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ミステリの祭典

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超高層ホテル殺人事件
那須警部シリーズ

作家 森村誠一
出版日1978年03月
平均点6.20点
書評数5人

No.5 6点 ねここねこ男爵
(2018/02/16 15:46登録)
読んでいる間は結構楽しかった。
何人か殺されるが、高層ホテルが舞台になるのは最初の一人のみ。

冷静になると「この時代だから許されたいい加減さ」があちこちに見られる(トンデモっぷりや刑事鑑識の痕跡の見落としっぷり)が、ストレスのない文章とテンポの良さであまり気にならなかった。
第二の殺人のアリバイトリックは面白いアイデアで、実現のためかなり都合良い状況になっていることに目をつぶれば結構斬新かと。動機や人間関係はこの時代らしく「金と地位と名誉と愛人」でドロドロww またホテルの主導権を握る争いなどホテルうんちくが結構しっかり書かれていて、社会派ものと考えたほうが良いと思う。


以下ネタバレ含む気になるところ。
第一の殺人の刑事達の推理が大分おかしい。あの時点では「犯人が点灯前に被害者を突き落としたあと、点灯まで待って自分も飛び降りた」になるはずで、「秘書が犯人をかばうために犯人を逃したあと飛び降りた」にはならないだろう。その場に三人いたことは分かっていないのに。
また、チェーンはどう見ても痕跡が残るだろう…。捜査陣の注目はチェーンに集まっているわけだし。
あと、何故女は飛行機におとなしく乗ったのだろう?抵抗しまくると思うんだが(薬で眠らせたり拘束したり、は写真を手にしていたことから考えづらい)。

No.4 6点 人並由真
(2017/03/21 12:35登録)
(ネタバレなし)
 そのトリックのみ取り出してみればバカミスとしか言いようのないネタだけは昔から知っており、そのトンデモ無さに心惹かれて、いつか読もう読もうと思っていた一冊。
 しかし実際に通読してみると該当のトリックはあくまで謎解きのパーツの一つであり、ほかの複数の大小トリックや着想を組み合わせてあったのには、ここで初めて改めて認めて感銘。

 ここでちょっとだけ自分語りになるが、老舗ミステリサークル<SRの会>のメンバーである筆者は前世代の会員たちが本書の刊行当時の作者(森村氏)と悶着を起こしたという事情もあって、実は何となくそんな空気のなかで森村作品を長い間、敬遠していた(さすがにその頃、自分自身はまだ入会していなかったが)。
 そういう流れで森村作品は長編も数冊しか読んでいなかったが、さすがに今ではそういう考えもバカバカしくなって本書を手にした(そもそも当時の事情を再確認すると、SRの先輩方の物言いにも相応の問題はある)。思えばこの一冊を読むまで、ずいぶん時間がかかってしまった。
(大体、昨今ではSRの重要メンバーである山前さん自身が本書の光文社文庫版の解説を書き、その内容を褒めているのだ。)

 それで本書の私的な感想に戻ると、まず例の、あのトリックは<いや、それでも無理だろ! 可能と言うなら誰か実演してくれ!!(できれば若い頃の作者自身)>という感じだが、第二・第三の殺人は、アリバイトリックも密室トリックもそのベーシックさゆえに好感が持てる印象。この手堅さで本書の総体の評価は高くなった。
 ただし事件の構造はちょっとアンフェア…というか、まあギリギリありだが、作劇上の演出としては、捜査陣がもっと真相を知って驚くとか、そういう描写が欲しかった気もする。だってこれ、かなり偶然が作用した状況だよね。

 あとまた当時のSRの森村作品への攻撃の話題に戻って恐縮だが、その時の文句のひとつに<この作者は人間が描けない>というのがあり、まあ、これは分からないこともない、と本書を読んで思った。というのもキャラクターシフトの上では確かにそれなりの事情や立場に劇的なものがあり、苦悩や屈折も語られるのだけど、それがもう一歩踏み込まず総じて記号的なものになっている。この辺は同時代の笹沢作品とか清張の作品とか比べるとよくわかる。
 ただまあ、新本格の時代も迎えてミステリの作法も本当に自在に広範化したいま、こういう湿ったようで実はサバサバした書き方もアリだとは思うけど。

 最後に、すみません、E-BANKERさん、ひとつだけ客観的な作中事実の訂正。刑事が踏切前でインスピレーションを働かしたのは、アリバイトリックでなく、密室トリックの方です(第二十一章「分断された密室」)。

No.3 6点 E-BANKER
(2015/09/23 17:41登録)
1971年発表の長編。
作者の“古巣”であるホテルを舞台に、密室とアリバイが複雑に交差する難事件が発生する。
角川文庫の復刊シリーズにて読了。

~超高層ホテルの開館記念イベント。満楼に競う光が東京の夜を彩る巨大な十字架となって立ち上がったとき、ひとりの男が転落した。死亡したのはホテルの総支配人。墜落した窓のある部屋は、出入り不可能な密室だった。謎が解けぬまま、捜査陣は動機の線から犯人を追うが、容疑者には鉄壁のアリバイがあった・・・。愛憎渦巻く人間模様、難攻不落の密室、緻密なアリバイトリック。謎解きの醍醐味が凝縮された本格ミステリーの金字塔~

いかにも「森村誠一っぽい」本格ミステリー(当たり前だが・・・)。
本格ミステリーの二大トリックというべき、「密室トリック」と「アリバイトリック」が本作の主題。
①「密室」
三番目の殺人事件での密室がメイン。チェーンロックが掛かった完璧な密室なのだが、その解法はかなり強引なもの。割とあっさりと書いてあるけど、果たしてこれって「跡」は残らないのだろうかという疑問が残る。最初の殺人の密室は結局うやむやに終わったような気もするし・・・
②「アリバイ」
東京~大阪間という古き良きアリバイトリックが立ち塞がる。ただし、鉄道ではなく航空機と自動車がその対象。刑事が踏切でのある出来事からトリックに気付くくだりがいかにもこの時期のミステリーっぽい。
最初の事件のトリックもかなり大掛かり。「遠目」という条件が付くしリスクは大きいのだが、発想としては面白い。

という感じかな・・・
作者の作品で舞台がホテルというと、デビュー長編の「高層の死角」が思い浮かぶが、個人的には「高層の・・・」の方が上。
財界やホテル業界の“生き馬の目を抜く”競争やドロドロした姻戚関係もあまり本筋には関連してこない。
でもまぁ、それが作者の「味」なのかな。
評点はこんなもんだろう。

No.2 6点 測量ボ-イ
(2014/08/01 21:54登録)
ちょっと内容的には社会派っぽいですが、まずますの作品。
元サラリ-マン(ホテルマン)の作者だけに、ホテル業界の
薀蓄はさすがです。

No.1 7点
(2009/04/09 23:17登録)
3つの殺人事件のうち、超高層ホテルで起こるのは最初の1つだけです。この最初の事件で使われる密室トリックがなかなかとんでもない方法で、本当に大丈夫かと思えますが、そういうリアリティの問題よりもむしろ、それ以外の可能性を否定する段取が甘いところが気になりました。ただしこれは半分に満たないぐらいで解き明かされてしまいます。後の2つの殺人では、アリバイとチェーン・ロックによる密室がうまく組み合わされています。
それだけトリックを盛り込みながら、お得意のホテル業界を舞台とした企業戦争の顛末をいやらしく描き出す部分も、説明的になってしまっているところがあるのは少々不満ですが、さすがに迫力があります。

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