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モトキングさん
平均点: 6.06点 書評数: 78件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.14 9点 切り裂きジャック・百年の孤独- 島田荘司 2002/01/31 10:39
誰だかが言っていた。これは御手洗作品の番外編だと。あの「クリーン」氏がやはり…? いやはや何ともファンには嬉しい隠れ含意である。
前に読んだ清涼院の「コズミック」でも、同じイギリスの連続切り裂き事件を題材にしていたが、それとは雲泥の差で、見事な解釈が成り立っている。
島田作品の中では、「漱石と倫敦ミイラ〜」と本作は、歴史的事件に対するアプローチが優れた、裏傑作群であると、私は認識している。
非常に面白い。こういう作品の創作は、閃きだけではなく、歴史の勉強や解釈の付け方が必要となってくるが、本作は見事である。全く持って尊敬してしまう。
欠点がほぼ無いという点では、作者の最高傑作とも言えるのでは…?

No.13 7点 御手洗潔の挨拶- 島田荘司 2001/12/27 17:09
御手洗短編モノ全てに共通することだが、これらはやはり、御手洗ファンのためにある作品であると感じる。御手洗ファンでなければ納得いかない作品が多々あるが、しかし、それはそれで需要が多い故に、許される供給であると思う。かくいう私は御手洗も含めて島田先生の大ファンなので、はっきりって面白く読めた。
ただ、島田作品は最近の長編作品の殆どが、やたらに分厚く、謎そのものより、舞台背景とかサイドストーリーのために費やす分量が多い中で、短編は簡潔にまとまっており、ミステリを構成する必要最低限な要素だけが濃縮して詰め込まれていると感じる。もちろん個人的には、無条件で短編が長編に劣るとは思っていない。
前述の内輪ウケという面も確かにあるが、基本的に島田作品の短編は、どれも内容の濃縮という意味で、非常に良作なミステリが多いと感じる。本作も例に漏れず「数字錠」等の純粋な物理トリックモノが素晴らしい。また、「疾走する死者」は、あの「嘘でも〜」シリーズの巧クンが御手洗シリーズに登場している点が、ファンなら楽しめるだろう。

No.12 7点 暗闇坂の人喰いの木- 島田荘司 2001/12/26 14:54
過大評価するわけではないが、いわゆる「幻影城」時代を彷彿とさせる、乱歩調のおどろおどろしい雰囲気が抜群だと思う。
「黒死館」や「虚無」などに共通する日本に流入してきた外国文化を舞台背景に、御手洗ならではの論理性がガチンコで絡みついていく。
トリックについては、「また無茶な〜」と思う反面、あの偶然性には、論理で踏破できる「偶然である必要性」を感じたので、ある意味OKだと、個人的には感じた。「水晶」や「アトポス」よりははるかに地味だし。
後期の長編群の一発目として、また御手洗潔の今後の世界照準へのプロローグ的な作品としても、この作品は島田作品の中でも重要な位置を占めると思う。
感想としては、「雰囲気」+「御手洗大活躍」−「無茶しすぎ」で。

No.11 5点 龍臥亭事件- 島田荘司 2001/12/17 16:37
御手洗ものとして淡い期待を抱いた私が馬鹿でした。
「社会派」ではなく、多少トリックに凝った「やや本格派」だから、探偵役を「吉敷」ではなく「石岡」にしたのならば、それは個人的には大きな間違いだと言わざるを得ません。
物理トリックは、はっきりいって陳腐の一語に尽きます。論理もクソもありません。もちろん、手紙だけで登場する論理の化身・御手洗も、あの跳弾の謎を解いていたとは到底思えません。
作品を読める喜びはありますが、これを吉敷シリーズとして、単純に社会派として書けば、これほどの期待感は湧かず、当然裏切られた感も薄れていたことでしょう。
うーん。当時としては、島田先生の久々の長編だっただけに残念。ただ、人間ドラマ、社会派としては良作なので、物理トリックのマイナスを引いてこの点数。

No.10 8点 アトポス- 島田荘司 2001/12/17 16:26
御手洗の登場シーンの浮世離れさと登場時間の短さが凄まじい。馬に乗って砂漠を駆けるあのシーン。そして、登場したと思ったら「あっ」という間に全ての謎を解いてしまうあの恐るべき(本当に欠片すら理解できない)推理力。御手洗ファンには、これでもかというくらい御手洗の活躍を堪能できる一冊でしょう。
物理トリックにおいては、秀逸なモノが1つありました。巨大な石の回転なんかは、人間である限り解けそうもない謎だけど、あの湖上の塔の先端に突き刺さった死体の謎は素晴らしい。さすが島田先生である。
全体的には、まったく無くても作品に支障が生じない超壮大な挿話が、例の如くあちこちに、それも複数盛り込まれていますが、これ自体の出来は抜群。かなり移入してしまいます。また、これは大きな意味でのミスディレクションとしても機能しているといえます。とにかく、この辺りの島田先生は、全く持って桁違いだ。
採点は、物語の壮大さと御手洗の超絶さ、さらにはある意味、既存の社会派ミステリが主眼に置く社会問題なぞクソ食らえというくらいの壮大な社会問題を盛り込んでいる、その社会派+超本格派の融合の見事さにこの点数。

No.9 5点 水晶のピラミッド- 島田荘司 2001/12/17 16:06
アンチ? アンチなのか、この作品は? 何だあの最後のオチは。
島田先生ならではのバランスの巧さが、最後の最後で、あの「塔の溺死」をこう結論付けさせたのだろうか。
しかし・・・。
ピラミッドの構造を生かした(生かせる構造を作った?)見事な大大大物理トリックが泣くぞ!
私はもの凄い御手洗ファンだが、とりあえず、ここは涙をのんで厳しく採点します。島田先生のミステリ論もわかるが、個人的には解決編で見事に(呆気にとられても「見事」じゃなきゃ駄目!)騙されたい。

No.8 9点 眩暈- 島田荘司 2001/12/17 15:54
ページを捲れば「アルジャーノン〜」のような大活字。手法的にはどちらも同じだが、その向かう方向が違う。サリンジャーは文書主の精神が後退していく物語を描き、本編では覚醒していく物語が紡がれる。
本作品は、現実世界に起こる殺人という崩壊劇を解くものではなく、初っぱなから登場する継ぎ接ぎだらけの不可思議世界を、あの御手洗の超絶頭脳が、皆の知っている現実世界へと再構築していく流れのミステリである。
このプロットは面白い。っていうかこのプロットこそが謎の主眼なので、これはネタバレも同然か? いや、失礼。
後期の御手洗大長編連作群の中でも一際異彩を放つ本編は、ある意味「新・占星術」の名に落ちぬ壮大なミステリである。
個人的には、技の「占星術」、スケールの「眩暈」ってとこかな。総合点では、純粋にミステリの至宝である「占星術」を抜くことは出来ないが、迫る勢いでこの点数。

No.7 8点 異邦の騎士- 島田荘司 2001/12/06 15:02
面白い!
私は根っからの御手洗ファンなので、そうじゃない人の気持ちは分からないが、単純にスリル&サスペンス&恋愛モノとして、確かな良作だと思う。
確かに、ラスト近くで、主人公の正体が明らかになっていく過程があるが、これはシリーズを読んでいなければ大した感動はないだろう。また、逆にシリーズを読んでいる人は、この人の正体に既に気づいていることだろう。
ミステリ要素はあるにはあるが、それは御手洗が少しかじる程度で、全くメインではないので、ミステリ作品としては評価が難しい。自分探しという設定も、ミステリというよりサスペンスだろう。
しかし、これは物語として非常に面白い。それだけは譲れない。好みの問題でも何でもいい。主人公の混乱や情熱に、私は確かに胸を熱く打たれた。
もちろん、これは純文学ではない。欠片ですらない。そんなことは作者も狙ってないし、読者がそれを勝手に望んだとすれば、それは大きな見当違いだだ。一方で、確かに「本格」でもあり得ない。
しかしながら、広義なミステリとして、日本ミステリ界に確かな足跡を残している「御手洗潔」シリーズを語る上で、この作品は絶対に外せない一作だ。で、この点数。

No.6 9点 北の夕鶴2/3の殺人- 島田荘司 2001/12/06 14:25
これを御手洗モノとして読みたかったのは、深く同感。
しかしながら恐らく、「占星術」「斜め屋敷」を持ってマニアの間で華々しく名を挙げた島田先生ではあったが、本格がどん底状態のあの時代では、社会派やトラベルミステリー等の当時において「世に受ける作品」を書く必要に迫られたのではないかと想像される。
それでも、ただのトラベル、ただの社会派で終わらないのが島田先生の凄いところ。吉敷シリーズを打ち出し、作品名こそ、その当時はやりの「トラベル物」のように「寝台はやぶさ〜」「出雲伝説〜」「北の夕鶴〜」と銘打ってはいるが、中身はいわゆる本格要素プンプン。
島田先生以外が、「北の夕鶴2/3の殺人」なんて名前のミステリを書いても、私は恐らく手に取らなかっただろう。
もちろん、これは完全に個人の好みです。私は絶対的に「本格モノ」が好きというだけのことですので、「本格」以外が悪いということは全くないのですが、「何々でなければミステリじゃない」とか売れ線が決まっていて、それしか世に出てこない社会ってのは非常に寂しいですね。
だから、自分としては、本格が復興して「新本格」と銘打たれている今の流れが素直に嬉しいです。
そんなこんなで、「作品の出来」プラス「本格不毛の時代にこの作品」という島田先生の心意気にこの点数です。

No.5 9点 漱石と倫敦ミイラ殺人事件- 島田荘司 2001/12/06 13:55
これは面白い!
日本のミステリ、それも、「新」も「旧」も含めた本格モノの全てを引っくるめた中でも、恐らく傑作の部類にはいると思う。
作品の構成は、言わずと知れた「ワトソン博士」とあの「夏目漱石」氏が交互に文を綴っていく形式であるが、これが絶妙に面白い。
まず、かの有名なシャーロック=ホームズ氏の例の超人ぶりが、ワトソン氏の目より語られるのだが、それと前後して、ホームズ氏の知られざる真実(?)が、氏への愛情に包まれた鬼のような新解釈により、漱石の目より語られる。これがもう大爆笑。
はっきりいってエンターテイメント性でもかなりの高評価である。しかしながら、これはホームズ冒険譚をある程度以上読んだ人の方が、より楽しめるでしょう。
もちろん、ミステリとしても一級品で、トリックは流石に島田荘司先生!
あの手の、絶対不可能状況という謎掛けは、読者の心をくすぐりますね。と、まあ、評価は言わずもがなですけど、それ以上の作品は、私の中で確かに存在するので10点は避けました。

No.4 7点 ロシア幽霊軍艦事件- 島田荘司 2001/12/06 13:39
御手洗シリーズを読めるというだけで結構満足ですね。
ワールドワイドな舞台を背景に、これだけ歴史的深みのあるプロットとくれば、この謎を解ける人間は御手洗くらいでしょう。島田先生以外の作家がこのプロットを思いついても(思いもつかないか?)、御手洗のようなキャラを持っていないから、作品には出来なかったでしょう。どうしてもっていうなら、そのために新しいキャラクター(ロシア、特にロマノフ王朝関係を研究している歴史学者とか何とか)を用意しなきゃね。
やはり、都合良すぎるくらい何でも知っている御手洗じゃなければ、ね。
内容としては、もちろん、これも御手洗シリーズとして十分に面白い。後期の「暗闇坂」から4作連続した例の大長編ほどの読み応えは勿論無いが、作品の量(枚数)と質が、見事にバランスしており、かなりの佳作。ただ、読者は御手洗ではないので、こんな壮大な謎に対しては、読んでて推理もクソもないのはご愛敬。いわゆる本格ミステリではなく、歴史大河的な物語ですね。御手洗外伝というか。
でも、面白いのでこの点数。(御手洗ファンなので+αしてます)

No.3 8点 奇想、天を動かす- 島田荘司 2001/11/28 17:00
島田荘司は物理トリックが相変わらず凄い。
本作は、社会派と本格が真っ向から融合した傑作例として、よく挙げられているが、私自身の好みとしては、やはり社会派系の雰囲気は好かん。
確かに作品として、無理なく、というか、結構見事に成功していると思うが、私としては社会派部分を全て削ってしまっても問題ないと思う。っていうかむしろそっちの方が好きだったろう。
でも、これはある意味、社会派と本格派との垣根などによってミステリを分けたくないという、島田先生自身の意志も影響したんでしょうね。挑戦というか。
そもそも社会派じゃないとミステリじゃないなんて思想自体ナンセンスですもんね。
しかしながら、かくいう私は絶対本格派なんですが…。
とりあえず、社会派要素のあるなしに関係ないくらい融合の出来は自然で(っていうか、これに限らず吉敷シリーズは、概ね社会派の臭いがしつつも完成されてますけどね)、かつ本格部分の出来が良いのでこの点数。

PS でもやっぱ御手洗が最高です。

No.2 10点 占星術殺人事件- 島田荘司 2001/11/28 11:46
物理トリックの最高峰。このトリックを作品として結実させただけでも、島田荘司はミステリの神に愛されていると感じる。
また、トリックが、明かされればあまりに明快(これが凄い!)であるため、冒頭に大がかりな(もう作品全体の7割は越えるだろう)「手記」を持ってきて読者をミスリードさせるあたり、作品の構成としても随分感心する。
この後の作品にもこの構成手法が取り入れられているが、それらについては少し疑問符だが・・・。

No.1 9点 斜め屋敷の犯罪- 島田荘司 2001/11/28 11:36
無茶しすぎ?いやいや、この圧倒的力業こそが、島荘の魅力。
せこせこした物理トリックが乱雑する中で、この単純明快さこそが、ミステリの醍醐味を、推理の面白みを与えてくれます。

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モトキングさん
ひとこと
推理で解ける設計が好きです。
中でも、何故か自分だけに解けない見事な設計が好きです。
好きな作家
島田荘司、鮎川哲也、有栖川有栖、森博嗣、エラリークイーン、アガサクリスティ
採点傾向
平均点: 6.06点   採点数: 78件
採点の多い作家(TOP10)
森博嗣(23)
島田荘司(14)
有栖川有栖(10)
東野圭吾(8)
綾辻行人(6)
西澤保彦(3)
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