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ミステリの祭典

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去就
隠蔽捜査6

作家 今野敏
出版日2016年07月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 5点 haruka
(2019/08/22 22:28登録)
事件発生から解決まで、シリーズのテンプレートに従って話が進むのは、ある意味安心して読めるのでよいのだが、今回のプロットは既視感あるなあと思ったら、「果断」とそっくりではないですか。ということでシリーズの中では最低評価としました。

No.2 6点 E-BANKER
(2019/02/08 21:50登録)
「隠蔽捜査シリーズ」も重ねて六作目となる本作。
お馴染みとなった“合理性の男”竜崎署長をめぐるストーリー。
2016年の発表。

~大森署管内で女性が姿を消した。その後、交際相手とみられる男が殺害される。容疑者はストーカーで猟銃所持の可能性が高く、対象の女性を連れて逃走しているという。指揮を取る署長・竜崎伸也は的確な指示を出し、謎を解明していく。だが、ノンキャリアの弓削方面部長が何かと横槍を入れてくる。やがて竜崎のある命令が警視庁内で問われる事態に。捜査と組織を描き切る警察小説の最高峰~

今回も竜崎は竜崎だった。(当たり前だ!)
いや、ますます竜崎らしくなっている。(どういう意味だ?)
とにかく組織の旧弊やら妙なしがらみ、個人の出世欲や支配欲・・・etc
そんな障壁をものともしない。国家・国民に資する公務員として、大森署を預かる署長として、原理原則そして合理性に則った行動を貫こうとする。
そんな竜崎の姿に本作でもほだされた男がひとり。警視庁・梶警備部長だ。

事件は紹介文のとおり、ストーカー被害が背景となっている。
若い女性が好きでもない男に付き纏われ、その結果事件に至る・・・という当然の図式が竜崎たちの明晰な頭脳&捜査でひっくり返されたと思った束の間・・・読者は本作のタイトルが「去就」であることを思い知ることになる。
弓削方面部長の横槍のため大ピンチに陥った竜崎だったが、竜崎を救ったのは親友である伊丹刑事部長をはじめ、一緒に事件を解決した部下たちだった・・・
そして梶部長が竜崎にかけた最後の言葉『今、おそらく日本中の警察が君のような人材を求めている』・・・(泣ける!)

私も一応組織の中で管理職(のようなもの)を務めているが、組織の旧弊に負けない、部下を信じきって任せる、そして自分が全責任を負う・・・これがどんなに難しいことか・・・
読んでて自分が恥ずかしくなってきたと同時に、竜崎にどうしようもない羨望の眼差しを向けてしまう。
架空の人物にこんな感情を抱くなんて、のめり込みすぎだろうか?
でもすごい奴。

No.1 8点 HORNET
(2016/12/10 16:28登録)
 今回のテーマはストーカー。被害に遭っていたという女性が当のストーカーに呼び出され、ボーイフレンドを同伴してその場に行ったら、そのボーイフレンドが殺害され、ストーカーと被害女性はそのまま行方不明に。早速大森署内に指揮本部が設置され、伊丹と共にその指揮にあたることになった竜崎だったが、事件は当初のとらえとは違う様相を見せるようになってくる。

 徹底した合理主義で(しかも天然)、部下からも厚い信頼を寄せられている竜崎の強いリーダーシップ、痛快な組織での生き様がある意味主となる本シリーズだが、事件の真相を探るミステリとしても〇だった。たてこもりの一幕は、こちらもはじめから胡散臭いと思っていたが、事件の真犯人については意外だった。用いられた凶器の違和感、乗り捨てた車の停め方、携帯電話からの着信など、手がかりからの推察や、捜査員の感触を頼りにチームで真相にたどり着く過程は非常に読みごたえがあった。

 マスコミに反応して、世間への面子やアピール目的で対策を講じ、その煽りを現場の捜査員が被る・・・という、作中で述べられていたことに強く共感する。ある業界に対して持ち上がった批判的な世論に対して、「その答えを作るために」目に見える活動を打ち上げるという上層部の発想が、下々にどれだけ無駄な労苦を生んでいるか、どれだけ無駄な金を使っているか、本当に考えるべきだと思う。

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