皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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シーマスターさん |
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平均点: 5.94点 | 書評数: 278件 |
No.5 | 6点 | 美女- 連城三紀彦 | 2011/10/23 23:11 |
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浮気、不倫をテーマにしたドロドロのミステリー風短編集。
やっぱり、この人の文体は自分には合わんわ、と改めて認識させられた一冊。 なにしろ短編なのに一つ一つの話が長く感じられてしまうのだから相性の悪さは言わずもがな。 各話ともプロットの巧みさには感心するが、この人が場面々々に絡ませる情景描写、比喩表現は概して不自然で無理付けな飾り物に思えるし、とにかくまどろっこしくてページをめくる手を鈍らせるハンプにしかなっていない。自分には。 ・「夜光の唇」・・・凝ったドロドロ捻りだが心に響くものはなかった。 ・「喜劇女優」・・・これは凄い話だ。おおよその展開は早々に読めてしまうが読み終わった時、予想を遥かに凌駕する大いなる○○感はデカルトの格言をも揺るがさんものがある。(大げさな) ・「夜の肌」・・・妻の臨終際のドロドロ劇。暗鬱この上ないが心に響かない。 ・「他人たち」・・・前半の叙述だけ少し面白かった。 ・「夜の右側」・・・これぞ連城ミステリーの真骨頂といえる構図のイリュージョン。推理作家協会賞だか何だかを受賞してもおかしくないレベルにあると思う。 ・「砂遊び」・・・前半の叙述だけ少し面白かった。 ・「夜の二乗」・・・ミステリー的には比較的よくできているが、心情面の要素がやはり個人的には打たれない。 ・「美女」・・・カバーの紹介文から大いに期待していたが、割とありがちな展開。 先述のとおり好みとは言えないが、連城の職人技が詰まったこの短編集はもう少し注目されてもいいと思う。 やはりミステリーとしては若干主眼がずれているため本格ファンにはスルーされてしまうのだろうか。 |
No.4 | 6点 | 造花の蜜- 連城三紀彦 | 2011/10/12 22:34 |
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騙しの構図を情念まみれで描いた連城らしい誘拐ミステリー。
大した作品だとは思うが個人的には、誘拐犯の不可思議な言動以外は、全体的にダラダラしてクドクドの読み物に感じられた。もちろんこういう叙情的なミステリーに感じ入る人がたくさんいるだろうことは理解できる。 意外な構図も「人間動物園」を読んでいると、あっと驚くというほどには感じられず。所々の不自然さもかなり引っかかるし。 ボーナストラックのような最終章の事件は、これはバカミスでしょう。ネタが明かされたときには思わず笑ってしまった。主人公の陰鬱な語り口・心情展開とネタのギャップ・・・こういうのは結構好きだな。 |
No.3 | 6点 | 人間動物園- 連城三紀彦 | 2010/03/31 23:56 |
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この「構図」は凄い。
しかし、それだけだ。と個人的には感じた。 全てが明らかになったときに、そういうやり方をする動機と必然性と方法論に納得し、展開の蓋然性に違和感を覚えず、メッセージ性に共感できる人がどれほどいるのだろうか。 それに心情や情景の描写もどうも頭に滲み入りにくいものが多く、文章そのものも全体的に読みにくかったように思う。(これは単に自分に合わなかっただけなのだろう) 本作の「構図」をもう少し合理的な犯罪ショーとして「騙し絵」に徹した形で、尚かつスマートに見せてくれていたら華麗なマジックのようなエンターテイニング・ミステリとして、かなりの作品になったことだろう。 |
No.2 | 6点 | 白光- 連城三紀彦 | 2010/03/23 23:08 |
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一見平凡な姉妹がそれぞれ嫁いだ二家族の、薄い平凡の皮膜の下に波打つドロドロで底深い愛憎劇の臨界破綻として生じた幼女殺人事件。
登場人物達の順繰りの独白形式により、巨大な蟻地獄の底のような真相の露呈に向かい、大きくスパイラルしながら時に緩慢に時に電撃的に進む構成は、情念型ミステリーとして完成度が高い仕上がりになっていると思う。 谷崎潤一郎や三島由紀夫なども好きなミステリーファンには絶賛されるかもしれない。 (ちなみに自分はどちらも一冊も読んだことがない) |
No.1 | 6点 | 戻り川心中- 連城三紀彦 | 2008/01/20 23:41 |
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個人的には好みとは言えないが、客観的には素晴らしい文芸ミステリだと思う。
大正から昭和初期の退廃的な世情を背景にして、詩情溢れる流麗な文体と水墨画あるいは印象派の画風で描いたような情景に彩られた殺生劇。 ミステリとしても、某人気作家Hの某作品Ⅹを思わせるようなネタもあったりして、どの作品も動機の意外性、切なさは秀逸。 ただ表題作は芸術家気質に偏りすぎ。 |