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ミステリの祭典

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幸福な生活

作家 百田尚樹
出版日2011年05月
平均点7.40点
書評数5人

No.5 8点 ミステリーオタク
(2026/01/19 21:00登録)
 現在参議院議員にして日本保守党の代表が作家時代に著した短編集の一つ。

 《母の記憶》
 阿刀田高やらなんやらで似たような感じのネタがあったような気もするが、より巧妙に伏線を張って最後にキッチリ落としてくれる。

 《夜の訪問者》
 これは出だしから笑えた。途中も笑いまくり。オチはやはり一昔前のショートミステリっぽいがラストの味つけは悪くない。この最後の一行の作者の意図は分からないが、自分はやはり笑ってしまった。

 《そっくりさん》
 これは一見無関係に見える「二つのテーマ」の組み合わせ方が実に上手い。

 《おとなしい妻》
 まぁこれは途中から大体見えるよね。これも最後は驚くというより笑ってしまう。

 《残りもの》
 これも早々に前話と類似パターンだなと気づく。男女入れ替えバージョンで。でも落とし方が凄いので驚いてから笑ってしまった。社会的にあり得ない話だけどね。

 《豹変》
 三話続けての同系統と言えなくもない。これもオチは読みやすい上に前二話に比べるとバンチが弱い。

 《生命保険》
 これもとても面白いストーリーだが流石にミステリ慣れしていると、途中で完全に読めてしまう。

 《痴漢》
 あまり好みではないタイプの話だと思いながらも止まらず読み進めると・・・・

 《ブス談義》
 まぁ何というか、プロットはともかく途中バカバカしくて笑えたのでよし。

 《再開》
 終盤でオチは見えたがこのパターンは好きではない。少なくとも本短編集ではやめてほしかった。

 《賭けられた女》
 ん? これはどういうことだ? よくわからん、と思って極めて珍しく再読して自分なりの一つの解釈を得ることかできた。「あの手法」だな、と。
 ここに出てくる作家先生はご自身がモデルかな? 百田先生。

 《雪女》
 二話前の「再開」同様あまり好きなパターンではないが、コレは落とし方が上手いし味のある話なので嫌いではない。 

 《ビデオレター》
 これは終盤にジワジワとネタが見えてきて最後の一行のオチはないが、なかなか面白い独白録。でもそこまでするかあ、という感じ。そもそもが対等の取り引きみたいなものじゃないのか。

 《ママの魅力》
 かなり物騒な話ではあるが、人間の闇を描いた作品だらけの本書の中では一番平和な話と言えるかもしれない。被害に会われた人や◯には申し訳ないがこういうのは楽しくて好み。

 《淑女協定》
 これは半分位で概ね読めるが、とにかく笑える。いい加減で節操がなさ過ぎる大人達に。

 《深夜の乗客》
 いかにもありふれた怪談風に展開するが、いくら何でもそんな今どき子供騙しにもならない話は書かないだろうと読み進める・・・・・ちょっと中途半端かな。

 《隠れた殺人》
 これはミスリードも効いた、なかなかの◯◯◯系ミステリだが個人的には最後の一行をその数行前の内容と入れ替えた方がより効果的だったと思う。 

 《催眠術》
 これも最後の二行を何とかページを捲った最後の一行にまとめられていたらより面白かっただろう。

 《幸福な生活》
 う〜ん、最後そうきたか・・・パターン的には珍しくない。


 以上全19作品。
 マイベストは第3話「そっくりさん」
 次点は第14話「ママの魅力」
 三位 第8話「痴漢」
 四位 第5話「残りもの」
 五位 第1話「母の記憶」

 殆どの作品が非常に読みやすくて面白くて、それでいてドンデン短編の教科書のようなストーリー集に仕上がっている。しかも殆どの作品でラストはページを捲ったところに衝撃的な最後の一言が用意されている構成は見事という他ない。

 そしてこれだけストーリーメイク力と文章力と豪気さとユーモア(おふざけ、バカバカしさ)を自在に使い回すこの作品集の中に、数多の奔放な発言やツイートにより無数の反発やトラブルを引き起こしてきた作者の人間性の一端を垣間見たような気がした。

No.4 7点 メルカトル
(2025/12/03 22:23登録)
「ご主人の欠点は浮気性」帰宅すると不倫相手が妻と談笑していた。こんな夜遅くに、なぜ彼女が俺の家に? 二人の関係はバレたのか? 動揺する俺に彼女の行動はエスカレートする。妻の目を盗みキスを迫る。そしてボディタッチ。彼女の目的は何か? 平穏な結婚生活を脅かす危機。俺は切り抜ける手だてを必死に考えるが……(「夜の訪問者」より)。愛する人の“秘密"を描く傑作集!
Amazon内容紹介より。

一見幸せそうな夫婦や家族が、最後の一行でカタストロフィーに陥るという短編が多いです。ショートショートよりは長いので普通の短編集と言えるでしょう。どれも平均して面白いですが、こればっかりは個々の好みが分かれるところ。微笑ましいものもありますが、この後どうなるのか気になる作品ばかりで、それを想像すると空恐ろしくなります。

個人的に好みなのは『そっくりさん』『残りもの』『豹変』『痴漢』『雪女』『ママの魅力』『隠れた殺人』『幸福な生活』辺り。
その他も衝撃的なラスト一行の台詞が心に突き刺さります。これはお薦め。ベストはやはり表題作か、いや『隠れた殺人』も捨てがたいですね。

No.3 8点 蟷螂の斧
(2025/11/04 11:52登録)
「最期の一行」に特化した短篇集。その試みが素晴らしいし、バラエティに富んでいる。
①母の記憶 7点 老人ホームにいる認知症の母を訪ねた息子。息子は子供の頃、大切なオモチャがなくなったことを思い出した…母はその理由を(ブラック)
②夜の訪問者 8点 帰宅すると、浮気相手が妻とおしゃべりしている。妻が席を外すと彼女がキスをしてくる…彼女曰く、妻は私たちのことを知っていると(爆笑もの)
③そっくりさん 10点 妻の悩みは、夫の同性愛疑惑。寝言で「ひろし」とつぶやく…世の中には、そっくりさんが3人はいるらしい(これぞ、最後の一行)
④おとなしい妻 6点 人見知りで内気な妻が、パチンコ店で暴れたという…妻は泣くばかり(まあ、ありがち)
⑤残りもの 6点 30代最後の年にハンサムな美容師と知りあい、即結婚。残りものに福は?(そうなるわな)
⑥豹変 5点 夫はあることで憂鬱になっていた。妻は今日いい事があったという…これしかないオチ
⑦生命保険 8点 友人にさえない夫と結婚した理由を話す。夫は生命保険のようなもの…チンピラから助けてもらった(爆笑もの)
⑧痴漢 8点 満員電車で痴漢扱いされ、その場しのぎで金を支払ってしまった。その後も慰謝料を請求され…警察にいけない理由(ギャップがいい)
⑨ブス談義 5点 結婚式のあと、ロビーで新郎の友人3人が花嫁の容姿の悪口を言い合う。そこへその友人の一人の美人妻が現れ…美男美女の娘の容姿(分かりやすいオチ)
⑩再会 7点 酒、暴力、賭博が原因で別れた元夫が10年ぶりにやって来た。病で瘦せて昔の面影もない…彼女に言い寄る上司(そっち系かW)
⑪賭けられた女 7点 パーティで、しがない編集者は好色な作家と賭け事を。編集者は自分の美人妻を作家はポルシェを賭けることになった…ポケットのコイン(「南から来た男」のオマージュ)
⑫雪女 9点 16年前の事故のことは記憶がない。だが最近記憶が蘇ってきた。事故現場には宇宙人がいた…幸せな家庭(SFチック)
⑬ビデオレター 8点 妻の49日の法要が終わると、生前に撮影した妻のビデオレターが届いた。感謝の言葉が続く…ホトトギスの托卵(伏線がいい)
⑭ママの魅力 6点 体重100kg身長170cmのママをパパは大好きだ。僕はママに痩せて欲しい。ある日、公園で猛犬が暴れ出して…(ほほえましい)
⑮淑女協定 6点 社内パーティに出席の夫に同伴した3人の妻。彼女らは同期で社内結婚。結婚前の男関係はお互い知っている。夫には自分以外の男遍歴を喋っている…俺は社内結婚でなくてよかった(まあ、世の中そんなもんですな)
⑯深夜の乗客 6点 タクシー運転手は、真夜中、雨に濡れた若い女性を乗せた。バックミラーから姿が消えた?…自宅で老婆出現(怪談風だが?)
⑰隠れた殺人 8点 父が自宅で亡くなった。殺人の可能性もと冗談。遺品に箱根細工があった。開けてみると…父と母は18歳の年齢差(かなりブラック)
⑱催眠術 8点 妻に催眠術をかけたら、なんと!かかってしまう。夫は禁断の質問(男関係)を聞き出す…悲劇、喜劇?
⑲幸福な生活 9点 娘が恋人を家に連れてくる日。父母は自分たちの過去を振り返る…部下との浮氣(場面は一転、放送作家らしい作品)

No.2 7点
(2025/10/25 17:25登録)
最終ページの一言で真相が明らかになるショートショートです。
最初は驚かされましたが、途中から真相を予想しながら楽しめました。
文庫化で追加された「賭けられた女」だけは他の作品とは一癖も二癖も違って、二度読みが必要でした。

No.1 7点 itokin
(2015/11/10 13:13登録)
ショートコントのような短編が18編。どれもがどこにでもありそうな出来事を淡々と展開させていくのだが最後の1行の逆転ショックは相当なものだ、このような構成の作品は初めてで、さすがの百田さん、面目躍如です。

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