海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

Tetchyさん
平均点: 6.73点 書評数: 1601件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.29 6点 島田荘司読本- 事典・ガイド 2010/11/13 23:42
島田の2000年までの全作品の解説と島田を取巻く周囲の作家(とはいっても井上夢人と歌野晶午しかいないが)の島田荘司の印象、それと書き下ろしの創作・エッセイで纏められたムックみたいなもの。
島田全作品解題・解説はこういった本ならば定番なのだが、読者の知らない島田の素顔、横顔をもっと色んな作家に語って欲しかった。
また本書に書き下ろされた創作やエッセイはやはり島田の日本人論が展開され、最近これらを読まされてきた自分にとってはちょっと食傷気味だった。
しかし、この本が出た頃というのは充電期間というか迷走期間というか、島田本来の本格推理作家というスタンスが世に知らしめされなかった時期であるから忸怩たる思いがしたものだ。ここ数年の新作発表ラッシュを考えるとまさに本書は作者としての1つの区切りであり、新生・島田荘司誕生の序曲であった、そう読み取れるのである。

No.28 8点 1億人のためのミステリー!- 事典・ガイド 2010/11/11 18:50
わずか100ページ余りのヴォリュームに今日におけるミステリーシーンの現状から押さえておきたい名作などの紹介も怠っておらず、非常に好感を持てた。また伊坂幸太郎を中心とした当時のミステリ新進作家のインタビューもいい。
色んな角度からミステリをカテゴライズして紹介しているのも飽きさせず、全く以って秀逸の一品だ。

No.27 10点 ミステリー迷宮読本- 事典・ガイド 2010/11/09 21:26
発行当初はそんな凡百のミステリガイドブックと変わらないだろうと思い、発行された年末には買わずそのままにしていたのだが、二階堂黎人がHPでこのムックを褒めていたのを見てGWに購入。そしてその賞賛は間違っていなかった。
これは本当にミステリを愛する者が作ったムックである。ミステリをカテゴリー別に論じ、新旧織り交ぜて論じている。その内容の出来に個人差はあれ、なかなか読ませる。通常出てくるタイトルとは違う隠れ傑作本も続出だし、本読みの本読みによる本読みのためのムックになっている。
原書房の『本格ミステリベスト10』が何年も発行されているのマニア臭さから脱却できていないのに対し、これは本当にミステリ好きの痒い所に手が届く面白さである。表紙のイラストのいかがわしさは褒められたものではないが、それを差し引いても星5ツに値する。掘り出し物とは正にこの事を云う。名も無き出版社にしては最上の出来だ。天晴れ、洋泉社!!

No.26 7点 ミステリを書く!- 事典・ガイド 2010/11/08 21:40
本書は当代を代表する作家たちに小さい頃からの読書遍歴、ミステリを書くきっかけ、デビューのこと、また作家なり始めの頃の話、趣味やスケジュール管理、体調管理、そしてミステリを書く事の意義とそれに対する姿勢について行ったインタヴューを纏めたもの。
ここに上げられているのはどちらかと云えば本格系の作家が多いが、エンタテインメント系の作家に比べるとその誰もが、本格という特殊な制約に対してとことん突き詰めた考えを持ち、また混沌とした本格推理界が今後どのような展開を見せるのかに期待と憂慮を覚えているのが共通項として見受けられる。
それに対してエンタテインメント系作家と云えば、寧ろ本格作家に見られるような求道心的な真摯さというよりもやはりその作品性ゆえか、いかに読者に楽しんでもらえるかに腐心している傾向にある。
しかし、特徴的なのはこれが必ずしも必要条件ではなく十分条件であり、どちらかと云えば自分が読みたい作品、楽しんで書ける作品を書いているのが底流としてある辺りに余裕が感じられた。正に陰と陽といった感じ。しかもエンタテインメント系の作家の原体験として黄金期の本格物を読んでいたという共通項があり、食わず嫌いではなく、何事も取り込んでいこうというおおらかさを感じた。
特に本格系の作家は評論を充実させるというのが共通意識としてあるようで、推理小説研究会というのもあるように、本格系は文化系、エンタテインメント系は体育会系という色分けが如実に表れたように思う。
どちらが正しい、間違っている、良い、悪いということではなく、それぞれがそれぞれの道を進んでいくことでミステリ界を今後も盛り上げていって欲しい。

No.25 7点 傑作ミステリーベスト10- 事典・ガイド 2010/11/02 21:47
ミステリのガイドブックは星の数ほどあるが、これは週刊文春が1977年より実施している年末恒例のミステリーベスト10の、1999年度までのデータを集めたものである。
『このミス』はこのランキングのアンチテーゼとして生まれたものだが、こうして通して見てみるとさほどランキングの内容は変わらない。確かに『このミス』は『柳生十兵衛死す』や『影武者徳川家康』などの歴史物が時折ランキングされるが、それ以外はほとんど差がない。
確かに作家たちがランキングの投票に参加する関係上、その年の乱歩賞受賞作やその他ミステリ賞受賞作がランキングされることになりやすいが、近年のデータを見るとそれが顕著ではなく、寧ろ『このミス』と大同小異である。つまり『このミス』とこのランキングの投票者が重なる傾向にあるのだ。
何にせよ、ランキングは読書の一つの指標であり、その年の世評の鏡でもある。その結果について是非を問うのは子供のすることだろう。ここは、単にミステリ愛好家たちの集まりに参加し、その雰囲気を愉しむような感じで読むのが正解。そして私は愉しんだ。

No.24 7点 海外ミステリ・ベスト100―ハヤカワ文庫名作ガイド- 事典・ガイド 2010/11/01 21:12
本書のランキングには自らも投票し、参加したため、いつも受身で見ているミステリのベストランキングよりも興味深かったのが正直なところ。今となっては自分がどのようなランキングで投票したのか、詳細は忘れたが、『長いお別れ』を1位に推したのは覚えており、本書もまた同様な結果になり、出版当初小躍りしたのを憶えている。
あとは『罪なき血』のような一風変わった作品も投票していたのが反映されており、ロス・マクの『縞模様の霊柩車』、『象牙色の嘲笑』あたりが入ってなく、定番の『さむけ』、『ウィチャリー家の女』が入っているのが普通すぎて残念。
内容は募集した内容の結果を発表するだけでプラスアルファの要素としては作家による愛着のある作品・作家のエッセイが5編あるのみ。以前出ている『ミステリ・ハンドブック』ほどの充実ぶりはない。
しかし、アンケートに参加するだけで本書が送られてくるとは思わなかった。買わずに待っていれば、2冊ダブらずに済んだのに。

No.23 7点 日本ミステリー最前線①1989~1994- 事典・ガイド 2010/10/24 20:52
本書から『このミス』の創刊とあいまってくるため、ベスト・ミステリに選出される作品も何かと似てきており、また年代が進むにつれ、筆者もそれを意識したコメントを発するようになる。
それに関して私は特に是非はない。『このミス』と似おうが似まいがそれはあくまで結果であって単なる指標に過ぎないのだ。だから香山氏にはそれとは別に己のベストを貫いてほしい。
ここで云う意味は従来注目してきた作家たちに対して常に誠実であってほしいのだ。昨今、不況にも拘らず新人作家のデビューが相次ぎ、ミステリ及びエンタテインメント関係における出版の洪水を促進させている風潮がある。そんな中、パッと現れパッと消える作家も多い訳で、新し者好きの書評子達の作家の使い捨て現象が起きている感が強い。
この香山氏もその傾向に傾きつつあるのはどうしても否めない。下世話な女性作家優先の法則、新人作家優先の法則など定義せず、良いものは良い、未熟なものは未熟だと明言する事が彼らの本分ではなかろうか。

No.22 7点 日本ミステリー最前線①1983~1988- 事典・ガイド 2010/10/23 23:08
本書は現在も『小説推理』誌上で連載されているミステリー書評国内編を集めたもので、ガイドブックとしては新奇さはない。ただ対象年代が’80年代ということで私がミステリーに没頭する以前の作品群をリアルタイムで論評している点で買える。
筆者は『創元推理』誌上で論評している超マニアックな書評子と違い、主に『このミス』誌上等で書いているメジャー(?)な書評家で云わば、私をミステリーに引き込んだ方々の1人と云ってもいい。
当時と違い、私もこなれてきたせいか、100%愉しめるほどにはいかなかったものの、この自分の好きなミステリを自由に論ずるスタイルはやはりいいものである。若干自分の好みのペクトルと違う所はあるが、それは筆者の個性である。
最近は書名を連ねるのに精力的になっているような感があり、残念だが、本書はミステリに対するこだわりが存分にあり、若々しい。

No.21 7点 新刊めったくたガイド大全- 事典・ガイド 2010/10/22 22:35
北上次郎のガイドブックは相変わらず純口語体で、何よりもそれが裏腹のなさを示しており、結構好感が持てる。
前回の『余計者文学の系譜』の時よりは『本の雑誌』書評の編集本ということもあり、作品の選択が一般的で愉しめた。
ただやはり書評家としてよりも一読者としての好みが全面に出ているきらいがあり、そこがいやに目に付く(まぁ、それが書評家北上の個性とも云えるのだが…)。また全体的にのめり込んだ本についての書評が長く、1つのコラムのバランスが非常に悪い。これならいっそ1冊に絞り込んで徹底的に評したらいいと思うのだが。
惜しむらくはこの本を読んで触手の伸びる新たな本が見つからなかったこと。でも自分の関心の高い作品についての感想を読むのはやはり愉しい。

No.20 6点 バカミスの世界 史上空前のミステリガイド- 事典・ガイド 2010/10/21 21:41
以前から『このミス』誌上、または『この文庫がすごい!』誌上で語られてきたバカミスを系統立てて一冊の本に纏めたのが本書。
とはいえ、上の二誌ではリアルタイムな作品を語るのが専らだったせいか、本書はミステリの歴史上から俯瞰してバカミスを語っている。そのせいか後半に渡りすぎてディープに語る一歩手前で終わっている。
まあ、恐らくはこのメンバーでディープに語るとマニアック過ぎて読者がついてこられなくなるのだろうが。

No.19 7点 海外ミステリー作家事典- 事典・ガイド 2010/10/20 21:44
最初、作家達の未訳作品が作品リストに載っていることでこの事典の充実ぶりに胸躍らせ、更に日本未紹介の作家が紹介されていることでこの事典の価値が俄然高まった。

が、しかし、そこまではよかったのだが、既訳作家の作品リストが全てリストアップされていないことに失望を覚えた。
「事典」であるからには述べられている項目に漏れがあっては台無しであるし、読者各々に思い入れの強い作品はあるのだから、その思いを反故にするのはなんとも云い難い。
という事で、やはり世界ミステリー事典に期待しよう。

No.18 4点 このミステリーを読め![海外編]- 事典・ガイド 2010/10/19 21:22
押並べてガイドブックたるものは如何に読者に紹介した作品に読む意欲を起こさせるかにかかっていると思う。
つまりそれだけ選者の選択眼、文章力というのが問われるのだが、この郷原宏に関しては日本篇も含め、あまりにオーソドックスで心の深奥に届いて来ないのだ。
従って読書の指南書としては物足りないので座右の書ともなりにくい。作者の意見が5~10行でその後に作品の要約、著者の略歴という紹介方法に、何処に魅力を感じると思います?

No.17 8点 Jミステリー- 事典・ガイド 2010/10/18 21:38
注目されているミステリ作家もしくはエンタテインメント系作家、そしてそれらの礎となり、今も第一線で活躍するミステリ作家達の作品を総称して「Jミステリー」と名付け、兎にも角にも評論、論議しまくったムック。
とはいっても東京創元社の出版する『創元推理』、『本格ミステリ・ベスト10』に見られるマニアによるマニアのためだけに編まれたような排他的、無機質なイメージはなく、また『このミス』のようなヴァラエティ番組的派手さもないが、寧ろそれだけ真正面からミステリを論じている感があって非常に心地よい一冊。
ただ惜しむらくは「Jミステリー」と言う造語を面白ければ何でもミステリだとも云わんばかりに定義付けている趣もあり、結局実体のない浮いた言葉になってしまいそうな危険性を孕んでいるのが気になった。しかしずっと手元に置いておきたい一冊である。

No.16 4点 このミステリーを読め![日本編]- 事典・ガイド 2010/10/17 21:26
読書の素人に向けて書いたミステリ入門のためのガイドブックの体裁をとっているため、原尞、麻耶雄嵩といったディープな作家から内田康夫、西村京太郎といった定番作家をも紹介しているという広範さが特徴的。
そういった意味では今まで読んだことのないガイドブックだったがかえってそれがための“浅さ”がやはり物の足りない。
自分自身の趣味がマニアックなせいか、ガイドブックの作品の選定に選者の拘りを期待してしまうし、またそれらに対する選者の思いの強さを共有することで「ああ、ミステリは素晴らしい」とか「ミステリを読んできて本当によかった」と感じられるのだ。このカタルシスが欲しかったんだけどなぁ。

No.15 7点 ミステリ・ベスト201 日本編- 事典・ガイド 2010/10/06 21:48
海外ミステリを広く扱ったガイドブックは多数あるのに対し、日本のミステリに焦点を当てたそれは全くといっていいほど、無かった。そんな現状を憂うミステリ・ファンの声に応えて編まれたのが本書。

前に読んだ『本格ミステリ・ベスト100』の時も感じたある種の物足りなさは今回もあった。しかしやはりこうしたガイドブックでは十全に満足することは無いのではないか、いや満足してはいけないのではないかと思うようになった。十全に満足するガイドブックとはその人にはもはや必要ないのだ。自分の興味の無い本も紹介されているからこそ読む意味があるのだろう。

No.14 5点 ミステリ絶対名作201- 事典・ガイド 2010/10/05 21:51
前作のミステリ・ベスト201では1ページに1作紹介し、上下2段の文章にぎっしり情報がつめられていたが、本書ではジャンル別になされた座談会が掲載され、作品紹介は1ページに2つと情報量が半減。初めて読むシリーズがこれならばアリだが、1作めを読んだ後では、面白さ半減。

選出された作品も絶版が多いのが残念。古本屋巡りの際の発掘本参考書とするのがいいのかもしれない。

No.13 6点 本格ミステリ・ベスト100- 事典・ガイド 2010/10/02 17:17
毎年刊行される『本格ミステリ・ベスト10』の根幹を成すガイドブックであり、東京創元社が刊行した事もあってか、100冊の選出には些か首肯できない部分もある。批評を捏ね繰り回してその作品が選出された妥当性を捻出しようとしているようにも感じた。他にも選ばれるべき作品はあるはずなのだが…。
とは云っても私個人としては自らの読書の幅を広げる手助けにはなった。特に連城の一連の作品にはかなり食指が動き、本棚のスペースとのジレンマで身悶えしたほどだ。

No.12 1点 世紀末ミステリ完全攻略- 事典・ガイド 2010/09/22 22:04
独り善がりが過ぎるぞ!
酔っ払いが書いたような解説が続き、何ら共感する部分が無かった。人に読ませる、自分の考えを啓蒙するのではなく、単に自己満足を、大いなるエクスタシーを得ようとマスターベーションを繰り返しているのだ!正にドラッグガイドブックだ!
ミステリ・ジャンキーにはお誂え向きなのかもしれないが生憎とこちらはそれほど病んでない。
こんな本で儲けようとする根性が気に食わないし、買った俺にも腹が立つ!

No.11 8点 ニューウェイヴ・ミステリ読本- 事典・ガイド 2010/09/18 00:29
新本格だけを焦点にしたミステリガイドブック。
だが新本格そのもの自体がマニアックな領域であるためか内容もマニアックなものとなっており、本来初心者のための案内書という意味でのガイドブックとしては不合格と云わざるを得ない。
その最たる一因は掲載されている評論が難し過ぎる。もっと平易に判りやすく出来ないものか。恐らく編者にしてみれば十分満足のいく一冊だろうが、それは編者の自己満足に過ぎない。

No.10 5点 これがミステリガイドだ!- 事典・ガイド 2010/09/16 21:40
『ミステリマガジン』誌上での連載評論を読んだときに著者に興味を持ち、半ばその反動に後押しされながら購入したのだが、やや期待外れの感が…。
確かに論客であるのは認めよう。だがあまりにも己の知に走り過ぎていやしまいか?抽象的表現が多くて要旨が掴みにくいのだ。それは過去に自分が読んだ本の書評に関してもそうだった。あとやたらと“世紀末”を煽るのもいささか気疲れがした。

キーワードから探す