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テツローさん
平均点: 7.46点 書評数: 108件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.11 10点 Pの密室- 島田荘司 2003/04/02 20:54
 「鈴蘭事件」「Pの密室」共に、いわゆる『後期クィーン問題』を巧みにかわしているな、という感触を持った。別に突き詰めて考えなきゃいけないって訳でも無いし、突き詰めすぎて法月綸太郎みたいになるのもどうかと思うので、これはこれでかまわんでしょう。
 僕は両作とも良いと思った。特に「Pの密室」の方は、思わず頭の中で映像が流れて、BGMがかかるくらい(御手洗が現場でルミノール反応の実践をするところ)。トリックが特にすごいというわけでもないけど、まず最初に凡人刑事が現場の状況を調べ、何とか事件の概略を形作ろうとするけど、不可能性・不可思議性が強調されるだけで全然解決できない、そういう前提を経た上で御手洗が事件を組み立てる、こういうスタイルはやはり好みのタイプなんだなぁ、と再認識してしまった。(「斜め屋敷」もそう)
 後、少年探偵という設定なぞ、今に始まったことでもなかろうに、と思うんやけど、「島田荘司だから、御手洗だから」でこだわってしまうのだろうか? ここが駄目という方は。

No.10 6点 聖林輪舞-セルロイドのアメリカ近代史- 島田荘司 2003/03/29 01:02
 小説ではなくエッセイ集。ハリウッドで活躍した人物をドキュメンタリー風に書いた物。
 「秋好事件」「三浦和義事件」のように、実際の事件に対する考察の話もある。「トマス・インス殺し」や「マリリン・モンローの死」「チャールズ・マンソン事件」「O・J・シンプソン裁判」などの話がそう。
 月刊誌連載エッセイだったこともあって、一回の文量が限られていて、淡々と描写が進む展開が却って読みやすいと思う。割と面白かった。
 「龍臥亭事件」の「津山三十人殺し」の挿話も、この程度で収めてくれてたらなぁ、などと考えてしまった。

No.9 7点 最後のディナー- 島田荘司 2003/03/29 00:41
 こういうインターネットの感想文書き込みサイトに書くようになってから気付いたのだけど、どうも僕は、ミタライアンではなくカズミストだったようだ。今まで自覚は無かったんだが。表題作における石岡君の行動・心情描写など、腹を抱えて笑いながら読んだ。
 ミステリとしては、表題作は殺人の謎より、大田原氏の行動の理由を探るという、日常の謎の方をメインと見たらまあまあか……
 「大根奇聞」の方は、実際に昔、TVアニメの「まんが日本昔話」で見たことある話だった。落ちがオリジナルの民話と比べて、シュールさが失われて地に足の付いた話になってしまってる。まあ、ミステリとしての謎の提示のくだりは良かったと思うが。
 全体的に島田荘司の文章は、会話文が不自然でなくって、読みやすいと思う。ただやはり、ミステリとしての評価は高くはならないか!?

No.8 10点 龍臥亭事件- 島田荘司 2003/03/29 00:01
 ラストの謎解きが全然論理的じゃないというのは、確かにそう。下巻途中の「津山三十人殺し」の挿話も、こんなノンフィクション・ノベルの形態をとらずに、淡々とドキュメンタリー風に書いてくれた方が、まだいくらか良かったとは思う。ただ僕は、そういう観点とは別の方向から見て好きな点も数多く感じ、評価は良い方になった。
 それは、コード多用型ミステリとしての点。この作品で用いられているミステリのコードとして、横溝正史世界の舞台装置のことが、実際よく言われている。僕は、その横溝作品の舞台装置がまず一つ挙がるのは確かだが、他にも、乱歩の淫美性、「Y」のプロット、「九尾の猫」の探偵再生のドラマ、こういったコードも読み取れると思った。また、「津山三十人殺し」の挿話も、シャーロック・ホームズ物の長編にある、過去の因縁話を挿入するスタイルへのオマージュと見ることもできる。
 もちろん、過去の名作の後追いが多ければ、すなわち良い作品という訳でもない。繰り返すが、あの挿話については、やはりあそこまでだら長くせずに端折って欲しかったとは思うし、トリックは「なんじゃそら」ではあった。
 だが、上巻の、次々に殺人が起こっていくのに全然解決の糸口すらつかめない辺りの展開は、ページを繰るのももどかしいと感じるくらい面白かったし、下巻の石岡君の調査過程も興味深く読めた。何より、上記にある本格物の総決算のようなコードの多用が、僕のツボに入ったようで、この作品は僕の中では、割と名作として残る位置にある。

No.7 9点 漱石と倫敦ミイラ殺人事件- 島田荘司 2002/04/21 23:44
考えてみれば、この作品が僕の島田作品初体験でした。このサイトに書く為に約10年振りに読み返しました。密室トリックは覚えていたのに、犯人逮捕に至るプロセスはそっくり忘れていました。

 赤毛組合もどきの奇妙な新聞広告や、漱石の幽霊騒ぎなど、一見何の関連も無いように見える事柄がラストで有機的に結びついて、一つの犯罪を形作る。突飛だとも思うが、同じだけ見事だとも思う、そんな作品でした。
 一つ気になったのは、例の「バリツ」の処理について。加納一郎「ホック氏の異郷の冒険」も読んでいますが、そちらの処理の方が自然な気がする…(ちなみに「ホック氏」では、「『バリツではなくブジュツだろう』『そう、ブリツだ』ホック氏は言い難そうに発音した」となってる)
 ところで島田先生は、あの空白の3年間にホームズは渡日していない、という考えなんですかね? 来さしときゃいいのに、と思うんですけどねえ。

No.6 9点 暗闇坂の人喰いの木- 島田荘司 2002/04/16 00:17
 メインのトリックはあまり感心しなかった。偶然自体は、別に良いのだが。むしろ、巨人の家のからくりの方が良かったと思う。分かる人はすぐ分かるのだろうが、僕は思わず膝を打ったので。
 
 全体的に大変興味深く読めた作品でした。世界死刑史のペダントリーも良かった。こういう薀蓄を分かり易く披露してくれる作風って、僕自身は結構好きなので。後は石岡君の奮戦ですね。大楠に対する及び腰な態度や、冒頭での森女史との顛末など、「あぁ、やっぱり石岡君だなあ」と何か微笑ましくなった。スコットランドの旅行記の部分もよかった。クリスティーやカーの諸作で、イギリスの田舎町ってミステリの故郷という感慨を持っているので。

No.5 5点 ひらけ!勝鬨橋- 島田荘司 2002/03/30 00:01
 本格物ではないです。作品紹介等では、ユーモアミステリと紹介されてますが、それも違うと思います。では何かというと、これは間違いなくハードボイルド作品だと思うのです。登場人物達が直面している問題が、ユーモアミステリと見るには過酷すぎるし、ヤクザ共の振る舞いが生々しすぎるので、そう見るのが間違い無いと感じます。
 上記の理由で、本格好きの自分にはどちらかといえばきつい内容でした。でも、島田先生の文章なので読み易いことは読み易く、きついながらも、流れるように読み進められる作品には違いないです。

No.4 9点 サテンのマーメイド- 島田荘司 2002/03/11 01:40
 作品紹介に「著者が初めて挑むハードボイルド」などと書かれることが多いのですが、確かにスタイルはハードボイルドですけど、中身は紛う方無き本格です。しかも、豪腕島田の通り名に恥じぬ、奇想です。(逆にハードボイルドファンが読んだら怒るんじゃないかと思うくらい)ラストは活劇が有り、苦い結末なんですけどね。

No.3 9点 御手洗潔のメロディ- 島田荘司 2002/03/10 23:39
「SIVAD SELIM」はいいですよね。石岡君の描写が微笑ましいし、ゲストキャラの佐久間君も善意の人物に描いてくれたのが良かった。御手洗は超人キャラですよね、元々。「IgE」の解決は東京近郊に住んでないと分からんぞ。「ボストン幽霊絵画事件」は、全体の解決よりアルファベットの謎々の方が、シンプルで思わず膝を打つものだった。「さらば遠い輝き」は、何と言うか金曜9時の恋愛ドラマのような…少し違うか。

No.2 10点 斜め屋敷の犯罪- 島田荘司 2002/03/10 22:38
御手洗の推理よりも、北海道の刑事達が、屋敷の構造や部屋や廊下の配置図を前に、「あ〜でもない、こ〜でもない」と言い合っているシーンに本格推理の妙味を感じた。同じく刑事達が、御手洗のことを噂してる時の会話文も笑った。このトリックは、僕は素直にだまされました。良かったです。

No.1 9点 占星術殺人事件- 島田荘司 2002/03/10 22:26
「金田一少年」を先に読んだのが悔やまれる。しかしそれでもこれは良い作品と感じた。手記を読んで色々試行錯誤する御手洗と石岡君のやり取りも面白いし、石岡君の事件解明に全然関与しなかった捜査活動の描写も許容範囲だ。(エラリー・クイーンの国名シリーズにもそういうのは多い)初期のノベルズ版で読んだのだが、その後更に200枚ぐらい書き足した完全版も出たそうで、そっちどこかで文庫化しないだろうか。

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