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ミステリの祭典

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ホテル・カリフォルニアの殺人

作家 村上暢
出版日2017年08月
平均点4.50点
書評数4人

No.4 4点 まさむね
(2018/07/14 13:41登録)
 「このミステリーがすごい!」対象の「超隠し玉」として刊行された作品。で、この「超隠し玉」というのは、「このミス」大賞15周年記念として、これまで応募された未刊行作品の中から、受賞には及ばなかったものの、編集部が「今こそ世に出したい」と選び抜いた作品だそうです。
 まぁ、つまりは過去の応募作の中から掬い上げた(拾い上げた?)作品でして、私はこの点に興味をそそられて本書を手にしたわけですが、読後は「なるほど、その年に受賞等の栄誉に浴しなかったのは妥当というべきなのだろうなぁ…」と妙に納得したというのが率直な感想です。
 このミス大賞としては珍しいド本格路線で、密室も含めて複数のトリックを詰め込んだ姿勢は、確かに一定評価するべきなのだろうと思います。
 しかしながら、簡潔に述べるとすれば「全体的に荒く、そしてイタい」。まずは、トリックが荒い。現実味がなさすぎます。何でも音楽と結びつけようとする姿勢も個人的にはイタかった。登場人物の設定にも無理が目立ち、かつ、魅力も薄い。それと、作者には酷かもしれませんが、そもそもの文章力が・・・。
 色々と書いてしまいましたが、本格愛を感じたのも事実。次作が発表されれば、何気に読んでしまう可能性はあります。

No.3 4点 ボンボン
(2018/06/23 15:24登録)
これはまた不思議なものを読んでしまった。
イーグルスのホテル・カルフォルニアのあの雰囲気を期待していたのだが、違った。どちらかと言うと金田一少年系。
小説としては、かなり乱暴で上手な素人レベルだが、トリックは、運動会のように次から次と繰り出される。ところどころ集中的に論理的だったり、一方で、今時まさかと思うような仰々しくもバカバカしい演出を平気でやったりと、良いのか悪いのか、どっちなんだと逆に問いたくなる。
物語の〆は、結構、強烈だった。なぜホテルが舞台なのに、ホテル感ゼロのつくりになっていたのかが分かって最後のモヤモヤは晴れたが、それまでのノリに反して随分と後味が悪い。
頑張った力作だとは思う。ただ、個人的には、無意味な大仕掛け殺人は好みではないので、この点数。

No.2 5点 人並由真
(2017/10/07 10:03登録)
(ネタバレなし)
 気になった新作なんで読んでみたら…むむ…これは。
 なんつーか、とにもかくにも噂になっている飯屋が近所に開店したので行ってみたら、たしかに味付けや調理の仕方に魅力はあるんだけど、一方でよく洗ってもいない、野菜の皮も剥いてない、そんな食材ばっかで作った料理を出された感じ。

 主人公の青年ミュージシャン、トミーが素人探偵役を務めるのだが、殺人現場でどうみても説得力の無い捜査権や発言権をもらったり(事件の現場にいた刑事からすれば、その刑事が数年前に会った小悪党ジミー、さらにトミー自身は、そのジミーとたまたまヒッチハイクでいっしょになっただけの一見のチンピラでしかないはず)、素性のわからぬ人物の身元を追ったら、最初の情報が出たところで関係者へのそれ以上の追及をストップしたり、さらには被害者の部屋の遺留品を警察で管理せず、主人公とその同僚の仲間に片付けさせたり。
 一番あきれたのは作中の後半、何者かによって命は無事、負傷だけした状況の登場人物が出てくるのだが、そこで警察も探偵も「被害者が気が付いたら(または落ち着いたら)誰に襲われたのか訊ねよう」の主旨の一言を言いもしないこと。

 突っ込み所満載で、とても21世紀の新作ミステリとは思えない。これが昭和三十年代にアマチュア作家の作者が生涯で一作だけ書いた長編作品と言うなら、笑って納得もするんだけど。
 要は作者も天然ながら、担当の編集者の方もよっぽど想像力が欠けていたんじゃないかと。じゃなければこの辺のリアリティの補強は、もうちょっとされていたはずでしょ。
(解説の川出正樹さん、ホメるばっかじゃなく、少しはフォロー入れろよ。)
 
 しかしながらふんだんに盛り込まれた大小のトリックとアイデア、随所のロジックはたしかに魅力はあるんだよね。得点的評価だけするなら7点くらいはあげたいくらい、無邪気なほどにネタを用意していて、その辺の豪華さは見過ごせない。いろんな意味で、もし出るなら、次作が気になる新人作家ではある。

No.1 5点 nukkam
(2017/08/27 01:39登録)
(ネタバレなしです) 村上暢(むらかみのぶ)(1980年生まれ)の2017年出版のデビュー作の本格派推理小説です。タイトルはアメリカのロック・バンド「イーグルス」の名曲に由来しており、主人公トミー(日本人です)の設定をアメリカ横断を目指すミュージシャンにして随所で音楽知識を披露させているのが特色です。内容はモハーベ砂漠の奥にあるホテル・カリフォルニアで起こった密室殺人事件の謎解きです。直接描写されるホテルの客はわずか1人(刑事を含めても3人)、ホテル経営者や支配人も登場しません。そもそもわざわざ飛行機やヘリコプターで砂漠の中のホテルにセレブ客が集まる理由も明確ではありません(最終章である年中行事が理由として説明されますが自身が直接行事に参加するのではないのだから理由として弱いと思います)。小説として設定が不自然なところが一杯ですが、そこを謎また謎のオンパレードで押し切ってます。綱渡り的なトリックは好き嫌いが分かれそうですが作者の気合を感じさせます。但し作中でヴァン・ダインの二十則(1928年)やノックスの十戒(1928年)を引用しているのは失敗だと思います。これらの規則を律儀に守る必要はないというのが現代ミステリーの趨勢ではありますけれど、わざわざ引用までするのならば遵守してほしかったです。

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