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ミステリの祭典

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アルファルファ作戦

作家 筒井康隆
出版日1968年01月
平均点6.50点
書評数4人

No.4 6点 まさむね
(2024/08/17 20:49登録)
 ドタバタ不条理SF短編集と言ってしまっては一括りにし過ぎかな。盛り上げた割にラストは…といった短編が無いではないけれど、総じて楽しく、一部考えさせられながら読ませていただきました。特に会話部分が面白い。
 表題作に加え、人口爆発後の地球を描いた「人口九千九百億」、若返る薬を巡る騒動「一万二千粒の錠剤」が印象に残りますかね。個人的には「公共伏魔殿」の皮肉たっぷりな書きぶりも、昭和後半以降の時代を示唆しているようで良かったです。

No.3 5点 メルカトル
(2022/10/13 22:52登録)
若者がみな移住してしまった地球に異星人の襲撃が。最後に残った老人たちはいかにして侵略者に立ち向かったのか!?老人問題への温かい心情を示した表題作はじめ、「人口九千九百億」「懲戒の部屋」「色眼鏡の狂詩曲」など、著者の諷刺魂が見事に発揮されたSF九篇―“永遠の前衛”筒井康隆の原点にして不朽の初期傑作集。
『BOOK』データベースより。

無茶苦茶な話が多い割りにインパクトに欠けると云うか、すぐに忘れてしまいそうな短編が多かった気がします。それぞれ最後にオチが付いてくるんですが、ツボを突いてくるものもあれば、首を捻るようなもの、何となく納得してしまうもの等色々です。主にSFです、中にはジャンル不明なのもあったりします。ほとんどドタバタ劇で、何とも言えない独自の世界を構築しているのは間違いないと思います。

個人的にベストはシンプルながらストレートな、人間の根源的な欲望を描いた『一万二千粒の錠剤』ですね。オチも良いです。『懲戒の部屋』は現実にありそうな話で、ちょっと怖いです。如何にも不条理でやり切れません。『近所迷惑』『人口九千九百億』はまあまあ。

No.2 9点 虫暮部
(2017/02/28 08:57登録)
 「人口九千九百億」が一番好きです。
 近年になって編集されたテーマ別アンソロジーよりも、こういうオリジナル短編集のほうが面白い。

No.1 6点 E-BANKER
(2016/11/08 22:22登録)
1976年に発表された作品集。
中公文庫版の「帯」によると、『永遠に前衛』・・・だそうである。(まぁ確かに)

①「アルファルファ作戦」=この老人だらけの世界観というのは、発表された時代からすると先取り感があるのかも。オチはそれほど旨いとは思わないんだけどね・・・。
②「近所迷惑」=いわゆるパラレルワールド的な一編なのだが、そこは筒井康隆だけあって、普通の作品には収まらない。アメリカ大統領夫妻まで巻き込んで、時代をまたぐドタバタ劇が展開される。(巻末解説で曽野綾子氏も触れておられる“噛み合わない会話”がチョー面白い)
③「慶安大変記」=自宅の横にできた予備校にまつわるドタバタ劇。70年代だとこんな感じになるのかな・・・
④「人口九千九百億」=人口があまりにも増えすぎた地球・・・っていうのもよくある設定かもしれないけど。一番笑ったのは、超スピードで動くエレベーター式トイレ。ウ○コが撒き散らされるだろ!
⑤「公共伏魔殿」=“外務省は伏魔殿”と言ったのは田中眞紀子だったか・・・(古いな)。本作の場合はNHKだが・・・
⑥「旅」=これって桃太郎モチーフか?と思わせておいて、最後には「ああー西遊記」っていつの間にか変わってた!
⑦「一万二千粒の錠剤」=一錠飲んだら年齢が十歳若返るという夢の錠剤。それを巡って繰り広げられる醜い葛藤・・・。本当にあったらやっぱりこうなるんだろうね。
⑧「懲戒の部屋」=いやぁー勘違いした女(特にオバサン)ほど手に負えないものはない、って男なら思うよね。
⑨「色眼鏡の狂詩曲」=作者自らが登場する一編。

以上9編。
作者らしい「風刺魂」で溢れた作品が並んでいる。
最近いわゆる“SF”と呼称される作品を読む機会が増えてきたけど、読むたびに感じてしまう。
「SFってなに?」

我々の暮らす社会の規範や常識、価値観など(広義のね)とは異なる世界観で描かれる小説・・・
というような意味合いと捉えてはいるのだけど、なんかモヤモヤしてる。
まぁ結局面白ければそれでよいということで、本作もそれなりの面白さを備えた作品。
これでいいのだ。
(②がベストかな。④も割とストライク。あと⑧のオバサンどもの言葉に相当カチンとくる)

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