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ミステリの祭典

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曲った蝶番
ギデオン・フェル博士シリーズ/別題『曲がった蝶番』

作家 ジョン・ディクスン・カー
出版日1951年01月
平均点6.84点
書評数25人

No.5 9点 りゅう
(2010/05/02 20:03登録)
 傑作。
 どちらのジョン卿が本物なのか、自殺か他殺か、といった謎が二転三転し、興味をかきたてられた。2人のジョンの口頭対決や検視審問でのデイン女史の弁論などの見せ場もある。しかし、何といってもメインになるのは、被害者の周囲に誰もいなかったのに殺されたという不可能犯罪の解明だ。若干ネタバレになるかもしれないが、この作品では2つの種明かしが行われている。1つ目はアクロバチックで確実性に疑問はあるが、十分納得できるもの。2つ目は奇想天外なトリックで、これには意表を突かれた。どちらの種明かしについても巧妙に伏線が貼られている。
 不満に思ったのは、1年前に起きた変死事件の背景がわかりにくかったこと。早い段階で背景の説明がほしいと思った(キリスト教の素養がある人は説明が不要なのかもしれない)。

No.4 6点 ミステリー三昧
(2010/01/13 00:22登録)
<創元推理文庫>フェル博士シリーズの9作目(長編)です。
衆人環視による準密室を扱った作品です。同系の作品として『夜歩く』『魔女の隠れ家』『孔雀の羽根』を読んできましたが本作『曲った蝶番』が一番面白かったです。被害者は「本物or偽物?」で事件全貌をガラリと変えてしまうプロットがまず根底にあり、そこから「自殺or他殺?」を検討していく一連の流れは地味ですけど読み応えがありました。
また、終盤の捨て駒真相からのどんでん返しも予測していなかっただけに、嬉しいサプライズでした。正直、第Ⅲ部までは「4点」レベルです。なので第Ⅳ部の犯人の「独白形式」による驚愕の真相編が今回の高評価の対象になります。ただ、その対象ポイントは被害者が目撃した「犯人の造形」一点のみです。この驚愕度は未だかつてない。たった一つのインパクトだけで「8点」をを献上する結論に至りました。とにかく恐いです。本作はカーの作品の中でも「怪奇趣味」の強い作品と言われていますが、理由はその部分にあると思います。
が、しかしよくよく考えたら・・・
この事件の軸を担っていた「ある人物」の証言がどうしても許せない。そのせいでフーダニットが超難関になってしまっているのでロジックの整合性という面では評価が下がる。故に採点は私的アベレージな6点です。良くも悪くもカーってこのことですか?

No.3 7点
(2008/12/08 22:34登録)
カーの作品中、読んでいて最も怖かったのがこの作品です。訳文の問題もあるでしょうが、途中の謎めいた不気味な雰囲気は『火刑法廷』以上だと思いました。ただ、トリックについては、隠されていた秘密は非常に意外なのですが、それ以外にありえないという論理的な詰めがないのが、不満ではあります。
なお、この作品の後に『ガストン・ルルーの恐怖夜話』を読めば、たぶん驚くのではないでしょうか。あの元祖密室長編『黄色い部屋の謎』を書いたルルーの傑作短編集です。

No.2 9点 Tetchy
(2008/11/20 22:28登録)
カー作品でベスト3を選べと云われたら私は躊躇なくこの作品を選ぶだろう。
本作はカーのケレン味がふんだんに盛り込まれており、しかも驚愕の結末を迎えるという傑作だ。

とにかく導入部も素晴らしい。
イギリスの貴族の許に現れた1人の男。その男こそ、実はこの貴族の正統なる後継者であるというのだ。そして彼の語るタイタニック号沈没にまつわる人物入替り劇の話など、物語性にも富んでいる。

そして本作では「開かれた密室での殺人」とも云うべき、貴族の邸の庭で衆人環視の下、殺人が行われるのだが、この真相が想像するだにおぞましい驚愕の内容。
はっきり云って、この謎を解ける人はいないだろう。
中にはバカバカしくて唖然とする人もいるかもしれない(いや、ほとんどがそうかも?)
しかし私はこの真相をヴィジュアル的に想像した時になんともいえないおぞましさを感じ、読後しばし呆然とした。

好きな人は好きだし、隠れた傑作とも云われる作品だ。

No.1 7点 あい
(2008/04/19 21:43登録)
確かに殺人自体は不可能犯罪で面白いけど、やっぱり解決が・・・

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