原罪の庭 建築探偵シリーズ |
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作家 | 篠田真由美 |
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出版日 | 1997年04月 |
平均点 | 5.25点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 7点 | Tetchy | |
(2011/03/20 19:28登録) シリーズ当初から謎にされていた蒼と京介との邂逅が語られる。 本書でテーマになっているのが幼児虐待。つまり蒼が虐待を受けて育てられたのだが、これほどまでに過酷な過去があったとは思わなかった。というよりも彼のキャラクターに厚みを持たせるためにおよそ考えうる虐待を彼に注ぎ込んだという嫌いもせんではない。 物語は状況的に蒼の犯行としか思えない密室事件を桜井が解き明かすというものだがこの設定を読んで思い浮かべるのはクイーンのあの名作である。つまり本書は篠田氏の作品群における代表作とせんと臨んだ意欲作だ。 最後に蛇足的重箱の隅をひとつ。 第一容疑者である香澄を二重人格者と神代教授が疑うことについて、京介がいまどき多重人格というネタは今では古臭い手だと一蹴する場面があるが、作中の時代は主題である薬師寺家事件が起きた1986年の3年後の1989年である。巷間で多重人格者が話題となるきっかけとなったダニエル・キイスの『24人のビリー・ミリガン』が訳出されたのが1992年。つまり作中年よりも3年も後のことで、この作品以降多重人格物がドラマ、映画、小説、ノンフィクション、マンガなどあらゆるメディアで取り上げられるようになった。この記述は篠田氏の明らかな調査不足であろう。文庫化の際にこれは修正してほしかった。 |
No.3 | 5点 | nukkam | |
(2010/04/29 13:44登録) (ネタバレなしです) 1997年発表の桜井京介シリーズ第5作にして作者が「本書をもって第一部を終了する」と宣言した本格派推理小説です。この第1部、5作品中3作品が回想の殺人を扱っており、出版順と作中時代順がずれています。それでいながらシリーズとしての統一感が強固なのは回想を通じてシリーズキャラクター同士の関係を構築することに成功しているからだと思います。本書は作中時代的には早期の事件簿にあたり、京介とあるシリーズキャラクターの出会いが描かれていますが本書からシリーズ作品を読み始めるのは勧めません。人間関係が安定した第1作「未明の家」(1994年)から先に読む方が作品世界になじみ易いと思います。読み応えのある作品ではありますが本格派推理小説としては自白で明らかになる真相が多くて推理に関しては物足りないです。また色々な意味で「心の傷」描写が多いのも好き嫌いが分かれるかもしれません。 |
No.2 | 2点 | touko | |
(2008/09/10 20:38登録) 少女漫画チックな美形が書割のようなお芝居をしているという印象。トリックにまつわる強引なお涙ちょうだい劇にも辟易しました。 これしか読んでないんですが、読み手を選ぶ作品・作家という印象。 耽美じゃなくて、「お耽美」って感じ。。 |
No.1 | 7点 | vivi | |
(2007/12/26 23:50登録) 圧倒的なドラマがそこにあり、 それを読むだけで、かなりの満足度。 過去に一体何があったのか、そして犯人は「彼」なのか。 伏線を丁寧に読み解けば、解答を求めることはできるのでしょうが、 その動機には、やられました。 |