語らずとも、普通の中編時代小説の満足感ではないかとも思う。
 特に2話の動機の真相など実に心に染みるものの、こういうのもミステリの枠内に入れるのかな、入れなくてもいいんじゃないかな、と言いたい感じ。
(と言いつつ、世のミステリファン全員がこの一冊についてあえてダンマリするなら、自分の方からあえて「いや、この一冊は立派なミステリ中編集ですよ」と言ってやりたいような、そんな屈折した感慨もある。)自分は時代小説との縁が全般的に縁が薄い読者なんだけど。
 んー、なんか、子供時代に、大人向けの江戸時代の逸話をかみ砕いて聞かされるような、そんな心地よさがあったな。

No.1 7点 HORNET
(2018/01/06 17:56登録)
①「機折る武家」…武家の婿養子の後妻に入った女が、生活のために機を織ることに。ふがいない夫と聞き分けのない義母に不満を抱いていた女の気持ちが変わっていく。
②「沼尻新田」…領地借り上げの代償として御国が薦める新田開発に乗り出し、成功を収めた武家当主。そこにあった、本当の思惑は?
③「遠縁の女」…武威よりも学問が重宝され始めていた寛政の世に、父親に勧められて武者修行にでた武士。5年の修業を経て帰ってきた男に、本当の事情が明かされる。

 表題作の③がミステリの要素はいちばん強い。やや冗長な部分はあるが、急展開するラストは面白かった。
 ミステリ要素は薄いが、①はえもいわれぬ良さがあった。とりたてて劇的な展開はない話なのに、なんだか引き込まれた。
 このジャンルはライバルが少ないからかもしれないが、読み出すと好きになる人も多い作家さんではないかと思う。

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